研究オプトアウト情報

2021年04月07日 掲載

胃癌術後補助化学療法とマイクロサテライト不安定性および免疫関連バイオマーカーとの関係を検討する多施設共同後向き観察研究

1.対象となる方

1) 20歳以上
2) 病理学的に胃癌(腺癌)と確定診断された症例
3) 標準的な外科的切除(D2郭清術)をうけた症例
4) 術後診断 II/III期の症例で術後検体がアクセス可能な症例
5) 術後にTS-1単剤による補助化学療法が行われた症例
6) 本研究に関して、患者本人から文書で同意を得られている症例、もしくは既に既存試料が得られて保管されている場合、患者より明確な拒否の意思が無い症例。

 

2.研究実施機関

近畿大学医学部腫瘍内科 責任者:川上 尚人
大阪医科大学 一般・消化器外科 責任者:李 相雄
関西医科大学附属病院 消化管外科 責任者:井上 健太郎
堺市立総合医療センター 消化器外科 責任者:藤田 淳也
大阪労災病院 上部消化管外科 責任者:川端 良平
大阪大学大学院医学系研究科先進癌薬物療法開発学寄附講座 責任者:佐藤 太郎

3.本研究の意義、目的、方法

現在、ステージIIもしくはIIIの胃癌に対しては、根治的な手術を行ったのちに経口抗がん剤TS-1による1年間の術後補助化学療法を行うことが標準治療です。術後補助化学療法は手術単独に比べて、胃癌の再発を明らかに抑制し、その結果、長生きができることが分かっています。ただし、同じステージであっても、術後補助化学療法を行っても再発する患者さまがおられる一方で、手術単独で根治する患者さまもおられます。現在のところ、誰にとって術後補助化学療法が有益なのか、もしくは無益なのかを治療開始前に見極めることはできないため、ステージIIもしくはIIIの胃癌患者さまのうち、根治的手術を受けられた、基本的に全ての患者さまに術後補助化学療法を行っています。この研究の対象となるのは、ステージIIもしくはIIIの胃癌に対する根治的な手術ののちに経口抗がん剤TS-1による1年間の術後補助化学療法で治療をされた患者さまです。
がんの成り立ちには様々な原因がありますが、その中の一つにマイクロサテライト不安定性(MSI)というものがあります。MSIは、ステージIIもしくはIII大腸癌のうちおよそ15%に認められ、この特徴をもった患者さまは手術単独で良好な治療成績が認められることが分かっています。一方で、術後補助化学療法が無効、もしくは時にかえって治療成績を悪くする可能性があることが示されています。またそうした現象に腫瘍免疫が強く関わっていると考えられています。近年の研究により、胃癌の中にマイクロサテライト不安定性(MSI)という特徴をもった方がおられることがわかりました。海外の研究では胃癌でも大腸癌と同様にMSIを有する患者さまにおいては術後補助化学療法が無効、時には有害である可能性が示されています。しかし、日本の標準治療であるTS-1でのデータはこれまでになく、MSIの有無と治療効果の関係は不明です。
ステージIIもしくはIII胃癌におけるMSIはおよそ8%程度に認められると考えられています。その一部は、遺伝性腫瘍症候群であるリンチ症候群であることがわかっています。MSIが認められた場合、リンチ症候群と診断される確率は20~50%程度と考えられています。
リンチ症候群とは、比較的若い年齢で大腸や子宮、胃などさまざまな臓器にがんができやすくなる遺伝性疾患であり、患者さんのお子さんやご兄弟(姉妹)に50%の確率で同じ体質が受け継がれます。ただし、MSI検査だけではリンチ症候群と診断することはできず、確定するためには、さらに詳しく家族歴の聞き取りや遺伝子診断を行う必要があります。
今回の研究はリンチ症候群を見つけることが目的ではありませんが、MSIが陽性の場合にはリンチ症候群の可能性もでてくるため、必要な方には、結果の解釈について改めて説明の時間を設けます。また、心配や不安などがある場合、遺伝相談(遺伝カウンセリング)の機会を提供いたします。
本研究に参加の施設における遺伝子カウンセリングの体制としては下記のものがありますので、ご希望の場合は受診していただけるように致します。
近畿大学病院 遺伝子診療部 
関西医科大学 臨床遺伝センター
大阪医科大学 遺伝カウンセリング室

本研究の目的は、胃癌に対する根治的手術をうけた患者さまのうち、MSIの有無によってTS-1による術後補助化学療法の効果に違いがあるのか、また免疫に関連する因子の違いがあるのかを明らかにすることです。
本研究の方法は、過去の通常診療で得られた腫瘍組織および臨床情報・診療情報を診療録より入手・収集し、各項目の関連性を統計学的手法により解析します。また、過去の通常診療で得られた腫瘍組織を用いて免疫関連マーカー(CD3、CD8、FOXP3、T-bet、Tim3)の測定を行い、上記の情報との関連性を検討します。
もし、データの利用をご希望されない場合には、下記連絡先までご連絡くださいますようお願い申し上げます。

 

4.協力をお願いする内容

上記研究実施機関において手術をされたあなたの胃癌の組織の一部、およびあなたの診療記録を調査させていただきます。

【調査する項目】
①性別、②診断時年齢、③病理診断名、④手術日および術式、⑤原発巣部位およびTNM分類、⑥患者識別コード、⑦TS-1の治療内容、治療期間、治療効果(無再発生存期間(RFS)、3年生存期間(3yOS)、全生存期間(OS)、⑧TS-1開始前の白血球数およびリンパ球数⑨再発症例については、再発後の化学療法レジメンおよび再発後のOS、⑨通常診療においてマイクロサテライト不安定性を調べている症例においてはその情報

【試料の種類】
① 凍結標本:検体の腫瘍塊は一辺5~10mm以上の組織切片 (がん部と非がん部)
② 未染のパラフィン包埋標本

5.本研究の実施期間

倫理委員会で許可された日から5年間

6.プライバシーの保護について

本研究で扱う患者さんの個人情報は、研究用に付与された患者番号のみです。その他の個人情報(住所、氏名、電話番号など)は一切取扱いません。本研究で扱う診療情報は個人を特定されうる個人情報は全て削除され、匿名化されます。個人情報と匿名化データをつなげる情報(連結情報)につきましては、本研究の情報管理者が研究終了まで厳重に管理し、研究に関してデータの確認が必要と判断された場合にのみ参照します。上記研究実施機関から【調査する項目】に示した情報を収集し、近畿大学医学部腫瘍内科にて保存/管理いたします。
この臨床研究で得られたデータおよび試料を二次利用すること(他の研究で利用すること)が有益であると研究代表者が判断した場合は、この臨床研究で得たあなたの診療情報(測定結果)および試料が利用される可能性があることをご承知おきください。その際には改めて実施計画書を作成し、必要な場合には改めて倫理審査委員会の承認を受けます。その場合もあなたの個人情報は厳重に守られます。
なお、得られた情報は研究終了後から5年後に匿名のまま自動的に破棄されます。測定終了後の余剰の組織は、研究終了後から5年後に原則として返却(近畿大学医学部病院病理部または各参加施設)または破棄します。

 

7. ご質問や研究に対する拒否の自由

その他に本研究に関してお聞きになりたいことがありましたら、遠慮なくいつでも担当医または下記のお問い合わせ先まで御相談下さい。
患者様からのご希望があれば、MSIの検査結果および二次的所見についてお知らせいたします。またその方の臨床データおよび試料を研究に利用しないようすることをご希望であればそのようにすることも可能です。そういったご要望を頂いたとしても、患者様の不利益となることはありません。

 

8. 問い合わせ先

近畿大学医学部腫瘍内科
施設責任者・情報管理責任者:医学部講師 川上 尚人
〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2
TEL:072-366-0221(Ex.3542) / FAX:072-360-5000

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