研究について

臨床試験

近大医学部腫瘍内科での臨床試験

数十種にわたる臨床試験

当科では臨床試験にも非常に力を入れています。
がん治療以外の分野も含めて、ほぼ全ての治療は臨床試験により実用性・効果が検討された結果、標準治療として認められるようになります。
がん治療、特に我々が専門とする化学療法は、近年目覚ましい発展を遂げておりますが、この急速な発展も全て臨床試験を実直に行うことで達成されてきました。
当科では、がん治療の歴史を象徴するような大規模国際共同試験(例えば、CheckMate試験やKEYNOTE試験など)にも多数参加しており、また自施設を中心に計画された多施設共同臨床試験も多数実施しております。当科で行ってきた多くの臨床試験は、現在のがん治療の標準治療を築き上げ、国内外のガイドラインに記載されるものも多数あります。

当科では、頭頸部癌、肺癌、乳癌、消化器癌のほか、希少がんや臓器横断的固形がんの企業主導試験・他施設主導試験を含む第I相試験、第II相試験、第III試験に多数参加しており、その数は同時並行的に常に数十種類に登ります。

特に、ここでは当科が主施設(Principal Investigator)として計画し、実行してきた医師主導臨床試験を紹介します。

OGSG1105 HERBIS-4A試験

HER2陰性胃癌における初回治療の標準治療はCDDP+S1療法や SOX(Oxaliplatin+S1療法)がありますが、S1と同様のフッ化ピリジミン系殺細胞薬のCapecitabineとCDDPの併用療法についてのデータは十分ではありませんでした。そこで、当科を主施設として計画されたランダム化第II相試験のHERBIS-4試験が、大阪医療圏の主だった施設を中心としたOGSGという多施設臨床試験グループの元で実施されました。結果、Capecitabine+CDDP療法の優越性は示されませんでしたが、実地臨床における臨床的疑問を実直に解決した試験であり、患者が治療を選択するうえでも非常な重要な研究を行うことが出来ました。

Kawakami H, et al. Oncologist.2018;23;1411

UDON療法第I相・第II相試験

根治不能進行再発食道癌の標準治療は全身化学療法ですが、この全身化学療法の治療方法(レジメン)については国内外を含めて過去に十分に検討されておりませんでした。そこで当科では、5-FU、ドセタキセル、ネダプラチンによる3剤併用療法のUDON療法を開発し、治療効果・安全性を検討するための第I相試験・第II相試験を計画し、実施してきました。第II相試験においてこの3剤併用療法は奏効率72.7%と非常に強力な抗腫瘍効果を示しました。3剤併用療法であるため毒性が懸念されましたが、毒性についても許容範囲内でした。第III相試験における検証が行われていないため、まだ標準治療と呼べるものではありませんが、食道癌における将来の治療開発を考えるうえで非常に重要な成果が得られたと考えられます。

Ueda S, et al.Cancer Chemother Pharmacol.2015;76:279
Ueda H, et al.Oncologist.2019;24:163

Eribulin+S1併用療法第I相試験

進行再発乳癌の標準治療は全身化学療法です。乳がんにおける全身化学療法はアンスラサイクリン系やタキサン系により行うのが基本ですが、それらの治療に耐性となった場合の治療方法は確立していません。当科では、このような状況で一般的に使用されているEribulinとS1という薬剤の併用療法の可能性に注目しました。この併用療法は世界に先駆けて当科で初めて開発された治療法であり、適切な併用方法を開発するための第I相試験を実施しました。結果、EribulinとS1を併用する際の適切な用量用法が見出されました。Eribulin+S1療法はまだ標準治療ではありませんが、発展を続ける乳がん治療の今後の開発にむけて重要な知見を発信することが出来ました。

Sakiyama T et al. Brit J Cancer.2015;112:819

WJOG5910L試験

進行再発非小細胞肺がんの標準治療は全身化学療法です。特に非扁平上皮型の場合には、初回治療のプラチナ併用療法に血管新生阻害薬のBevacizumabを併用することにより治療効果が高まることが過去の大規模臨床試験で証明されました。一方で、このBevacizumabは大腸がんにおいても標準的に使用されている薬剤であり、大腸がんにおいては初回治療だけでなく二次治療でも引き続きBevacizumabを併用することで臨床的利益が得られることが知られていました。そこで、非小細胞肺がんにおいても二次治療以降のBevacizumab併用の有益性が期待され、その是非を検討ためのランダム化比較第II相試験を、日本を代表する多施設臨床試験グループWJOGの元で実施しました。結果、二次治療以降でも血管新生阻害薬を併用することが有望であることが世界に向けて発信されました。

Takeda M, et al. Cancer 122(7): 1050-1059, 2016

原発不明がんにおける遺伝子発現プロファイル原発巣推定を元にした治療法の意義を検討するランダム化比較第II相試験

原発不明がんは全がんの数%を占める「稀ではない」疾患ですが、その特殊な疾患特異性から標準治療が確立していません。国外では遺伝子発現プロファイル原発巣推定を元にした治療法の有用性が報告されておりますが、その是非については十分に検討されていませんでした。そこで、当科を中心とした多施設共同試験によりその意義と有用性を問うべく原発不明がんにおける世界初のランダム化比較第II相試験を行いました。結果的に、遺伝子発現プロファイル原発巣推定を元にした治療法の有益性は証明されなかった一方で、その潜在的な有用性について継続的に検討すべきことも示されました。これにより、原発不明がんの今後の治療開発の更なる改善の必要性を警鐘する重要な知見が発信されました。

Hayashi H, et al. J Clin Oncol.2019;37:570

まとめ・その他

このように当科では、自ら臨床試験を計画し、多施設共同試験を実施する十分な知識と経験を有しております。これらの臨床試験は多くの患者様のご協力と国内外の多数の施設との信頼性・関係性により実施することが出来ています。

上記に挙げた他にも、進行再発乳がんに対するEribulin+S1療法の第II相試験(ERIS試験)、進行再発頭頸部がんに対するnedaplatin+S1+cetuximab併用療法の第II相試験、原発不明がんに対するNGSに基づく治療決定の意義を検討する多施設第II相試験(CUP-NGS試験)、原発不明がんに対するnivolumabの多施設第II相試験(Nivo-CUP試験)、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対する血液遺伝子検査に基づいた治療効果を検討する第II相試験(WJOG8815L)、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するafatinib/osimertinib交替療法第II相試験(WJOG10818L)、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するnivolumabとプラチナ併用療法のランダム化比較第II相試験(WJOG8515L)、進行再発非小細胞肺がんにおけるS1維持療法の効果を検証するランダム化比較第III相試験(WJOG7512L)など、現在実施中・解析中の臨床試験が多数あります。

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