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早期消化管がん(食道がん)

食道表在がんの内視鏡治療

食道がんとは?

 食道は(のど)と胃をつなぐ管状の臓器で、食べ物を口から胃に送る働きをしています。その食道の壁は4mmほどの厚みで、内側から外側に向かって粘膜層、粘膜下層、固有筋層、外膜の4つの層に分かれています(図)。
 がんは、一番内面の粘膜層から発生して次第に外側へと広がってゆきます。粘膜層にとどまるがんを早期がん、粘膜下層まで広がったがんを表在(ひょうざい)がん、筋層まで広がったがんを進行がんと呼びます。粘膜下層に達すると20~40%の割合でリンパ節に転移するといわれています。もし転移がなければ、内視鏡(胃カメラ)で食道壁のがんの部分を取り除きさえすれば、完治できる可能性があります。
 食道がんは、お酒、たばこ、熱いもの(お(かゆ)など)を好む人にできやすいといわれています。食道がんは初期症状がないことが多く、検診やドックの際に発見されることがしばしばあります。

図 食道壁の構造 
食道壁は内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、外膜から構成されます

食道がんは早期にリンパ節に転移しやすい

 食道がんは胃がんや大腸がんと比較して早期にリンパ節に転移しやすく、早期の段階で発見することが大変重要です。早期の病変は正常部分との違い(色調や凹凸(おうとつ))が軽微であり、CT検査や血液検査ではまず検出できません。内視鏡(胃カメラ)検査が適していますが、それでも検出が難しいこともあり工夫が必要です。
 具体的には、ヨードという色素を食道内に散布して観察したり(画像1)、当てる光の波長を変えて(NBI)観察したり、小さな超音波装置を内視鏡の先端に装着したりして、がんの壁内への浸潤程度も詳しく診断します。内視鏡(胃カメラ)検査の大きな利点は、直接組織を採取してがんがあるかないかを顕微鏡検査で確認できることです。
 がんが見つかった場合は、表在がんであってもリンパ節転移をきたす危険性があることに注意して、体幹部造影CT検査やPET検査なども追加して転移を確認します。

画像1 胸部中部食道にわずかに赤みがかった領域(がん)を認めました(左)。ヨード散布すると、がんの存在(↑)が明瞭となりました(右)

体にやさしいEMR、ESD

 食道がんの治療法は主に内視鏡治療、外科手術、抗がん剤治療、放射線治療があり、がんの広がりによってその方法を選択します。進行がんになってしまうと内視鏡治療の選択肢はなくなります。
 がんが10mm程度までの大きさの場合は、スネアという金属性の輪状の道具で病変を一つかみして切除(内視鏡的粘膜切除術:EMR)し、それ以上に広がる病変は針状の電気メスを用いて病変部を端から剥がして一括切除(内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術:ESD)します(図、画像2)。今日では、ほぼ全周に近く広がるような病変でも内視鏡で治療できる場合があります。症例にもよりますが、ほとんどの方が治療後2日目から食事をとることができ、約1週間で退院しています。
 2014年の食道腫瘍(しゅよう)の内視鏡治療症例は62例(EMR:10例、ESD:52例)、一括完全切除率は98.4%(61/62)でした。

画像2 がんの部分を内視鏡で剥離(左)。切除された標本(右) 

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