屈折異常( くっせついじょう ) 弱視( じゃくし )

 屈折異常

ものを見るということは、目に光が入ってくると角膜( かくまく ) 水晶体( すいしょうたい ) を通して網膜( もうまく ) (ものを映すスクリーンの役割)にピントをあわせ、その情報を視神経から脳に伝えることで成りたっています。力を抜いた状態で網膜にピントがあっていることを正視( せいし ) といいます。屈折異常は網膜にピントがあっていない状態のことをさし、遠視( えんし ) 近視( きんし ) 乱視( らんし ) に分けられます。

正視 遠視
近視 乱視
遠視
「遠視はよく見える」と思われていることも多いですが、実は眼球が小さいためピントのあう位置が網膜の後方にあり、近くにも遠くにもピントがあっていません。遠視はしばしば後述の弱視の原因となることがあります
近視
眼球が長く、網膜より前方にピントがあっている状態です。そのため遠くをみるときにはピントがあわず眼鏡が必要となりますが、ものを近くによせてみるとピントがあうため、弱視の原因にはならないことが多いです。
乱視
角膜の歪みなどによって起きるもので、1点にピントがあわずぼやけてみえる状態です。強い乱視があると弱視の原因となります。

 弱視

眼は生まれたときからよく見えているわけではありません。生まれたときは明暗がわかる程度であったものが、ものを正しくみることによって眼や脳が刺激され視力が育っていきます。3-6歳頃には大人と同じぐらいの視力となります。視力が育つ時期のことを「感受性期」とよび、生後から1歳半をピークとして8~10歳頃まで続きます。この時期に眼の中の器質的な病気(角膜や水晶体、網膜などの病気)がないにも関わらず、片眼または両眼が何らかの原因によって視力が育っていないことを弱視といいます。弱視は主に下記の種類にわけられます。

1. 屈折異常弱視( くっせついじょうじゃくし )
前述の屈折異常により感受性期に網膜にピントがあっておらずものを正しく見ることができていない状態が続いた結果、視力が発達していないものを屈折異常弱視といいます。主に遠視で起きることが多いですが、強い近視や乱視で起きることもあります。
2. 不同視弱視( ふどうしじゃくし )
左右の眼のピントの位置(屈折異常)に差がある場合、屈折異常が弱い方の眼でものを見ていることとなり、もう片眼の眼のピントが合わず、視力の発達に左右差があるものを不同視弱視といいます。
3. 斜視弱視( しゃしじゃくし )
斜視のなかでもいつもどちらかの決まった眼の位置がずれている(恒常性の斜視)場合、眼の位置がずれている方の眼は“見る”刺激が加わらないため弱視となることがあります。
4. 形態覚遮断弱視( けいたいかくしゃだんじゃくし )
視力の発達期間(感受性期)に、網膜にピントがあうまでの経路(眼瞼( がんけん ) ・角膜・水晶体など)に経路を邪魔する要因があると、こちらも上手く視力が育たず弱視の原因となります。代表的なものとして先天性眼瞼下垂( がんけんかすい ) 、先天白内障などがあります。眼鏡をかけての視力(矯正( きょうせい ) 視力)は1.0以上で正常とされていますが、ある程度の視力があれば日常生活は不自由なく過ごすことができます。そのため、目に見える斜視や眼瞼下垂など以外では小さい頃は弱視に気づかず、3歳児検診や就学前検診で気づかれることが多くあります。まずは屈折度数(遠視、近視、乱視)を測る検査と視力検査を行いますが、子供の場合は調節力(水晶体の伸び縮みによる屈折の変化)が強いため、調節麻痺点眼を使用し正しい屈折度数を測定します。また、斜視がないか、眼に病気がないかを診察し、弱視に対する治療が必要か判断します。

 治療

1. 眼鏡装用
まずはしっかりと網膜にピントのあった像がみえ続けることが大事なので、正しい度数の眼鏡を作成し、朝起きてから夜寝るまで1日中眼鏡を装用します。年齢が大きくなるにつれ眼球も成長し屈折度数が変わるため、定期的に視力と眼鏡があっているかチェックし、必要なときに眼鏡の度数を変更します。感受性期の弱視では、しっかりと眼鏡をかけ続けることで、矯正の視力が向上します。
2. アイパッチ(遮蔽( しゃへい ) 法)
視力の発達に左右差があり、眼鏡をかけるだけでは視力の向上が不十分な場合は、眼鏡装用に加え、視力が良い方の眼に1日に数時間の遮蔽するアイパッチ治療を行います。これは視力の向上が悪い眼に視覚刺激を加えることで視力の発達を促します。視力のあがり方に応じて遮蔽の時間を調整します

眼鏡装用やアイパッチによって視力が上がった後も、遠視・近視・乱視が治るわけではないので、眼鏡をかけ続けることが重要となります。