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研究紹介- research -

生活習慣病の予防に関する研究

CIRCS(Circulatory Risk in Communities Study)

 1963(昭和38)年から長期に亘って継続している国内でも稀な地域コミュニティにおける大規模コホート研究です。本研究は、大阪府立成人病センター集検Ⅰ部の公衆衛生医師らによる秋田県井川町と大阪府八尾市における脳卒中予防対策の一環として始まった疫学調査・研究に端を発しています。その後、秋田県本荘市(現・由利本荘市)石沢・北内越地区、高知県野市町(現・香南市野市町)、茨城県協和町(現・筑西市協和地区)へと対象地域が拡大して行きました。60年以上続いているスタディですが、CIRCSの名が冠せられたのは実は比較的最近の2009(平成21)年のことです。本研究は、日本人における脳卒中の危険因子を疫学研究により証明し、その成果を地域の予防対策に還元し、脳卒中発症率・死亡率を劇的に減少させることを示しました。脳卒中が予防可能な病気であることを明らかにしたその成果は、その後の老人保健法成立にも大きく寄与しました。
 現在までに30歳以上住民のべ28万人(実人数約4万人)が本研究に参加しており、脳卒中、虚血性心疾患、心臓突然死の発症調査と発症要因に関する疫学研究を継続中です。また、近年は超高齢社会に即した要介護、認知症、フレイル、慢性心不全、糖尿病、慢性腎臓病の予防を目的とした研究も行われています。

【研究課題】

【共同研究機関】

【参考サイト】

秋田県井川町との健康づくり推進に関する共同研究事業

2023年4月1日付で、CIRCSの地域の一つである井川町と近畿大学医学部との間で共同研究事業契約が締結されました。本研究事業は、井川町と本教室とが相互協力して、生活習慣病予防及び健康づくりを推進するための対策、調査、分析、評価、研究を実施し、井川町における住民の健康な生活を確保するとともに、人的・知的交流を通じて、それぞれの発展と充実に寄与することを目的としています。

井川町の健康づくり事業を推進するための共同研究

JACC Study(Japan Collaborative Cohort Study)

文部科学省(当時文部省)の多施設共同研究として1988年に開始された24施設45地区の約11万人を対象とした生活習慣とがん・循環器疾患等の生活習慣病による死亡およびがん罹患との関連要因を明らかにすることを目的とした大規模コホート研究です。2023年3月に倫理審査の承認を受け、本教室においても本研究の疫学研究の実施が可能となりました。

次世代多目的コホート研究(JPHC-NEXT)

岩手県二戸・軽米地域、秋田県横手地域、長野県佐久地域、茨城県筑西地域、高知県香南・安芸地域、愛媛県大洲地域、長崎県雲仙・南島原地域に居住し、 次世代多目的コホート研究に同意した11万5千人を対象として、生活習慣と関係のある病態・疾病・障害における予防要因・危険要因を明らかすることを 目的とした大規模コホート研究です。本教室においては、倫理審査委員会の承認のもとで、下記の研究課題を実施しています。

【研究課題】

次世代多目的コホート研究で収集されたアンケート・健診・追跡などの匿名化された既存情報を用いたデータ解析研究

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多目的コホート研究(JPHC Study)

全国11保健所管内の約14万人を対象として、生活習慣とがん・循環器疾患などの生活習慣病との関連要因を明らかすることを目的とした大規模コホート研究です。本教室においては、倫理審査委員会の承認のもとで、下記の研究課題を実施しています。

【研究課題】

多目的コホート研究で収集されたアンケート・健診・追跡・食事記録などの匿名化された既存情報を用いたデータ解析研究

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多目的コホート研究における5年後調査の血漿試料を用いたがん・循環器疾患・認知症等の生活習慣病を対象とするケースコホート研究

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福島県原発事故の健康影響に関する研究

放射線健康管理・健康不安対策事業(放射線の健康影響に係る研究調査事業)

東京電力福島第一原子力発電所事故が経時的な疾病動向に与える影響を検討するため、福島県および近隣地域、全国における既存の統計情報(人口動態統計、地域がん登録、小児血液・がん学会登録、先天異常データベース、患者調査、レセプト・介護保険情報等)を収集・使用し、主な死因別死亡率、がん罹患率、循環器罹患率、先天異常発生率、主な疾患別受療率等を指標として、福島県内外での疾病動向を把握することを目的とする研究です。本教室では、循環器疾患とその危険因子に関する県単位および福島県内地域単位での動向把握に関する調査研究として、人口動態調査の2次利用データ、NDB特定健診データ、NDBレセプトデータ等を用いた研究を行っています。

福島県民健康調査データの学術研究目的のための第三者提供に関する制度検証

本教室が1件目のデータ提供先として選定され、福島県と共に検証を進めることになりました。

近隣地域との連携に基づく研究

堺市との包括連携協定に基づく健康づくりに関する研究

2022(令和4)年12月11日に堺市と近畿大学との間で包括連携協定が締結されました。
本教室でも堺市の医療ビックデータを活用した健康増進に携わっていく予定です。

八尾市健康まちづくり科学センターとの共同研究

CIRCSの地域の一つである八尾市南高安地区を有する八尾市は、2021年4月に八尾市保健所内に八尾市健康まちづくり科学センターを開設し、「すべての世代に光をあてて、一生暮らし続けたいまちづくり」を目指しています。また、八尾市は2018年6月に近畿大学と包括連携協定を締結しています。これまで”八尾市と大阪大学大学院医学系研究科との健康づくり事業の推進に関する協定”に携わって来た経験を活かして、本教室でも引き続き同センターとの共同研究を推進していく予定です。

骨折・骨粗鬆症予防に関する研究 ※ 伊木前教授(現・客員教授・名誉教授)らによる研究

Japanese Population-based Osteoporosis(JPOS)研究

JPOS研究は、1996年、全国7カ所の調査地から無作為抽出された女性4550人を対象に骨粗鬆症の実態を明らかにすべく開始されました。内、5カ所については20年間の追跡を完了しています。この研究から、骨密度や骨代謝指標の日本人標準値を提案し、骨密度への影響要因として喫煙、ビタミンD受容体等の遺伝子多型、骨代謝指標、納豆など、骨折のリスク要因として骨代謝指標高値、既存椎体骨折、低TBS値、低血清25(OH)ビタミンD濃度などを明らかにしました。また、低骨密度や骨折が頸動脈で調べた動脈硬化と関係することを見いだしました。今後も骨折予防、ならびに骨代謝と動脈硬化や糖尿病との関連の研究を続けていきます。

https://www.med.kindai.ac.jp/pubheal/jpos/

藤原京スタディ男性骨粗鬆症(FORMEN)研究

男性は女性のように閉経後の急激な骨量の減少を起こすことはありませんが、60歳以降年間およそ0.5から1.0%の割合で骨量が減少すると報告されています。また、骨粗鬆症性骨折の中でもっとも重篤な大腿骨近位部骨折の約2割を男性が占めています。しかしながら、高齢化が急速に進む中にあっても、男性の骨折が公衆衛生上重要な問題であることの認識は未だ低く、男性の骨折に関する研究は決定的に不足しています。本講座では、奈良県在住の65歳以上の男性約2000人を対象とする大規模コホート研究を行い、男性における骨粗鬆症性骨折のリスク要因の解明と骨代謝指標を含めた骨折リスク評価モデルの開発を進めています。

https://www.med.kindai.ac.jp/pubheal/FORMEN/

小児期からの生活習慣病予防のための疫学研究

心血管疾患や骨粗鬆症のような生活習慣病はほとんどが成人期以降に発症しますが、その初期病変の一部は発育期に形成されます。たとえば、肥満や脂質異常症は幼児期や学童期に発生し、循環器疾患や内分泌代謝疾患の危険因子となります。また、発育期の痩身は、人生における最大骨量を減らし、高齢期の骨粗鬆症のリスクとなります。この事から生活習慣病の予防には発育期での対策が必要であることがわかります。本講座では、喜多方市、三島市、袋井市、磐田市、浜松市、淡路市、姫路市を対象地域として、教育委員会や保健センターの協力を得ながら、出生から大学生年齢に至る肥満や痩せ、血清脂質、血圧、体組成、骨密度などに関する疫学研究を展開しています。

【研究課題】