婦人科がん(子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん・その他)においては、婦人科腫瘍専門医を中心に、個々の患者さんに合わせて手術療法・癌化学療法・放射線療法などの集学的治療をおこなっています。
手術療法は、比較的早期の子宮体がんの患者さんに対して、おなかの傷が小さく、術後の回復も早い、腹腔鏡手術およびロボット支援下手術を積極的におこなっています。子宮頸がんでは、早期であれば、腹腔鏡下広汎子宮全摘をおこないます。広汎子宮全摘では、可能な限り神経を温存し、排尿機能の維持に努めています。また、標準的な手術のほかに、広汎子宮頸部摘出術による妊孕性温存も対応可能です。進行例には、超広汎子宮全摘や骨盤内蔵全摘まで含めた拡大手術をおこないます。
卵巣がんに対しては、進行例であっても手術による徹底的な切除を目指し、さまざまな化学療法を組み合わせて最適な治療を行っています。
大学病院の使命として、当科ではさまざまな新しい治療に取り組んでいます。
子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮内膜症などの婦人科疾患は多くの女性が遭遇する疾患と考えられています。これらの治療には、薬物治療、手術療法を中心に様々な治療法がありますが、経過観察可能な場合も多くあります。我々は患者様の病状、年齢、挙児希望の有無、社会的環境などをよく見極めた上で、個別に状況に応じた最善の治療方針を提案します。
手術療法を選択する場合には、まず患者様にとって低侵襲な内視鏡下手術(腹腔鏡下手術・子宮鏡下手術)を、可能な範囲で提供できるよう心掛けています。当科では子宮筋腫などの良性疾患に対する子宮全摘の約85%、子宮筋腫摘出(子宮を温存する手術)の約90%、明らかな卵巣癌を除いた卵巣嚢腫の約95%が腹腔鏡を用いて行われています。その他、不妊症の診断・治療目的の内視鏡下手術や、卵巣嚢腫茎捻転・子宮外妊娠などの救急疾患にも対応しております。
不妊治療においては、総合的診断のもと各個人に最適な治療法を選択しています。当院では以下のような検査および治療を行っています。
産婦人科学の4つ目の新しい柱として、女性医学(女性のヘルスケア)が注目されています。平成26年11月に正式にサブスペシャリティとして認定されました。
女性医学とは、「女性のQOL(生活の質)の向上を目的に、女性に特有な心身にまつわる疾患を、主として予防的観点から取り扱う産婦人科の専門領域」と定義されます。例えば、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群であった女性は将来、そうでなかった女性に比べて高頻度で2型糖尿病や高血圧症になることが知られており、出産後も将来に向けて生活習慣の見直しが必要となります。
女性の各ライフステージにわたる健康問題を扱うので、周閉経期から老年期にかけての心身の変化に対応する更年期医学だけでなく、初経から性成熟期にかけての諸問題を扱う思春期学や、骨盤臓器脱をはじめとする女性下部尿路症状、脂質異常症や骨粗鬆症の予防、性機能障害、感染症、月経に伴う諸症状などかなり幅広い分野をカバーしています。少子化・高齢化による疾病構成が変化し、治療から予防へ医療のパラダイムシフトが起こっていることからも、今後さらに女性医学のニーズが高まっていくものと考えられます。