医療関係者へ

婦人科悪性腫瘍

子宮体がん腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術

1.はじめに

当院では、患者さんへ最良の治療を提供するとともに、より良い治療を開発し、導入するための努力を行っています。今回ご提供する手術は、子宮体がんに対して従来開腹手術で行っている傍大動脈リンパ節郭清術を、腹腔鏡下手術で実施するというものです。子宮体がんに従来行っていた手術は、開腹手術での子宮全摘術、両側付属器(卵巣・卵管)摘出術、骨盤リンパ節郭清術、傍大動脈リンパ節郭清術です。今回提供する手術は、これらの手術を腹腔鏡で実施するものです。この術式は2017年7月より先進医療という形で行われていましたが、2020年4月より保険適用となっています。

2.子宮体がんの治療について

あなたの病気は子宮体がんで、術前診断の進行期はIA期を想定しています。これは手術によってがんを完全切除し根治できる可能性が高い状態です。ただし、悪性度の高い病理組織型であり、傍大動脈領域におよぶ広範囲のリンパ節郭清が必要です。
標準治療は、子宮全摘術、両側付属器摘出術、骨盤リンパ節郭清術、傍大動脈リンパ節郭清術です。これらの術式は従来の開腹術で行うと、恥骨(ちこつ)の上から下腹部を通り上腹部に至る切開が必要となります。この切開の大きさゆえ、術後の疼痛も少なからずあり、社会復帰にも時間がかかります。
今回行う腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術は、これまで開腹手術を行っていた患者さんに対しても腹腔鏡下手術を施行するというものです。この治療は欧米ではすでに長年にわたり数多く施行されており安全性も確立されていると考えられています。ただ、日本での導入と普及は遅れておりましたが、ようやく2020年4月より保険適用となった治療です。

3.腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術について

腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術の術式の特徴は、臍や下腹部に5mmから1cm程度の小さな傷が計6個ほどできる手術です。個々の傷が非常に小さいため、傷の痛みは少なく、早期の体力回復、早期の社会復帰が望めます。術後癒着や術後の腸閉塞(イレウス)も開腹術に比べて少なく、体の負担は軽微です。
そしてお腹の中では、開腹手術と同様に子宮を摘出し、骨盤リンパ節、傍大動脈リンパ節を摘出する手術です。
開腹術に比べ、個々の傷が非常に小さいため、傷の痛みは少なく、がんの根治術でありながら早期の体力回復が望めます。抗がん剤などの追加治療がない場合には早期の社会復帰も可能です。出血量や術後癒着や術後の腸閉塞(イレウス)も開腹術に比べて少なく、がんの手術であるにもかかわらず体の負担は軽微です。ただし、開腹手術よりも小さな傷より手術を行いますので、手術時間が長くかかるのがデメリットです。

4.期待される治療効果および予測される副作用

腹腔鏡下手術により、術後の創部の痛みが少ない、退院・社会復帰が早くなる、腸管運動の回復が早い、術後腸閉塞が少ない、免疫力の低下が少ない、手術創が小さく目立たないなどの利点が期待されます。デメリットとしては、手術時間が長くなる、他臓器損傷(膀胱、尿管、腸管など)、不測の出血、深部静脈血栓症および塞栓症、縫合不全、術後ヘルニアなどが起こることがあります。これらは、腹腔鏡下手術に特徴的なものもありますが、ほとんどが開腹手術でも同様に起こりうることがあります。一般的にはこのような合併症は腹腔鏡下手術の方が少ないと報告されています。

5.その他

この腹腔鏡下手術は希望された全ての方が、お受けになることができるわけではありません。術前症例検討会議で検討を行い、病状を鑑みて開腹手術の方がいいと判断した場合は、開腹手術に変更になる場合もあります。

6.担当責任医師の氏名、職名、連絡先

近畿大学医学部産科婦人科学教室
大阪府大阪狭山市大野東377-2
電話番号(072)366-0221
教授 松村 謙臣、講師 小谷 泰史