医療関係者へ

婦人科良性腫瘍

ロボット支援下子宮全摘術

1.はじめに

当院では、患者さんへ最良の治療を提供するとともに、より良い治療をいち早く導入するための努力を行っており、現在ロボット支援下手術の普及に努めています。今回紹介させて頂くのは、良性疾患に対する子宮全摘術を最先端の医療用ロボットで行う方法です。海外では、既に盛んに行われておりますが、日本での導入と普及はこれまで遅れていたのが現状です。日本では、2018年4月から子宮がんに対するロボット支援下手術を保険診療として実施することが可能になりました。

2.ロボット支援下手術について

ロボット支援下手術では、腹部に1cm程度の小さな傷が計5箇所です。傷が小さいため、傷の痛みは少なく、早期の体力回復が望め、早期の社会復帰も可能です。術後癒着や術後の腸閉塞(イレウス)も開腹術に比べて少なく、がんの手術であるにもかかわらず体の負担は軽微です。このように、患者さんの傷が小さくて済む手術には腹腔鏡下手術があります。当施設ではともに保険診療として行うことが出来る日本でも数少ない施設の一つです。

現時点でロボット支援下手術、腹腔鏡下手術はどちらも低侵襲です。どちらが優れているかという点に関して世界中の報告では、出血量や合併症などは両者に差がないと言われています。ただし術者側の観点では、腹腔鏡下手術よりロボット支援下手術では視野が3Dになり、鉗子という手術をする手の部分が360°動かせるので腹腔鏡下手術より可動域の自由度が高いです。よって、今後は、ロボット支援下手術の件数が増加してくると想定しています。手術費用に関しては、両者はともに保険で同じ金額に設定されています。当院では、現在ロボット機器が1台稼働しており、当科以外の診療科と共有して使用しています。当科が優先して使用できる日程では、ロボット支援下手術を勧めていますが、そうでない日程では腹腔鏡下手術になります。

3.ロボット支援下手術の長所と短所

長所

従来の開腹手術と比べて、術後の創部の痛みが少ない、退院・社会復帰が早くなる、腸管運動の回復が早い、術後腸閉塞が少ない、免疫力の低下が少ない、手術創が小さく目立たないなどの利点が期待されます。
さらに、ロボット支援下手術に特有の利点として

  1. 鉗子にいくつもの関節があり、人間の「手」の動きを正確に再現できる。
  2. 手ぶれ防止機能があり、手ぶれがない。
  3. 人間の手より関節の可働域が広く、人間の手ではできないような動きも可能。
  4. 約10倍の拡大視野が得られるため、人体の構造が非常に細かく見える。
  5. 3D画像なので、奥行きを正確に読み取ることができる。があげられます。

短所

海外ではロボット支援下手術は15年以上前から盛んに行われており、先に述べたような多くの長所が知られていますが、日本では2018年4月に保険適用となったばかりで、多くの実績がないことが短所といえます。安全性の検証については、日本でも多数例が行われて初めて明らかになると考えられます。
また、子宮悪性腫瘍手術は、従来のように腹腔鏡下手術や開腹手術でおこなっても一定の割合で合併症が起こる可能性のある手術です。それらの合併症については、入院後改めて詳しく説明させて頂く予定です。

4.その他

ロボット支援下手術は希望された全ての方が、お受けになることができるわけではありません。術前症例検討会議で、病状を鑑みて開腹手術や腹腔鏡下手術の方がよいと判断した場合は、最終的に変更になる場合もあります。

5.担当責任医師の氏名、職名、連絡先

近畿大学医学部産科婦人科学教室
大阪府大阪狭山市大野東377-2
電話番号(072)366-0221
教授 松村 謙臣、講師 小谷 泰史