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ギラン・バレー症候群の治療

全国トップレベルの診断、治療

ギラン・バレー症候群とは?

 末梢神経(まっしょうしんけい)の障害で、急に手や足に力が入らなくなる病気です。手足のしびれ感を感じることもしばしばあります。人口10万人当たり年間約1~2人がかかるというまれな病気で、子どもから老人まで、どの年齢でもかかり、男性にやや多い病気です。神経症状が出てくる1~2週間前に、風邪を引いたり下痢が起きるなどの感染症状があることが多いです。症状は2~4週間以内に最も重くなり、それ以後に悪化することはありません。ピーク時の症状の程度はさまざまですが、症状が重い場合には寝たきりの状態になり、呼吸ができなくなることもあります。
 この病気は、本来は自分を守るためにある「免疫」という仕組みが異常となり、自分の神経を攻撃するために起こるものです。症状が出てきた頃に、約60%の患者さんの血液中に、末梢神経の細胞表面にある「糖脂質」という物質の抗体が検出されます。
 この抗体が、自分の神経を攻撃してこの病気が発症すると考えられています。神経症状が現れる前の感染を引き起こす病原体が、糖脂質に似た構造を持っていて、その病原体に対する防御反応の結果として作り出された抗体が、糖脂質を持つ神経細胞を攻撃して病気が発症するという説が有力です(図1)。またそれ以外に、リンパ球などの細胞成分やサイトカインなどの抗体以外の成分も発症にかかわっていると考えられます。

図1 ギラン・バレー症候群発症の仕組み
感染を起こす病原体の表面に糖脂質に似た構造(糖鎖)があり、それを攻撃する抗体ができます。その抗体が糖脂質を持つ末梢神経を攻撃するために末梢神経に障害が起きます

ギラン・バレー症候群の診断

 この病気の診断は、前に述べたような典型的な経過や症状の内容、診察の結果などから診断が可能です。手足にしびれを感じ、動かせなくなるのが主な症状ですが、それ以外に顔や目を動かす筋肉に力が入らなくなったり、うまくしゃべれなくなったり、飲み込みができなくなったりすることもあります。
 また血圧変動や脈拍異常などの自律神経の障害もみられることがあります。診察では、ハンマーを使って(けん)をたたいたときの反射が出なくなります。
 検査は、神経を刺激して筋の反応をみる神経伝導検査(写真1)、脳脊髄液検査(図2)とともに、糖脂質抗体検査を行います。糖脂質抗体検査は研究開発途上の検査で、幾つかは検査会社でもできますが、当院でしかできないものも数多くあり、全国の病院から当科に多くの検査依頼がきています(月間200~300件、写真2)。

  • 写真1 右腕の神経の伝導検査
  • 図2 脳脊髄液検査
    患者さんは横向きになり、腰背部から針を刺して脳脊髄液をとります

写真2 糖脂質抗体の測定

ギラン・バレー症候群の治療とその後の経過

 診断がついたらなるべく早く、血漿交換療法(けっしょうこうかんりょうほう)(写真3)または免疫グロブリン大量療法を行います。これによって、症状の程度が軽くなり早く回復するのです。症状のピーク時には人工呼吸器が必要となる場合もあり、また自律神経障害が強いときには血圧などの全身管理が重要になります。感染や血栓症などについても予防や対応が必要です。またピークを過ぎたときには、リハビリテーションで機能を回復することも大切になります。
 症状は1か月以内にはピークとなり、その後、次第に回復していき、6~12か月で多くの患者さんは、以前とほぼ同じ生活ができるようになります。しかし、約20%に後遺症が残ると報告されています。亡くなられる方は、欧米からの報告では約5%ですが、国内の研究班の調査では1%未満という結果が出ています。

写真3 血漿交換を行うための装置

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