新しい塞栓物質に期待
肝臓に発生するがんには、肝臓にできた原発性肝がんと別の臓器から転移した転移性肝がんがあります。原発性肝がんには、肝臓の細胞ががんになる「肝細胞がん」と、胆汁をつくったり、できた胆汁を十二指腸に流す管(くだ/胆管)の細胞ががんになる「胆管がん」のほかに、小児の肝がんである
国内では、もともと肝障害が全くない人に肝がんができることはまれで、肝細胞がん患者さんの多くがB型またはC型肝炎ウイルスに感染していて、一部の患者さんは
肝細胞がんの治療法としては①外科的肝切除②経皮的エタノール局注療法③ラジオ波
そのため肝細胞がんでは、この①多発性(1つか複数か)②腫瘍の大きさ③肝機能、の3点を考慮して、それに適した治療法が選択されることが多く、さらに、がんが肝臓の表面にあるのか、中心部にあるのかも考慮して治療法が決定されます。
肝動脈化学塞栓療法は、肝細胞がんの治療法として1977年に国内から初めて報告された日本発の治療法です。現在では肝細胞がんの有効な治療法として世界中で行われています。血管撮影の技術を活用して、肝臓に血液を送る肝動脈にカテーテルという細い管を入れて、抗がん剤と塞栓物質を流してがんに栄養を送る動脈を閉塞させることで(図)、がんを死滅させる治療法です(画像1、2)。肝臓は動脈と門脈という2種類の血管から栄養を受ける二重血流支配といわれる特徴を持っています。一方、肝細胞がんをはじめとした肝がんの多くは動脈だけから栄養を受けるため、抗がん剤を集中的にがん組織に到達させるとともに、がんに栄養と酸素を供給する動脈を封鎖(塞栓)して、がんのみを兵糧攻めにすることが可能です。肝動脈化学塞栓療法はこの特徴をうまく利用した治療法で、腫瘍の範囲だけの動脈を狙い撃ちするため、正常の肝臓への影響が少なく、肝機能の低下した患者さんにも行える利点があります。
始めに太ももの付け根に局所麻酔を行い,
所要時間は90~120分くらいで、この後6時間は病室のベッドで安静にして、
肝動脈塞栓療法の適応は、少し進行した肝細胞がんで、具体的には、外科的肝切除やラジオ波凝固療法が適応とならない3cmを超える大きな腫瘍や4個以上の多発腫瘍です(全身の状態や、肝臓の状態で治療法が変わることがあります)。治療前にCTやMRI検査などを行い確認します。肝動脈化学塞栓療法を受けた患者さんの2年生存率は75%、5年生存率(5年後に患者さんが生存している確率)は25~50%と報告されています。効果のある症例ではがんが完全に死滅してしまう場合や、一部残存する場合も、繰り返し治療することによってがんの進行を抑えることができる場合があります。
2014年から血管塞栓用ビーズという新しい塞栓物質が使用可能となり、従来の薬剤で効果の少なかった患者さんに効果が期待されています。