研究について

臨床・基礎・トランスレーショナル研究

当科では臨床だけでなく「研究をしつづけ医療に活かす」を合言葉に研究にも積極的に取り組んでいます。臨床研究、TR研究、基礎研究と3つのテーマについて行っています。また臨床と同様に肺癌・消化器癌・乳癌・頭頚部癌・原発不明癌・悪性黒色腫など多様な癌腫について研究を行っています。

臨床研究について

当科では治験やWJOGなどの臨床試験グループで臨床試験の提案を積極的におこなっています(臨床試験のページへ)。
また、観察研究も重視しており、多くの新しい知見を臨床現場に提供しています。例えば非小細胞肺癌の免疫治療では免疫関連有害事象の合併患者で抗腫瘍効果が高いことを報告しました(Haratani K et al. JAMA Oncology.2018;4:1017)。この論文はJAMA Oncology誌の中で2018年に掲載された数百以上の論文の中で2番目に多く引用された論文として大きな評価を受けています。

また、非小細胞肺癌において血液中のリンパ球数等が免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を予測することを明らかにするなど(Tanizaki J et al. Journal of Thoracic Oncology 2018;13:97)、数多くの臨床経験・データをもとに臨床研究を行っており、これらの結果は日々の臨床に活かされています。

また、進行再発食道癌において食道狭窄症状が合併していた場合に、全身化学療法に緩和的放射線治療を併用することが全身転移制御と食道狭窄緩和に有用であることも報告しました(Ueda H et al. Oncotarget.2017;8:80286)

この他にも、非小細胞肺がん患者における免疫チェックポイント阻害薬治療後の殺細胞薬治療への影響を検討する多施設後ろ向き観察研究WJOG10217L、非小細胞肺がん患者における根治的化学放射線療法後デュルバルマブ療法の耐性因子を検討するための前向き観察研究WJOG11518Lなど多くの臨床研究を行なっています。また、がんサバイバーシップの研究など幅広く研究に取り組んでいます。今後も継続的にこれらの結果を報告していく予定です。

TR研究について

当科では分子標的治療や免疫治療のTR研究も積極的に行っています。当科独自の研究に加え、幅広い研究室とのコラボーレション研究なども行っており、本学ゲノム教室と共同でクリニカルシーケンスも進めています。これらは基礎研究で得られた「発見」を臨床に応用することを目指した研究となります。

例えば、我々はクリニカルシークエンスによる研究結果を元に、分子標的薬の臨床試験の対象となる患者を抽出し、それが治療成績の改善につながることを報告しました(Takeda M et al. Annals of Oncology.2015;26:2477)。

他にも、我々は非小細胞肺癌、大腸癌でHER2遺伝子増幅がEGFR阻害剤の耐性をもたらすことを発見しました(Yonesaka K et al. Science Translational Medicine. 2011;3:99)。現在、HER2陽性の非小細胞肺癌、大腸癌を対象としたHER2阻害剤の臨床開発が進められており、多くの患者の治療を行っています。

免疫チェックポイント阻害薬は全ての患者で有効性を示せるわけではありません。腫瘍組織におけるPD-L1発現は免疫チェックポイント阻害薬の治療効果の予測ツールとして用いられていますが、十分な予測因子とはなっていません。我々は、非小細胞肺がん患者の腫瘍組織を用いて腫瘍細胞のB7-H3発現がPD-L1に関係なく免疫チェックポイント阻害薬治療効果の負の予測因子となる可能性を見出しました(Yonesaka K et al. Clin Can Res.2018;24:265)。今後、B7-H3を対象とした治療開発が進む可能性が期待されます。

また、免疫チェックポイント阻害薬の効果が乏しいとされているEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんにおいてどのような特徴があれば免疫チェックポイント阻害薬の効果が改善されるかという臨床的疑問に注目し、PD-L1陽性やT790M遺伝子変異陰性などの特徴があれば免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待されることを示しました(Haratani K et al. Annals of Oncology.2017;28:1532)。この結果を背景に臨床試験を実施しており(WJOG8515L: 臨床試験のページを参照)、今後さらなる研究結果を報告する予定です。

そして、あらゆる癌種で腫瘍組織・血液などの臨床検体をバンキングし、遺伝子解析を行うなど癌腫横断的に治療に携わる当科の特徴を生かしたTR研究を行っております。

実際に、乳がん患者から提供頂いた血液検体の研究では、血漿中のHER2遺伝子増幅が認められない場合にT-DM1療法の内在耐性が予測される可能性を見出しました(Sakai H et al. Breast Cancer.2018;25:605)。

また、先述のScience Translational Medicineへの報告を元に行なった研究では、大腸がん患者から提供頂いた血漿中の HER2遺伝子増幅が、抗EGFR抗体療法の耐性に関連していることを見出しました(Takegawa N et al. Oncotarget.2016;7:3453)。

原発不明がんの臨床検体を用いた検討では、腫瘍組織生検検体のRNA解析を行うことにより、原発不明がんにおいても免疫チェックポイント阻害薬療法が有望であることを見出しました(Haratani K et al. Unpublished data. 下図は2019年国際がんシンポジウムの発表内容より転載)。これらの知見により、現在当科を中心に原発不明がん患者のPD-1阻害薬第II相試験を進行中です(臨床試験のページへ)。

基礎研究について

当科では「臨床応用」を目指した基礎研究にも精力的に取り組んでいます。そのために企業との共同研究も産学連携として積極的に進めています。新薬を第一線で開発する企業と実際の臨床現場で臨床的課題を日頃から痛感している我々腫瘍内科が協力することで、将来のがん治療につながる最新かつ実践的な知見が得られます。

一例として、肺癌細胞株を用いて第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤オシメルチニブ耐性株を樹立しました。この耐性株ではHER-familyの一員であるHER3の発現亢進を認め、抗HER3抗体薬物複合体U3-1402への高い感受性を示し、企業と共同で特許出願中です(Yonesaka K et al. Oncogene.2019;38:1398)。現在、同治療薬はEGFR遺伝子変異陽性肺癌を対象に臨床開発が進行中で、オシメルチニブ耐性例で優れた抗腫瘍効果を発揮しています。

第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬耐性機序の研究においては、他にもSrc経路が重要であることを発見し、Src阻害薬の併用が有望であることも報告しています(Watanabe S et al. Mol Cancer Ther.2017;16:2563)。

また、乳がん細胞株を用いた検討では、HER2抗体療法の耐性にHER3シグナル経路が関与している可能性を見出し、その克服にHER3抗体が有望であることを示しました(Watanabe S et al. Cancer Med.2019;8:1258)。

最近、注目を浴びてきているADC薬を用いた研究でも、当科から一定の成果が挙がっています(Nonagase Y et al. Oncotarget. 2016;7:84860、Takegawa N et al. Int J Cancer.2017;141:1682、Takegawa N et al. Int J Cancer, in press)。

また最近では、免疫チェックポイント阻害薬の耐性機序や耐性克服に関する研究も実験動物と臨床検体の両方を駆使して、精力的に進めており、今後次々とその研究結果を報告していく予定です。

研究について

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