医療関係者へ

生殖

卵巣組織凍結・自家移植

1.はじめに

当病院では最善の治療を患者さんに提供すると同時に、さらに優れた薬や新しい治療法の開発を目指した研究を行っております。これから説明させていただく“卵巣機能不全を誘発する可能性がある治療予定の患者に対する卵巣組織凍結・自家移植”もその一つです。
今回の卵巣組織凍結・自家移植の施行については、近畿大学病院倫理委員会で審査され、承認を受けています。

2.卵巣組織凍結・自家移植について

卵巣機能不全を誘発する可能性がある治療予定の患者に対して、原疾患の治療前に卵巣組織の凍結保存を行い、治療後に融解移植することにより、女性患者の妊孕能を温存することを目的としています。

対象となる患者

  1. 手術療法や化学療法、放射線治療などにより卵巣機能の廃絶が予測される患者が卵巣組織凍結の対象となります。
  2. 自家移植においては、以下に該当する場合、移植することができません。
    1. 【01】移植時に生殖年齢を超えた患者。
    2. 【02】移植前に病状が悪化した、または死亡した患者。
    3. 【03】凍結予定の卵巣に明らかに悪性腫瘍が認められる、または予想される患者。

3.期待される結果および起こりうる危険性について

  1. 期待される結果
    卵巣組織凍結は、 他の治療法より多くの卵子を保存することができます。 また、 凍結した卵巣組織を融解・移植することにより、 妊孕能の温存や卵巣欠落症状の改善などの効果が期待できます。 片側卵巣を摘出しますが、 そのために不利益は生じません。
  2. 起こりうる危険性
    1. 【01】移植を行った場合、悪性腫瘍細胞の混入による再発が否定できません。
    2. 【02】凍結後に融解した卵巣組織が必ずしも正常な状態であるとは限りません。
    3. 【03】凍結後に融解した卵巣組織を移植しても必ずしも卵巣機能が回復するわけではありません。

4.他の治療法との比較

卵巣組織凍結・自家移植以外に妊孕能を温存する方法として、卵子・胚の凍結保存があります。
以下にそれぞれの方法の利点および欠点を示します。

  利点 欠点
卵子凍結
  • がん再発のリスクが小さい
  • 一度に保存可能な卵子数が少ない
  • がん治療開始時期が遅れる
  • 妊娠率が低い
  • 卵巣機能は保存できない
胚凍結
  • がん再発のリスクが小さい
  • 妊娠率が高い
  • 一度に保存可能な卵子数が少ない
  • がん治療開始時期が遅れる
  • 既婚者に限定される
  • 卵巣機能は保存できない
卵巣組織凍結
  • 大量の卵胞を一度に保存できる
  • 卵巣機能の保存が期待できる
  • がん治療がすぐに開始できる
  • がん再発のリスク
  • 卵胞の生存率が低い
  • 妊娠への寄与率が低い
  • 卵巣機能の持続期間が短い

5.卵巣組織凍結・自家移植の費用

この治療はまだ保険診療として認められていないため、
入院・手術費用は自費診療の患者負担です。

6.担当医師ならびに連絡先

この臨床試験について何かお聞きになりたいことがありましたら、いつでも遠慮なく下記の医師または連絡先にお問い合わせ下さい。

担当医師

松村 謙臣、藤島 理沙

連絡先

近畿大学医学部産科婦人科学教室
大阪府大阪狭山市大野東377-2
電話番号(072)366-0221 (内線3215)