【はじめに】
2022年4月1日~2023年3月31日の1年間、和歌山県立医科大学 呼吸器内科・腫瘍内科より国内留学の機会を頂戴し近畿大学腫瘍内科で勉強させて頂きました。もともとは呼吸器内科医として勤務をしていた自分にとって肺がん以外のがん腫は一切経験したことの無い未知の領域でした。しかし自分は初期研修医の頃から様々ながん腫を診療する腫瘍内科にも関心を抱いていたことから、腫瘍内科での研修を和歌山県立医大の山本信之教授に志願させて頂きました。東京をはじめとして全国の施設を検討した結果、特定の領域に限定されない幅広いがん腫を診ることができる筆頭施設は近畿大学腫瘍内科であろうと、山本教授より推薦して頂き今回の機会を得ました。
【感想、良かったこと、身についたこと】
研修が始まる当初は肺がん以外未経験の医師6年目、自分に腫瘍内科が出来るだろうか、研修中はどこまでサポートを受けられるのだろうかと不安で一杯でした。しかし1年間の研修を終えた今、腫瘍内科医としての一歩を近畿大学 腫瘍内科で踏み出せて本当に良かったと心から感じています。最大のポイントは経験するがん腫の幅広さ、そして手厚いサポート体制でした。腫瘍内科を標榜していても、実際の診療では特定のがん腫に限られてしまう施設が少なくありません。しかし近畿大学の腫瘍内科は真に幅広く固形がんを扱っており、またその指導を行うことができる上司がそれぞれの領域に複数人ずつおられます。多様ながん腫を経験すると共に、色々な考え方を知ることができるので、一つの方針を決定するにおいても多角的な目線が養われるのは貴重な環境であると思います。この点は特に、2023年4月から和歌山県立医科大学 呼吸器内科・腫瘍内に戻ってから一層強く感じています。エビデンスが乏しい場面に遭遇した時、近畿大学 腫瘍内科のカンファレンスではエビデンスを持ち寄り、そのエビデンスを挿入できるのかどうか、メリットデメリットなど検討を重ねた上で方針が決定されています。その過程を学ぶことは、自分自身で初めて経験する状況でも方針を組み立てていく思考回路に活かすことができます。
また腫瘍内科医を実践する上で、臓器に依らない重要な点としてゲノム医療とirAE(免疫関連有害事象)の対応が挙げられます。近畿大学病院はゲノム拠点病院に指定されており隔週ごとにエキスパートパネルが開催されています。どのようにパネル検査結果が解釈され、治療提案が行われるか、開催側に立てることは非常に勉強になります。irAE対策としては定期的に他診療科を含めてirAEの院内勉強会が開催されており臓器専門の先生から症例ベースでレクチャーや意見など頂けます。院内全体でirAE対応に取り組んでおりこちらも重要な学習機会となりました。
診療以外の面では、医師6年目でありながら論文執筆をしたことがありませんでしたが、初歩の初歩から手厚く指導頂き、肺がんと乳がんそれぞれの領域で英文Case Reportを、学会発表は乳がん学会の近畿地方会と臨床腫瘍学会総会で発表の機会を得ました。
医局として基礎的な内容から臨床試験まで様々なテーマの研究が行われており、自身のやりたい内容ごとに指導できる先生がおり、自身の興味に沿った研究の機会を得ることができます。求めよ、さらば与えられん。この言葉に表される環境だと思います。
【最後に】
1年間という短い期間ではありましたが、臨床から論文執筆、学会発表、その他多大なるご指導を頂き誠にありがとうございました。もっと長く勉強させて頂きたかったのが本音ですが、限られた研修期間であってもしっかりとした土台を作ることができ、今後腫瘍内科医として立っていく自信をつけることができました。自分にとってこれ以上の環境は無かったと思います。丁寧に、親切に、繰り返し教えて頂いた全ての先生に深く感謝申し上げます。この1年間で学んだことを十分に活かして腫瘍内科医のトレーニングを続けていきます。またご一緒に働かせて頂ける機会を楽しみにしております。本当にありがとうございました。