2024年4月8日 ver.1.1
研究の背景
免疫チェックポイント阻害薬はさまざまながんに対して有効性が証明されている薬剤ですが,すべての方に効果を認めるわけではなくどういった要因があれば効きやすいのか,どういった要因があれば効きづらいのかを検討することは効果的な治療選択につながるだけではなく将来新たな治療戦略の開発につながるため重要です。こういった「要因」のことを一般的にバイオマーカーと呼びますが,本研究では免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた方に関するバイオマーカーについて調べたいと考えています。以前から腫瘍周囲にいる免疫細胞の機能低下にはミトコンドリア機能不全が関わり,免疫細胞がミトコンドリア機能不全を起こしている患者さんでは免疫チェックポイント阻害薬の効果が乏しいということが知られています。我々はこれを血液検体でも調べることが可能なのではないかと考えており,血液中のミトコンドリア異常の有無と免疫チェックポイント阻害薬の治療効果との関連について検討しようと考えています。免疫チェックポイント阻害薬の血液検査でわかるバイオマーカーが確立されれば,簡便かつ安価に免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測できるようになることが期待されます。また,これは探索的な研究にはなりますががん悪液質を有する方ではミトコンドリア機能異常が関わることも知られておりますのでがんの病態解明のために血液中のミトコンドリア異常の有無とがん悪液質の有無についても評価したいと考えています。
研究の概要
対象:悪性腫瘍と診断され,検体(過去の通常診療で得られた生検時の残存組織検体や血液検体)の提供が可能である方を対象とします。
施設:
【研究代表機関】
近畿大学医学部内科学教室 腫瘍内科部門 林 秀敏
【共同研究機関】
岡山大学学術研究院医歯薬学域 腫瘍微小環境学分野 冨樫 庸介
千葉県がんセンター 研究所 河津 正人
目的: ① 血液中ミトコンドリア異常の有無と免疫チェックポイント阻害薬の効果についての関連を明らかにすること
② がん悪液質の有無と血中ミトコンドリア異常の有無や免疫チェックポイント阻害薬の効果の関係を明らかにすること
方法:過去の通常診療で得られた診療情報と「固形悪性腫瘍における解析を目的とした
臨床検体の凍結保存バンキング※1」で収集した腫瘍検体の組織(正常部分を含む)・凍結保存していた血液を用い、「乳癌患者のcell-free DNAを用いたバイオマーカー研究※2」、「肺がん患者のcell-free DNAを用いたバイオマーカー研究※3」、「胃癌患者のcell-free DNAを用いたバイオマーカー研究※4」、「大腸癌患者のcell-free DNAを用いたバイオマーカー研究※5」で解析後の残りの血液検体を用いて、ミトコンドリア内にあるDNA(mtDNA)のシーケンスを行い、収集した情報とシーケンスの解析結果を統計学的手法により各項目の関連性を解析します。腫瘍組織の検体は、追加で免疫染色も行い、免疫関連マーカーの測定や免疫応答に関する遺伝子の発現や変異などを解析し、上記の情報との関連性を検討します。
※1:近畿大学医学部倫理委員会受付番号30-187(以下バンキング研究)
※2:近畿大学医学部倫理委員会受付番号25-173(以下cfDNA-BC研究)
※3:近畿大学医学部倫理委員会受付番号25-174(以下cfDNA-LC研究)
※4:近畿大学医学部倫理委員会受付番号26-076(以下cfDNA-GC研究)
※5:近畿大学医学部倫理委員会受付番号26-270(以下cfDNA-CC研究)
本研究は近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門を代表とし、近畿大学医学部倫理委員会https://www.med.kindai.ac.jp/rinri/index.htmlで一括審査・承認された多施設共同研究です。本学の医学部長と各実施研究機関の長による実施の許可を受けて行われます。
利用する試料・情報の項目
本研究では、過去の通常診療で得られた診療情報(性別・年齢・生年月・診断時体重・診断時BMI・健康時体重・診断前の6か月間の体重減少割合・食欲不振の有無・食事量低下の有無・病理診断名・検体採取方法・検体採取日・生検してからの日数・薄切してからの日数・臨床的分類・病期・転移部位・数・喫煙歴・飲酒歴・閉経の有無(乳癌の場合)・既往歴・併存症・家族歴・内服薬とその内容・身体所見(一次治療開始時期、免疫チェックポイント阻害剤開始時)・血液検査項目(CRP、末梢血好中球、末梢血リンパ球、LDH、乳酸、CK、腫瘍マーカー、血算、一般生化学、IL-1、TNF-α)・免疫組織学的染色結果(PDL-1の発現率)・遺伝子異常の有無・内容(EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子異常、KRAS遺伝子変異、ROS1遺伝子異常、RAS遺伝子変異、BRAF遺伝子異常、ミスマッチ修復遺伝子異常、HER2遺伝子増幅、その他の既知のドライバー遺伝子異常・画像情報(原発部位・転移部位、腫瘍径、筋サルコペニアの有無)、手術・放射線治療(外科的手術、放射線治療、化学放射線療法)の治療内容と治療効果・薬物療法:これまでの薬物療法の治療内容・治療開始日・最終投与日・治療期間・治療効果(Progression-Free Survival (PFS)、Overall Survival (OS)、最良治療効果(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors (RECIST))、疾患増悪確定日(RECISTもしくは臨床診断)・死亡日または最終生存確認日を診療録より入手・収集し、各項目の関連性を統計学的手法により解析します。
【バンキング研究で保管していた腫瘍組織検体を用いて】
・免疫組織染色(PDL1、CD3、CD4、CD8、PD-1、LAG-3、TIM-3、TIGIT、CD39、CD103、CD106、FOXP3、Bcl6、 CXCR3、CXCR5、CD11b、CD11c、MHC-I、MHC-II、CD80、CD86、CD19、CD20、CD38、CD138)を行います。
・ミトコンドリア内にあるDNA(mtDNA)のシーケンスを行います。
【バンキング研究で保管していた末梢血検体を用いて】
・mtDNAシーケンスを行います。
【バンキング研究で保管していた腫瘍検体の正常組織の部分を用いて】
・mtDNAシーケンスを行います。
他機関への情報の提供方法
mtDNAシーケンス情報について提供予定です。診療情報の提供は予定しておりません。
試料の解析を行い、収集した情報との関連性を検討することがございます。これらの遺伝子変異は、がん免疫に関わるものであり、患者様やそのご家族の遺伝に関係するものではありません。検査の一部に遺伝子解析をすることがございます。この研究での遺伝子解析に関する不安に対して相談したい場合、さらに詳細な説明をご希望される場合には下記問い合わせ先にご連絡ください。近畿大学病院遺伝子診療部のカウンセリングを担当する専門のスタッフをご紹介いたします。
尚、過去に採取したがん組織が小さい場合、本研究での使用によって残存検体の消耗や稀に滅失の可能性があり、その後の追加検査に支障が生じたり追加検査が出来なくなったりすることが稀にあります(そのようなことが無いように細心の注意を払います)。
この掲示をご覧頂き、「ご自身の診療情報に関するデータならびに腫瘍組織の残存検体の利用を希望しない」とのお申し出がない場合には、ご同意頂いたものとして、使用させて頂きたいと存じます。もし、データ及び腫瘍組織の残存検体の利用をご希望されない場合には、下記連絡先までご連絡くださいますようお願い申し上げます。
試料・情報の提供を行う機関の名称およびその長の氏名
近畿大学医学部・松村 到
試料・情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称
近畿大学医学部
利用又は提供を開始する予定日
倫理委員会承認日:2024年1月30日
個人情報保護に関する配慮
個人情報の取り扱いにつきましては、本研究に関係する全ての研究者は、個人情報保護法に基づいて、研究対象者の個人情報を厳重に管理します。個人情報に関しては、本研究のみに使用します。個人情報管理者を置き、対象患者様に対して独自のIDをつけ、個人を識別することができないように加工されますので、あなた個人を同定する情報が院外に出ることはありません。この研究で得られたデータについては公的データベースへの登録・公開が予定されており,将来的にデータベースを介して他の研究者に利用される可能性があります。またこの研究で得られた試料や情報は新たな研究や開発に利用させていただく可能性があります。なお試料や情報を新たな研究に利用する場合や,他の研究機関や企業に提供する場合は,倫理委員会での審査など,国の研究倫理指針や個人情報保護法などの法律に基づく適切な手続きを経て利用されます。この研究を支援しているAMED(国際研究開発法人日本医療研究開発機構)はデータの利活用を推進しています。国内外の研究機関、医療機関、企業、および承認審査機関が、健康・医療に関する研究、薬事申請を含む医薬品等の開発、科学的なエビデンスに基づく予防等、そして、これらの研究開発に関わる人材の育成、ならびに保健医療政策の検討を行うことを目的に、データを利用させていただく場合があります。ご自身の診療情報が利用されているかも知れないと思われる個々の研究について詳細を知りたい時は、いつでも情報を提供致します。患者様の個人情報の管理は十分慎重に行い、漏洩することがないように致します。
ご質問や研究に対する拒否の自由
その他に本研究に関してお聞きになりたいことがありましたら、遠慮なくいつでも担当医または下記のお問い合わせ先まで御相談下さい。患者様からのご希望があれば、その方の臨床データは研究に利用しないように致します。そのご要望を頂いたとしても、患者様の不利益となることはありません。
研究責任者及びお問い合わせ先
研究代表者/ 林 秀敏 近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門
研究事務局/ 渡邉 諭美 近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門
〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2
TEL:072-366-0221(Ex.3542) / FAX:072-360-5000