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この病気は、本来は自分を守るためにある「免疫」という仕組みが異常となり、自分の神経を攻撃するために起こるものです。症状が出てきた頃に、約60%の患者さんの血液中に、末梢神経の細胞表面にある「糖脂質」という物質の抗体が検出されます。
この抗体が、自分の神経を攻撃してこの病気が発症すると考えられています。神経症状が現れる前の感染を引き起こす病原体が、糖脂質に似た構造を持っていて、その病原体に対する防御反応の結果として作り出された抗体が、糖脂質を持つ神経細胞を攻撃して病気が発症するという説が有力です(図1)。またそれ以外に、リンパ球などの細胞成分やサイトカインなどの抗体以外の成分も発症にかかわっていると考えられます。
図1 ギラン・バレー症候群発症の仕組み
感染を起こす病原体の表面に糖脂質に似た構造(糖鎖)があり、それを攻撃する抗体ができます。その抗体が糖脂質を持つ末梢神経を攻撃するために末梢神経に障害が起きます
この病気の診断は、前に述べたような典型的な経過や症状の内容、診察の結果などから診断が可能です。手足にしびれを感じ、動かせなくなるのが主な症状ですが、それ以外に顔や目を動かす筋肉に力が入らなくなったり、うまくしゃべれなくなったり、飲み込みができなくなったりすることもあります。
また血圧変動や脈拍異常などの自律神経の障害もみられることがあります。診察では、ハンマーを使って
検査は、神経を刺激して筋の反応をみる神経伝導検査(写真1)、脳脊髄液検査(図2)とともに、糖脂質抗体検査を行います。糖脂質抗体検査は研究開発途上の検査で、幾つかは検査会社でもできますが、当院でしかできないものも数多くあり、全国の病院から当科に多くの検査依頼がきています(月間200~300件、写真2)。
写真2 糖脂質抗体の測定
診断がついたらなるべく早く、
症状は1か月以内にはピークとなり、その後、次第に回復していき、6~12か月で多くの患者さんは、以前とほぼ同じ生活ができるようになります。しかし、約20%に後遺症が残ると報告されています。亡くなられる方は、欧米からの報告では約5%ですが、国内の研究班の調査では1%未満という結果が出ています。
写真3 血漿交換を行うための装置