医療関係者へ

頭頸部腫瘍

ロボット支援下咽頭悪性手術 ロボットしえんかいんとうあくせいしゅじゅつ

はじめに

ロボット支援下手術は、3D拡大画像がリアルタイムに映され、手術器具は手と手首と同等かそれ以上の関節・可動域をもって操作されます。さらに生身の人間では問題となる手振れは補正機能により解決されます。そして手元の操作を縮尺する機能もあるため、拡大視野で細かい操作をすることもできます。
そのため安全・確実に手術ができる手術として2000年初めより米国を中心に広がり、その後日本においても2011年に初めてロボット支援下前立腺悪性腫瘍手術が保険適応となりました。これ以降、日本でも適応となる手術が増えてきています。そして耳鼻咽喉・頭頸部外科領域でもロボット(ダヴィンチ)による手術が2022年4月より保険適応となっています。

経口的ロボット支援手術(Transoral Robotic Surgery:TORS)

耳鼻咽喉・頭頸部外科は発声・嚥下などの機能と関わる領域を取り扱い、さらに顔面・頸部といった容姿と関係する部位を治療するため、特に外科治療においては術後の機能障害が患者さんのQOLと直結します。
咽頭癌や喉頭癌の治療をする目標として、癌を根治することと同時に治療後の発声・嚥下機能の温存があげられます。これまで行ってきた直達喉頭鏡下の顕微鏡手術では一度に直視できる視野が狭いという問題があり、経口的鏡視下手術においても視野が狭くワーキングスペースが限られていることや手術器具の可動域の制限によって操作が困難な部位があることなどの課題がありました。2005年O'MallyとWeinsteinらが経口的ロボット支援手術を開発し、複雑でかつ狭い操作腔である咽頭の手術を安全かつ確実な手術法として確立しました。耳鼻咽喉・頭頸部外科領域での経口的なアプローチは皮膚切開が不要で、さらに口腔から咽頭・喉頭の複雑で狭い空間での操作が可能なロボット支援手術はよい適応と考えます。また従来なら放射線治療しか選択肢がなかった症例においても経口的ロボット支援手術が可能であれば放射線治療を回避し得ることも考えられます。