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大腸がんの薬物療法

最近20年間で2~3倍の延命効果

大腸癌の診断と治療方針

 不幸にして大腸癌になってしまっても、治療は大きく進歩しています。
大腸癌はその進行を表す病期(大腸癌取扱い規約)によって、I期からIV期までに分類され(表1)、治療法は病期によって異なりますが、大きく手術療法と抗癌剤を主とした化学療法が治療の軸となります。
 手術は癌が一定範囲に収まっていると考えられる病期(すなわちI〜III期)で行われます。内視鏡によるものから、腹腔鏡やロボットを用いたもの、開腹手術まで幅があり、やはりこれも癌の存在する範囲によって方法に違いがあります。ただ、いずれにしても、癌(およびその周辺)をきれいに取り除き、体の中の癌細胞を0にする、すなわり「根治」を目指す、というのが治療の目標になります。根治を目指すためには、例えばIII期の大腸癌では術後により根治率を高める「術後補助化学療法」を行うのが標準的です。
 一方、遠隔転移があるIV期もしくは切除不能な再発に対しては抗癌剤を主とした全身の化学療法が選択されます。これは手術で取り切れる範囲を超えて癌が存在するため、「目に見える癌」以外に「目に見えない癌」についても治療をする必要があるからです。一般的には化学療法で根治を目指すことは難しく、治療の目標は癌を可能な限りコントロールし、それによって生命を奪われる事態をできる限り先送りにする、元気で長生きを目指す「延命」になります。しかし大腸癌は他の癌と異なり、遠隔転移があったとしても切除をすることができれば根治を目指すことができる場合があります。化学療法によって切除できなかった癌が切除可能になることもあります。大腸癌は以前と比べて化学療法(もしくは化学療法に手術を組み合わせること)でより長い時間お元気で過ごしていただけるようになってきています。こうした薬剤の治療開発において、近畿大学腫瘍内科は重要な役割を果たしています。

表1 大腸癌取扱規約第9版

大腸癌の薬物療法

 大腸癌の薬物療法はほとんど全てを外来で行うことができ、治療を続けながらこれまで通りの生活をできる限り長く送っていただくことを目指しています。大腸癌に対する薬物療法は、従来からあるいわゆる「抗癌剤」と、癌の持つ特徴を狙い撃ちにする「分子標的薬」の二つの組み合わせで成り立っています。

図 大腸癌に使える薬剤

抗癌剤

 抗癌剤には5-FU系(5-FU、S-1、カペシタビン)、オキサリプラチン、イリノテカンがあります。中でも核となるのは5-FU系の抗癌剤です。5-FUは注射剤であり、通常46時間をかけて投与します。したがってその使用に際してはCVポートと呼ばれる、長時間の点滴に適した医療器具を前もって皮下に埋め込む必要があります。5-FU系抗癌剤には内服薬であるS-1、カペシタビンがあり、これらを使用すればポートを作らずに治療を行うことが可能です。5-FUは副作用の観点から単独で使用される場合もありますが、一般的にはオキサリプラチンやイリノテカンと組み合わせて使用されます。5-FU系抗癌剤とオキサリプラチンの組み合わせには使用する薬剤によって、FOLFOX、CapeOX、SOXなどさまざまなレジメンがあります。一方、5-FUとイリノテカンの組み合わせでは、FOLFIRI、IRIS、CapeIRIなどのレジメンがあります。オキサリプラチン、イリノテカン、どちらの抗癌剤から先に治療を行っても長生きの効果には差がないことがわかっています。またより確実な治療効果を出すために、5-FU、オキサリプラチン、イリノテカンの3剤を同時に使用するケースも増えてきました。

分子標的薬

 大腸癌に用いられる分子標的薬は抗体製剤であり、大きく2種類に分類できます。1つは抗EGFR抗体、もう一つは血管新生阻害剤と呼ばれる抗体です。抗EGFR抗体にはセツキシマブ、パニツムマブがありますが、大腸癌のおよそ半分に認められるRAS遺伝子変異を持たない「野生型」の癌をもつ患者さんにのみ使用が可能です。一方、血管新生阻害剤にはベバシズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプトの3種類があり、RAS遺伝子変異の有無にかかわらず使用が可能です。
 これら薬剤による治療が困難となった後に、さらに経口剤であるトリフルリジン・チピラシル塩酸塩やレゴラフェニブといった分子標的薬が使われます。

MSI-H

 IV期もしくは術後再発大腸癌のおよそ2%にMSI-Hといった特徴を持った患者さんがおられます。一般に大腸癌には免疫チェックポイント阻害剤は無効であることがわかっていますが、MSI-Hの患者さんに対してのみ効果が認められておりペムブロリズマブまたはニボルマブを用いた治療が可能です。

新しい治療法開発のために:治験、臨床試験

 上記のような一般的な治療に加え、治験や臨床試験として一般の病院ではまだ使用していない新薬や治療法を提案させていただくことがあります。それは新たな治療を患者さんにお届けするための、我々の責務でもあると考えています。
 薬物療法の進歩はめざましく、たいへん複雑になってきていますので専門の知識のある腫瘍内科医による早い段階からの治療が患者さんの運命を変える可能性も出てきています。がん治療についてご心配な事があれば多数の専門医がいる近畿大学腫瘍内科の外来にお気軽にご相談下さい。

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