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2023/09/08

胃がんに対する腹腔内化学療法についてのお知らせ

胃がんに対する腹腔内化学療法についてのお知らせ

(1)スキルス胃がん(4型進行胃がん)に対する腹腔内化学療法(医師主導治験)

医療の進歩によって胃がんの治療成績は向上しましたが、進行胃がんでは、手術で見た目(肉眼的)に取り切れた場合でも、術後にがんが再発することがあります。胃がんの再発には、リンパ節転移再発、肝転移再発、腹膜転移再発(腹膜播種)などがありますが、胃にあるがんからがん細胞がお腹の中(腹腔内)にこぼれ落ち、内臓の表面やお腹の壁の内側を覆う腹膜に付着して大きくなる転移である腹膜播種が最も多く、再発全体の約半数を占めます。特に、スキルス胃がん(いわゆる4型胃がん)は、胃切除を行ったとしても腹膜播種をきたす危険性が高いことが知られています。しかしながら、日本で行われた臨床試験の結果では、手術前に化学療法を行っても再発を抑制することができませんでした。

胃がんの転移・再発.png

一方、腹膜播種がある胃がん患者さんを対象としてS-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法とS-1/シスプラチン併用療法を比較した臨床研究では、生存期間中央値はそれぞれ17.7ヵ月、15.2ヵ月でしたが、統計学的にはその差は証明されませんでした。しかし、各治療を受けた患者さんの腹膜播種の進み具合に偏りがあったため、この偏りを考慮に入れて検討したところ、全身・腹腔内併用化学療法がより有効であることが示唆されました。この結果からは、腹膜播種の予防効果にも期待ができますので、腹膜播種の危険性が高いスキルス胃がん(4型進行胃がん)の患者さんを対象として、全身・腹腔内併用化学療法と標準的な全身化学療法を比較する医師主導治験が東京大学を中心として全国で約40の医療機関で行われています。近畿大学奈良病院は、奈良県内で唯一、この医師主導治験に参加しています。ただし、全身・腹腔内併用化学療法と標準的な全身化学療法を比較するため、それぞれ11に無作為に割り付けられますので、腹腔内化学療法を受けるのは半分の方になります。また、治験に安全に参加できる条件がありますので、すべての希望者に参加していただけるわけではありません。

腹腔ポートから行う腹腔内化学療法.png

スキルス胃がんに対する腹腔内化学療法の医師主導治験の方法.png

スキルス胃がん(4型胃がん)と診断されて、この医師主導治験への参加をご希望される方は、近畿大学奈良病院・消化器外科またはがん相談支援センターにお問い合わせください。この医師主導治験の詳細や治験に参加していただける患者さんの条件などは、研究事務局のある東京大学のホームページにも記載されています。

「胃癌・腹膜播種に対する腹腔内化学療法」:http://plaza.umin.ac.jp/~phoenix2/scirrhous/centers.html

「スキルス胃癌、膵癌、大腸癌に対する腹腔内化学療法の研究開発」:https://utf.u-tokyo.ac.jp/project/pjt117

(2) 胃がんの腹膜転移・腹膜播種に対する腹腔内化学療法(自由診療・自費診療)

医師主導治験とは別に、近畿大学奈良病院では、自由診療(自費診療)として胃がんの腹膜転移・腹膜播種に対する腹腔内化学療法を行っています。腹膜転移・腹膜播種を伴う進行胃がんや胃切除後に腹膜転移・腹膜播種・腹腔洗浄細胞診陽性などの再発がきたした方のうち、他に遠隔転移(肝転移、肺転移や遠隔のリンパ節転移など)がない患者さんに対して、自由診療として腹腔内化学療法を行う体制を整えています。安全に腹腔内化学療法を行うことが大切ですので、すべての方に行えるわけではありません。詳細は、近畿大学奈良病院・消化器外科、がん相談支援センターまでお問い合わせください。また、近畿大学奈良病院・消化器外科のホームページには、「胃がんについての詳しい解説胃がんの診断から治療(手術、化学療法)まで」として胃がんについての詳しい情報をリニューアルして公開しています:https://www.med.kindai.ac.jp/nara/departments_and_centers/medical_departments/digestive_surgery/gastric_cancer.html

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