黄斑上膜( おうはんじょうまく ) (網膜前膜)( もうまくぜんまく )

 黄斑( おうはん )

網膜( もうまく ) は光を感じるセンサーです。黄斑( おうはん ) は網膜の中心に位置し、1.0以上の良い視力で見える部位です(図1)。黄斑以外では、はっきりと見えているのではなく、ボーとみえており、文字を読むことができるような視力は得られません。

正常眼底の図

 図1 正常眼底 矢印は黄斑部を指す

 黄斑上膜( おうはんじょうまく ) とは

網膜上膜、網膜前膜、黄斑前膜などともよばれ、黄斑部の網膜の表面に膜様( まくよう ) 組織が形成される疾患です。膜様組織の収縮により網膜自体にも皺襞( しわ ) ができます。原因は不明(特発性)で加齢に伴って形成されるものが多い(50~70歳代に多い)ですが、網膜裂孔( れっこう ) 発生後、網膜剥離( はくり ) 手術後、ぶどう膜炎などに伴って生じる続発性のものもあります。

 症状は?

早期には自覚症状はなく、人間ドックなどで偶然発見されることも珍しくありません。進行すると、網膜にシワができるために、物が歪んで見え(変視症( へんししょう ) )、視力低下が生じます。特発性の場合には進行が緩徐( かんじょ ) であることが多く、数ヶ月から数年の経過でゆっくりと進行していきます。続発性のものは、特発性よりも進行が早いことが多いとされています。

 治療法は?

点眼や内服薬で有効なものはありません。自覚症状が軽度の場合には経過観察を行います。病態が進行し、変視症が強くなる、視力が低下するといった症状が顕著になれば硝子体( しょうしたい ) 手術を行います。眼球内の硝子体を除去した上で、網膜表面に存在する膜様組織を小さな鑷子( せっし ) (ピンセット)で除去します。高齢者では硝子体手術を行うと白内障(水晶体の混濁( こんだく ) )が進行するので、白内障の手術も同時に行うこともあります。

手術前

 手術前

手術後

 手術後

 術後の見え方は?

硝子体手術を行うと、多くの場合視力が改善し、ゆがみ(変視症)の程度も減少し、見え方はよくなります。しかし、術前より視力が低下する場合も(~数%)あります。また、視力は改善しても変視症はある程度残ることが多いです。術後の視力は患者さんによってまちまちで、術前の視力が良好であるほど、年齢が若いほど良好な術後視力が得られる傾向があります。