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原発性肝がんの外科治療

安全治療の提供

原発性肝がんとは?

 原発性肝がんには肝細胞から発生する肝細胞がんが最も多く、その原因はB型やC型肝炎、肝硬変から発生することがよく知られています。ところが最近ではウイルス性肝炎の病歴がない、糖尿病や肥満のあるメタボリック症候群の患者さんからも見つかっています。肝細胞がん治療には肝切除療法、ラジオ波焼灼療法(しょうしゃくりょうほう)や肝動脈塞栓療法(そくせんりょうほう)などがありますが、がんの状態や肝機能の程度で治療法を選択します。肝切除を行うには肝機能が保たれていることが必須条件で、切除後の肝容積が小さすぎると肝不全に陥り、腹水や黄疸(おうだん)が現れ、生命にもかかわってきます。
 一方、肝内の胆管細胞から発生する肝内胆管がんもあります。患者数は原発性肝がん全体の約5%ですが、近年、増加傾向にあります。肝細胞がんと異なりリンパ節転移を認めますが、肝機能は比較的良いので肝切除治療が中心です。これら原発性肝がんの肝切除には従来から行っている開腹下肝切除と体に負担の少ない低侵襲治療である腹腔鏡(ふくくうきょう)下肝切除があります。

開腹下肝切除の適応

 進行した肝細胞がんに行います。がんを発見した時点で、腫瘍(しゅよう)の大きさが直径3cmを超えるものや、門脈内に腫瘍が広がる場合(門脈腫瘍塞栓/PVTT)は開腹手術で肝切除を行います。PVTTを確認したら、肝機能の維持に欠かせない門脈血流がPVTTで閉塞され、肝機能低下や肝不全から生命にかかわってくるため、門脈腫瘍塞栓を摘出する必要があります(画像1)。
 この患者さんは肝炎の病歴がなくメタボリック疾患を背景にした肝細胞がんと考えられ、肝臓の右半分が腫瘍に置き換わっています(画像2)。肝臓の右半分を切除(右葉(うよう)切除)しても、術後肝不全に陥る恐れがあるため造影CTを使った肝シミュレーション画像を作成し、術前に術後肝容積の予測や肝内血管の解剖を確かめ安全な手術を心掛けました(図1)。
  その結果、肝右葉切除を行いましたが、術後の合併症はありませんでした。肝炎の既往のないメタボリック症候群から発生する肝細胞がんを切除できれば、再発するリスクは少なく肝切除治療の良い適応といえるでしょう。

  • 画像1  肝腫瘍から門脈内に腫瘍塞栓が広がっています
  • 画像2 肝の右葉に大きな肝細胞がんを認めています

図1 造影CTによる肝シミュレーション画像(黄色部分が肝細胞がん)

腹腔鏡下肝切除の適応

 腹腔鏡下手術は、消化器手術の中で大きく広がりを見せています。肝切除でも腹腔鏡手術を行っています。もちろん開腹下で行うような大きな肝切除ではなく、腫瘍から1cmだけ離す肝部分切除が中心で腫瘍サイズは小さく、肝表面にある腫瘍が対象です(画像3)。腹腔鏡下手術で行えば大きな手術創(しゅじゅつそう)もなく術後1週間ほどで退院は可能です。科学的根拠に基づいた肝癌診療ガイドラインでは肝障害度や腫瘍個数、腫瘍サイズでフローチャート式に治療法を推奨していますが、複数の治療法を明記した部分もあります(図2赤塗り)。
 ガイドラインからラジオ波焼灼と肝切除ともに治療の選択が可能でも、腫瘍が消化管に近接している場合は、焼灼によって消化管の穿孔(せんこう)リスクを生じ、腹腔鏡下肝切除が良い適応となります。このように個々の患者さんにとって安全で最良の治療を提供するため、ラジオ波焼灼や肝動脈塞栓を行う肝臓内科医と連携して治療法を検討しています。

  • 画像3 肝表面に小さな肝細胞がんを認めます。腹腔鏡下肝部分切除を行いました
  • 図2 治療アルゴリズム(科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年度版から)

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