医療関係者へ

婦人科悪性腫瘍

子宮頸がん

子宮頸癌の治療においては手術療法の質が極めて重要です。
当科では、進行期に応じて、最先端の手術療法を提供します。

進行期

子宮頸部前がん病変~ⅠA期

子宮を温存する円錐切除術、あるいは単純子宮全摘術が標準であり、当科でも患者さんと相談してそのいずれかを選択していただきます。単純子宮全摘術は当科では大部分の患者さんが腹腔鏡下での手術を選択されており、より短期間での入院で治療が可能です。病気の程度によっては準広汎子宮全摘を行うこともあります。

ⅠB~Ⅱ期

基本は広汎子宮全摘術を行います。がん病巣をきちんと取り除くためには必要でもっともすぐれた術式です。広汎子宮全摘術を行う際には、極力、神経温存術式(*1)を行い、術後の膀胱機能麻痺を予防します。進行の程度によっては低侵襲手術として、腹腔鏡下広汎子宮全摘術(*2)を行うことができます。
また、妊孕性温存(子宮を残す)ご希望の強い早期がんの患者さんでは一定の基準に合致すれば、広汎子宮頸部摘出術(*3)を行うことも可能です。

Ⅲ期

原則は放射線療法をおこないます。可能であれば化学療法と放射線療法を組み合わせた同時化学放射線療法をおこない、根治を目指します。

Ⅳ期

放射線療法、もしくは化学療法を中心とした全身療法をおこないます。

手術療法

神経温存術式(*1)

広汎子宮全摘術後の後遺症のなかで深刻なものとして術後の排尿障害があげられます。
通常の広汎子宮全摘をおこなうと、膀胱をつかさどる神経を切断してしまうため、術後、自分で排尿できなくなり、カテーテルでの自己導尿が必要になることがよくあります。
これを軽減する目的で最近、開発されたのが、術中に神経を見つけてこれを丁寧に残す、神経温存広汎子宮全摘という術式で、さまざまな方法がありますが、当科では、もっとも手技的には難易度が高いが温存効果の高い術式をおこなっています。
この方法は丁寧におこなうと、5-6時間の手術時間がかかりますが、術後排尿機能の成績は極めてすぐれています。

腹腔鏡下広汎子宮全摘術(*2)

欧米や韓国ではさかんに腹腔鏡下広汎子宮全摘術が行われています。当院では2015年から先進医療として行っていましたが、2018年4月からは保険収載され、保険診療として行うことが可能になりました。低侵襲手術のため、術後の体の負担は少ないですが、従来の開腹手術と比較すると手術時間は長くなることが多く、おおよそ8時間前後の時間がかかります。

広汎子宮頸部摘出術(*3)

進行期ⅠA2~ⅠB期では円錐切除では再発の危険性が高く、これまで子宮を摘出することが必要でした。
最近、子宮頸部だけを広汎性に切除し、子宮を温存する広汎性子宮頸部摘出術が一部の施設でおこなわれるようになってきました。子宮温存によって再発、がん死になってしまわないよう、慎重に適応を決めることが重要で、患者さんとしっかり相談したうえでおこないます。