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先天性心疾患の出生前診断と胎児治療

先天性心疾患の発生頻度

 先天性心疾患(生まれながらに持っている心臓の病気)を持った赤ちゃんは軽症を含めると 100の妊娠に1人の頻度で生まれてきます。生まれてから入院・手術が必要な重症な先天性心疾患は1000の妊娠に4人の頻度で生まれてきます。医療が進歩した現在でもこのような重症な先天性心疾患は新生児の死亡原因として上位を占めています。

なぜ、先天性心疾患は生まれると重症化するのでしょう

 先天性心疾患は、生まれてから病状が悪化することがあります。赤ちゃんはお母さんのお腹の中では羊水という水のなかにいます。このため呼吸はしていません。お母さんのから酸素をもらうので呼吸をする必要がないのです。しかし、赤ちゃんが生まれると胎盤から切り離され、呼吸が始まります。この時、赤ちゃんの血液の流れが大きく変わります。具体的には動脈管という血管と卵円孔という孔(あな)がふさがります。病気のない赤ちゃんには必要なことですが、先天性心疾患の赤ちゃんは動脈管と卵円孔が無くなることで血液をうまく送れなくなり重症化します。
 この代表的な先天性心疾患は大血管転位です。正常な心臓と大血管転位を図に示します。
正常な心臓は全身で酸素を使った血液()は右心室から肺動脈そして肺に送られ酸素を十分取り込みます。酸素を取り込んだ血液()は左心室から大動脈そして全身に送られます。(図1)
 大血管転位は右心室から大動脈、左心室から肺動脈がつながる先天性心疾患です。血液の流れは酸素を使った血液()は右心室から大動脈そして全身に送られます。一方、酸素を取り込んだ血液()は左心室から再び肺動脈そして肺に送られ送られます。このため、全身には酸素の少ない血液がめぐります。胎児は肺で呼吸をしていないので、卵円孔と動脈管で血液が混ざり合うので症状は見られません。しかし、出生後、肺呼吸がはじまると急速に重症化し、生後24時間以内に死亡することがあります(図2)。

図1 正常な心臓

図2 完全大血管転位

なぜ、先天性心疾患の出生前診断が必要なのでしょうか

 生まれてから赤ちゃんに先天性心疾患が発見されると病状が急速に悪化し、生まれたばかりの赤ちゃんを救急車に乗せて専門病院へ搬送しなければなりません。さらに、家族と別々の病院で過ごさなければなりません。しかし、先天性心疾患を生まれる前に診断できれば、重症化を予防できます。また、救急車に乗ることもなく、家族と一緒に過ごせます。
 妊婦健診でも胎児の心臓は調べられていますが、一般の妊婦健診では先天性心疾患の30%から60%しか見つけることができません。さらに、大血管転位のような先天性心疾患は妊婦検診では約10%しか見つかりません。しかも、先天性心疾患の90%以上が正常な妊娠から生まれていますので、全妊婦に対して胎児の心臓に精通した医師による検査が望まれます。

先天性心疾患の出生前診断

 検査の目的は、妊婦健診では見つけることが難しい先天性心疾患を見つけることです。生まれる前に見つけることができれば、重症化する前に治療を始めることができます。
実際に、一部の先天性心疾患の中には生まれる前に見つけることで治療成績が良くなったものがあります。
検査は通院中の産科医院の胎児超音波検査と同じで、胎児の心臓を検査するための超音波装置を使用し、胎児心臓専門の医師が慎重に診断していきます。検査時間は説明を含めて約60分が必要です。(図3)
 近畿大学病院では年間約300例の胎児心臓超音波検査を行っています。胎児心臓超音波装置も常に最新の機器を導入しておりますので、妊娠17週から診断が可能です。他府県からのご紹介が多いのが特徴ですが、南大阪在住の方はそのまま当院で分娩・心臓治療を行っています。

図3 胎児心エコー検査で見つかった先天性心疾患

遠隔診断

 近年、インターネットの発展によりきれいな動画像を送信することが可能となっています。当院では、胎児心臓専門の医師に診断を受けたくても遠方にお住まいの方、または、近隣の産科医院で観察されている妊婦さんで専門的診断を受けたい方を対象に遠隔診断を行っています。診断には特殊な診断装置を要しますが、現在6医療機関と遠隔診断の契約を結んでいます。これまで多くの先天性心疾患を遠隔診断しております。なかでも重複大動脈弓を本邦で初めて遠隔診断し、無事手術が成功しました。

胎児治療

 近年、病気を持った胎児も治療の対象となっています。すべての心臓病が治療の対象となるのではありませんが、有効性が証明された心臓病には治療範囲が拡大されており、現在、胎児不整脈に対する治療が対象となっています。
 胎児頻脈(胎児の脈が非常に速い状態)は放置すれば胎児がむくんで死亡する疾患です。当院は倫理委員会の承認を得て 胎児頻脈への胎児治療を行っています。治療方法は大人が不整脈で服薬する薬を母親が服薬し、胎盤を経由して胎児に届ける治療です。保険外診療になりますが、適応のある胎児には有効な治療方法です。当院では倫理委員会の承認のもと胎児不整脈の治療を行っている南大阪唯一の医療機関です。

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