放射線部では各診療科医からの依頼により診療放射線業務を行っています。各検査、装置ごとに放射線の特性や最先端機器の原理を理解した診療放射線技師が対応し、安全で正確な診療に努めています。
一般撮影(胸部・腹部撮影、骨系撮影、歯科パノラマ撮影、骨密度測定、乳房撮影など)、CT、MRI、アイソトープ検査の他に、X線透視下での造影、血管撮影(血管内治療を含む)、内視鏡的X線透視検査、乳房生検などの特殊な検査や放射線治療も行っています。放射線部内の装置は全てデジタル画像で出力され、院内の電子カルテシステムと連携することで迅速な情報提供が可能です。
放射線部では、診療放射線技師一人ひとりの能力の向上に努めています。全員が専門の学会に所属し、部内の勉強会をはじめ、院内外での研修会や学会へ積極的に参加し、更なる知識や技能の向上に努めています。得られた情報や知識を業務に還元し、X線被ばくの低減や新しい手技の導入などを積極的に行っています。また、患者さまを大切にし、いつも快く訪れていただける部門を目指しています。
一般撮影室では胸部・腹部から四肢、脊椎(背骨)、歯科領域など身体のさまざまな部位の撮影を行っています。撮影に使用しているフラットパネルディテクタ(FPD)は従来のシステムよりも2倍以上高感度で高精細な画像をより少ないX線量で得られるシステムとして、患者さまへの負担軽減が図られています。画像情報は院内のネットワークを介して速やかに診療に還元されます。
撮影システム | RADspeedPro | 島津製作所 | 2020年9月導入 |
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FPD | CALNEO FLOW C77 | (富士フィルムメディカル) | 2021年1月導入 |
2017年4月より、朝日レントゲン製パノラマ装置:AUGE SOLIO Z CMF装置を導入しました。
パノラマ・セファロに加え、歯科用コーンビームCT(CBCT)撮影が可能です。
歯科領域において高分解能画像の撮影が可能です。任意の断面画像・3D画像の作成が可能で、撮影後の画像データに処理を行うことで、メタルアーチファクト低減処理ができます。
当院では、フィリップス社製Brilliance iCT Elite 256とキヤノン社製Aquilion 64の2台が稼働しています。
単純検査、造影検査を問わず積極的に即日対応を行っており、各診療科と連携して診断や治療に最適な画像を提供しています。
造影剤を使用する検査では、放射線科医師と看護師が常駐して、安全に検査をすすめています。
CT検査後は、放射線科医師(診断専門医)による画像診断報告書を提供しています。
当院の救命救急センターは3次救急を担っています。
24時間365日、通常時に実施している検査を単純・造影検査を問わず即時対応いたします。
2020年1月より、当院では患者さまの画像診断の向上を目的としてフィリップス社製全身用コンピュータ断層撮影装置(CT装置)Brilliance iCT(ブリリアンス・アイ・シーティ)を導入しました。
新装置の特徴として、
0.27秒の高速回転により、従来の心臓CTでは検査が困難であった不整脈、高心拍、心拍変動の症例にも対応して撮影することができます。
256スライスによるワイドエリア化により、全身を約3秒程度で撮影することができます。高速スキャンと高画質を両立するとともに、患者さまの息止め時間が大幅に短くなります。手術前の検査では、手術支援画像としてさまざまな3次元画像を作成することで、形態の把握や手術計画に利用しています。
フィリップス独自の逐次近似応用再構成技術iDose4により、検査の目的・部位・撮影条件など必要に応じてノイズ低減ができ、さまざまな臨床応用を可能とします。医療被ばく低減施設として、高画質な画像をより低い被ばく線量で撮影することができます。
全く新しい画像再構成法O-MAR(Metal Artifact Reduction for Orthopedic implants)により、金属による画像への影響を抑制した診断に有用な画像を迅速に提供します。
当院のCT検査部門は、常に質の高い医療を提供するために職員の能力チェックを実施し、日常的に研修を実施するなど技能向上に努めています。また、定期的な副作用対応や寝台への移乗介助、標準予防策などさまざまな研修を実施し、患者さまに安心して検査を受けていただけるよう努めています。
当院では、フィリップス社製Prodiva1.5T(2018年4月導入)とAchieva1.5Tの2台が稼働しています。最新MRI装置の導入により、高画質化と検査時間の短縮を図ることができました。また、体内金属の影響や呼吸の動きの影響を抑える機能が追加され、DWIBSやASL(下記に解説)などの撮影が可能になりました。MRI検査後は、放射線科医師(診断専門医)による画像診断報告書を提供しています。
当院では当日緊急のMRI検査を積極的に行っています。検査前の準備が整っていれば、日を改めずに迅速に検査を行えます。また、午前8時より検査を実施していますので、診察前に検査を受けていただいたり、日中のお仕事への支障を軽減できます。
BodyDWI 体幹部拡散強調画像について
2018年4月より、BodyDWI体幹部拡散強調画像(いわゆるDWIBSドゥイブスDiffusion-weighted Whole body Imaging with Background Suppression)を撮影することができるようになりました。
この検査は体幹部のがんの病巣発見や転移巣の検索、化学療法や放射線治療によるがんの治療効果判定などに用いることができ、簡易的にPET検査のような画像を撮像できることから非常に注目されている検査の一つです。特徴として、放射線被ばくがないので繰り返し検査ができ、造影剤や放射性医薬品の注射をする必要がありません。検査時間は30分程度で、検査費用はPET検査の6分の1程度で負担が少ない検査です。
他のMRI検査と同様に、MRI非対応の金属(心臓ペースメーカーなど)がある患者さまは検査できません。
ASLについて
2018年4月より、Arterial spin labeling:ASL検査を行っています。
この検査は脳梗塞や動脈閉塞性疾患などの血管障害において、血行動態の評価を行うことができます。脳の血行動態の評価はPETやRI、CTでも行うことができますが、MRIで行う利点として、放射線被ばくがないので繰り返し検査ができること、検査費用がPETに比べて安価であること、さらに脳血管画像(MRA)や拡散強調画像なども併せて撮影できるということが挙げられます。また、MRIによる脳の血行動態評価は造影剤を使用する方法と使用しない方法がありますが、当院では造影剤を使用しない方法で検査することができます。検査はASL以外に脳血管画像や拡散強調画像なども撮影しますので30分程度です。
心臓MRIについて
当院では、心臓MRI検査を年間81件程度行っています。心臓MRIでは心臓の壁運動や心筋梗塞部位、心筋虚血、冠動脈形態の評価を行うことができます。また平成30年4月より、心筋組織の性状評価を行うことができるようになり、より精度の高い診断ができるようになりました。
冠動脈の状態を造影剤を用いることなく描出することが可能です。また造影剤を用いた心臓MRI検査は、CT検査などでしか得られなかった情報を一度に取得できます。
心臓は常に動いているので少しずつしか撮影することができず検査時間が長くなります。検査時間は30~60分程度です。
年間件数 | 8,901件 |
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当日緊急検査件数 | 2,299件 |
心臓件数 | 138件 |
原則、 検査できない |
心臓ペースメーカー、人工内耳など | 一部、適応機種を使用されている場合は、可能な場合がある。 |
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発熱する 可能性がある |
刺青、ネイルアート、アイライン、アイシャドウ、マスカラ、コンタクトレンズ、スプレー式白髪染め、染毛料、増毛パウダー、暖かくなる下着(ヒートテックなど) | 画像に影響を及ぼす場合があるため、MRI検査が出来ない場合がある。 |
検査室内に 持ち込めない |
磁気カード、診察券、装具、義肢、入れ歯、ネックレス、ヘアピン、メガネなどの金属類、時計、携帯電話、補聴器などの電子機器 |
その他、気になることがあればお伝えください。
骨密度測定はDEXA法(2種類の強度のX線を使用した方法)で検査を行います。撮影する部位は腰椎、大腿骨近位部、前腕骨などです。撮影はベッドに寝ていただくだけで、撮影中の息止めは不要です。骨密度を測定することによって骨粗鬆症の早期発見、骨折の予防などが期待できます。また、定期的に測定を行うことで骨粗鬆症の正確な診断ができます。
当院では、最新の骨密度測定装置HOLOGIC社製Horizon C(2022年3月導入)が稼働しています。最新のX線検出器(セラミックディテクター)と高周波X線管球が搭載されており、被ばく線量は以前よりも3割程度少なくなり、体厚のある患者様でも画質がより鮮明に描出できるようになりました。
X線透視室では消化管や泌尿器などさまざまな造影検査を行っています。一般撮影と同様にフラットパネルディテクタを内蔵した装置を使用し、従来装置と比較してX線被ばくを大幅に低減しつつ、良好で迅速な画像提供を行っています。2022年1月には新たに装置を更新し、これまでの造影検査のX線被ばくをさらに低減できるようになりました。
当院では、CALNEO Go Plus(2021年導入)装置2台が稼働しています。病室撮影は、放射線部内のX線撮影室での撮影が困難な場合に病棟などで、装置を患者さまのそばまで移動させてX線撮影を行います。従来、移動型X線装置はCR(コンピューテッド ラジオグラフィー)カセッテ内のIP(イメージングプレート)というものに記録した画像を画像読取装置で読み取り、画像化していました。今回、新たに導入された移動型X線撮影装置はCRカセッテではなくFPD(フラットパネルディテクタ)という方式を搭載しています。FPDはCRカセッテと違い、直接X線を読み取れるため撮影するとすぐに画像化ができ、高感度・高精細な画像をより少ないX線量で得ることができます。FPDはCR カセッテのように撮影毎に交換する必要もなく、繰り返し使用できるという特徴もあります。
当院では、フィリップス社製3台の血管撮影装置で、各診療科がさまざまな画像下治療(Interventional Radiology:IVR)を行っています。奈良県初となる最新式装置(Philips Clarity)により、高精細な二次元画像に加え、精度の高い三次元画像を作成することで画像下治療に必要な治療手技支援画像を提供しています。
また、従来の装置では抽出困難であった冠動脈ステントや大動脈ステントの形状も明瞭に抽出できる高い画像解像度があり、頭頸部、心臓、腹部、四肢領域の画像下治療に大きな威力を発揮します。さらに最新の画像処理機能によって、従来の被ばく線量に比べ最大80%の被ばく低減を実現させています。
当院ではさまざまな分野の治療に特化した専門性の高い医療従事者からなる多職種チーム医療を推進しており、緊急検査にも積極的に即時対応しています。
脳動脈瘤やクモ膜下出血に対して金属コイルを詰め、血管を塞栓する脳動脈瘤塞栓術、脳梗塞に対して血栓を溶かして血流を再開通させる血栓溶解術、頸部動脈狭窄に対してステントを留置し血管を拡張する頸部動脈ステント留置術などを行っています。
狭心症や急性心筋梗塞に対して冠動脈にステントを留置する冠動脈ステント留置術やFFR、iFRといった冠動脈の血行動態的有意狭窄を評価するカテーテル検査も行っています。心房細動など不整脈の治療では、心臓内部の心筋を焼灼して治療するカテーテルアブレーションや冷却して心筋を凍結させて治療する冷却アブレーション(Cryo-ABL)などを行っています。
主に肝臓癌に対して直接血管内に抗がん剤を投与した後、動脈を塞ぐ物質を注入して血管を塞栓する肝動脈化学塞栓療法(TACE)や肝動脈動注化学療法(TAI)を行っています。また、交通事故や骨盤骨折などの外傷性出血に対する緊急止血術(TAE)も積極的に行っています。
末梢動脈疾患で手足の血管が狭窄・梗塞した場合、バルーンやステントを使用して血管を広げる末梢血管治療(EVT)を行っています。
当院では、Cannon社製SymbiaE装置2台が稼働しています。主に骨シンチや負荷心筋シンチの検査ですが、他にもさまざまな検査を行っています。今後の高齢化社会に向けて認知症の診断は増加傾向にあります。アイソトープ検査は体内の様々な臓器の機能画像を得るために放射性医薬品を用います。検査の注意事項はお渡しする検査予約票に記載されていますのでご確認して下さい。当院では、がん治療のアイソトープ内用療法も行っています。
脳の血流(十分な酸素やブドウ糖を届けるため)を評価する検査です。脳の血流は脳梗塞など脳血管の要因のみならず、アルツハイマー型認知症などの脳の変性疾患でも低下することが知られており、画像解析(3D-SSP解析、局所脳血流解析)で認知症の早期発見や鑑別診断、進行度の評価を行います。
脳内の黒質から線条体に向かう神経(ドパミン神経)に存在するドパミントランスポータ(DAT)を画像化し、ドパミン神経の変性・脱落の程度を評価する検査です。パーキンソン病・レビー小体型認知症ではDAT密度が低下し、画像化されます。
脳神経領域の診断には、心臓の交感神経にアイソトープが取り込まれるかを調べることで認知症鑑別診断を行います。アルツハイマー型認知症とパーキンソン病やレビー小体型認知症などの鑑別には、この検査も有用です。自律神経障害を示す疾患では、アイソトープが心臓に集まらなくなることが知られています。アルツハイマー型認知症では心臓の交感神経機能の変化はないのでアイソトープが心筋に集積しますが、パーキンソン病やレビー小体型認知症などでは、自律神経障害によりアイソトープが心筋に集積しないので鑑別が可能です。
アイソトープは診断のほかに治療にも応用されています。当院では多職種の医療従事者が連携して、主に外来でのアイソトープ内用療法を行っています。
放射線治療は形態や機能を温存することができます。侵襲性が低く、高齢者に対しても優しい治療です。当院ではリニアック装置を用い、通常の放射線治療から全身照射、術中照射はもちろん、高精度放射線治療(IMRTや定位放射線照射)など特殊な照射法も実施しています。また、放射線治療の効果を最大限に発揮できるよう、照射位置精度を確認するための機能も装備し、患者様に安心して治療を受けていただける体制を整えています。2010年6月より、バリアンメディカルシステムズCLINAC-iXが稼働しています。
実際の治療する体位でCT検査を実施し、撮影したX線画像をもとに、放射線を当てる範囲や方向などを決定します。実際の治療時に体位を再現できるように、治療部位の皮膚表面に専用のインクで印をつけます。治療期間中、その印を使用して治療する位置を確認しますので、お風呂などで擦って消さないように注意を促します。頭頸部など日常、露出していて印が書けない部位や体位を固定して精度を高める治療が必要な場合には、シェル(熱可塑性樹脂)と呼ばれる固定具を患者さま個別に作成することがあります。シェルは穴のたくさん空いたメッシュ状になっているため、顔にかけても呼吸苦はありません。
シミュレーションを実施する日は、患者さまと相談の上決定します。状況に応じて診察を受けていただいた初日にシミュレーションを行うこともあります。2021年3月より、キャノンメディカルシステムズ製CT装置Aquilion Prime SPを導入しました。
強度変調放射線治療(IMRT : Intensity Modulated Radiotherapy)
強度変調放射線治療は、通常の放射線治療の照射法より、腫瘍の形が不整形な場合や正常な組織が隣接している場合でも、放射線を腫瘍に集中して照射するとともに正常組織に照射される放射線を抑えることができます。そのため,放射線による有害事象(副作用)を抑え、かつ腫瘍の根治性を高めることができます。
当院の強度変調放射線治療は、2011年よりVMAT(Volumetric Modulated Arc Therapy)という技術を駆使して、連続的に放射線の入射方向を回転させながら治療を行う照射法が可能で、1回の照射時間は3分程度です。一般的な強度変調放射線治療の照射時間が20~30分程度であるので、治療時間を短縮し、患者さまの負担を軽減させることが可能になりました。画像誘導放射線治療(IGRT)により腫瘍の位置を治療毎に照合しています。治療部位は、前立腺や頭頸部のみならず、直腸・子宮・膀胱・脊椎など多くの部位で実績があります。また、頭頸部腫瘍では分子標的薬の併用も行っており、化学療法併用と同様に高い効果が期待できる治療も選択できるようになりました。
新規患者数 | 302人 |
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強度変調放射線治療 | 80件 |
全身照射 | 1件 |
定位放射線治療 頭部 | 12件 |
体幹部 | 16件 |
一般撮影 | CT | MRI | 治療 | RI | TV | 血管 |
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35,640件 | 20,208件 | 8,901件 | 6,622件 | 707件 | 593件 | 903件 |
診療放射線技師 26名(男性20名、女性6名)
医療に対する国民の満足と安心に貢献し、福祉と社会の発展に寄与することを目的とした各学会や各認定技師機構により設立された機構団体の資格を積極的に取得しています。
専門認定資格一覧 | 人数 |
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医学物理士 | 2名 |
放射線治療専門放射線技師 | 4名 |
放射線治療品質管理士 | 1名 |
核医学専門技師 | 1名 |
磁気共鳴専門技術者 | 2名 |
X線CT認定技師 | 2名 |
救急撮影認定技師 | 3名 |
放射線管理士 | 2名 |
放射線機器管理士 | 2名 |
肺がんCT検診認定技師 | 1名 |
検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師 | 6名 |
第1種放射線取扱主任者 | 2名 |
日本DMAT隊員 | 1名 |
日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師 | 4名 |
AI撮影認定技師 | 1名 |
衛生工学衛生管理者 | 1名 |
被ばく相談員 | 1名 |
医療情報技師 | 1名 |