炎症性腸疾患(IBD)センターのご紹介
当院では、潰瘍性大腸炎やクローン病をはじめとする炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)の専門的な診療を行う「炎症性腸疾患センター」を設置しています。 近年のIBD患者の増加を受け、より高度で専門的な医療体制の構築を目指して、2025年4月に本センターを新たに設立しました。
潰瘍性大腸炎の患者数(全国)
クローン病患者数(全国)
当院のクローン病と潰瘍性大腸炎の患者数(のべ人数)
IBDは、再燃と寛解を繰り返す慢性の腸の炎症性疾患であり、患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼす疾患です。こうした疾患に対して、私たちは患者さん一人ひとりの状態や生活背景に合わせた、個別化された医療の提供を目指しています。
消化器内科・外科・小児科・透析部・看護部・栄養部・薬剤部など、病院内の多職種が連携し、診断から治療、生活指導、社会復帰支援まで、総合的な医療体制を整えています。
対象となる疾患
- 潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis)
大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じる疾患で、血便や腹痛、下痢などの症状を繰り返します。 - クローン病(Crohn's Disease)
消化管のどの部位にも炎症が起こり得る疾患で、特に小腸や大腸に狭窄や瘻孔などを伴うことがあり、精密な検査と長期的な管理が求められます。
診療体制とスタッフ紹介
センター長 (消化器内科) |
工藤 正俊 |
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センター長代理 (消化器内科) |
米田 頼晃 |
ー | 消化器内科スタッフ |
外科 | 大東 弘治 |
その他の連携部門 | 小児科、透析部、看護部、栄養部、薬剤部 |
IBDは内科・外科・栄養・薬物療法など多角的な視点からの対応が求められるため、当センターでは各専門職が連携し、安心・安全な医療を提供しています。
診療の特色
- 最新の診療ガイドラインに準拠した治療戦略
- 病勢の的確な把握に基づくバイオ製剤や免疫調整薬の適正使用
- 必要に応じた外科治療への迅速な連携
- 管理栄養士・薬剤師による日常生活支援
- 地域の医療機関とのスムーズな連携による、患者さん中心の医療体制
特殊検査:小腸内視鏡検査(カプセル内視鏡・バルーン内視鏡)
特にクローン病においては、小腸の深部に病変が及ぶことが多く、通常の大腸内視鏡では確認できない部分の評価が重要となります。
当センターでは、小腸の精密検査として以下の特殊内視鏡を導入しています:
- カプセル内視鏡
カメラ付きのカプセルを飲み込むことで、小腸全体を無侵襲で撮影できる検査です。痛みもなく、入院不要で行えるため、患者さんの負担が少ないのが特徴です。小腸粘膜のびらん・潰瘍の検出に優れています。 - バルーン内視鏡(ダブルバルーン/シングルバルーン)
専用のスコープを使って小腸の深部まで直接観察・処置が可能な検査です。必要に応じて組織検査や狭窄部位のバルーン拡張も行うことができます。クローン病の診断・治療計画に不可欠な情報を得ることができます。
これらの検査を適切に使い分けることで、IBDの早期診断、治療方針の選定、病勢評価において高い精度を実現しています。
当院のカプセル内視鏡とバルーン内視鏡の検査数
地域医療との連携
IBDは長期的な疾患であるため、患者さんが安心して生活できるよう、地域医療との連携が欠かせません。当センターでは、かかりつけ医との情報共有を積極的に行い、当院での精査・治療後は、安定期には地域医療機関でのフォローアップへ移行できる体制を整えています。
また、地域の先生方との連携を深めるための勉強会やケースカンファレンスも定期的に開催しています。
第1回 2025/04/22
第2回 2025/05/20
患者さんへ
炎症性腸疾患は、進歩する治療によって以前よりもずっとコントロールが可能な病気となってきています。しかし、症状や経過は個々に異なるため、専門的な診断ときめ細やかなフォローが欠かせません。
私たち炎症性腸疾患センターは、患者さんの人生に寄り添い、長く安心して治療を続けられる環境を提供します。初診・再診・セカンドオピニオンなど、いつでもご相談ください。