文字サイズ
T
T
ページの先頭です。

病名検索

大動脈瘤、大動脈解離の治療

全身状態を診て、手術法を決定

大動脈瘤・大動脈解離とは

 心臓から全身に血液を送る太い血管(大動脈)は、内膜・中膜・外膜の3層で構成されています。大動脈瘤は、この「大動脈の一部の壁が、全周性または局所性に拡大・突出した状態」です。大動脈瘤は無症状のことが多く、正確な発症頻度は不明ですが、近年は画像検査(腹部エコーやCT、MRI検査)の発達に伴いその診断件数は増加していると思われます。
 一方、大動脈解離は「大動脈壁の壁が中膜で裂け、動脈走行に沿ってある程度の長さで大動脈の内腔が二腔になった状態」です。急性大動脈解離は突然死などの原因となる(図1)ことから、正確な発生頻度は不明ですが、地域調査の報告などから10万人あたり約3人と言われています。

図1 急性大動脈解離の病態
(解離により生じる可能性がある症状)

症状や診断と手術の適応

 大動脈瘤の多くは症状が無く検診や他疾患の精査中に偶然発見されることが多いとされています。ごく少数の例では、胸部では嗄声や飲み込みにくいといった違和感、漠然とした背部痛があります。腹部では、腹満感、便秘、腰痛などの症状がみられることがあります。診断方法はCT検査で、大動脈径の計測や動脈瘤の形態を評価し治療適応を検討します。患者さんの手術リスクや年齢にもよりますが胸部大動脈瘤は最大径が50mmから60mm手術考慮します。腹部大動脈瘤の場合は40mmから50mmで手術を考慮します。瘤の形態が嚢状の大動脈瘤(いわゆる嚢状瘤)や拡大のスピードが速い場合は瘤が小さくても手術加療を検討します。
 急性大動脈解離の症状は、大動脈が裂ける際の突然の急激な胸背部痛です。その他にも脳の血流が阻害されて失神や脳梗塞を発症したり、心臓の血管(冠動脈)の血流が阻害されて心筋梗塞を発症することもあります。大動脈弁逆流による心不全症状や腹部臓器や下肢の虚血を認めることもあります(図1)。確定診断はCT検査で行うことが一般的です。

図2 腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の手術前後のCT 画像

治療について

 大動脈瘤の外科治療には人工血管置換術とステントグラフト内挿術の2通りあります。
人工血管置換術は開胸あるいは開腹で瘤化している部分の前後を含め人工血管に置き換えます。心臓に近い部分では、人工心肺を用い、心臓を止めて手術を行います。
 ステントグラフト内挿術は金属のバネ(ステント)のついた人工血管(グラフト)を足の付け根の動脈からカテーテルを用い、最適な部位の血管内でこれを固定する方法です(図2)。この治療法は皮膚切開を行わずに行うことができ、身体への負担が少ない利点があります。部位や形態によっては、全ての場合に行えるわけではありません。また、患者さんの全身状態を考慮し適応が決定されます。
 急性大動脈解離の治療は、裂けている部分によってその治療方針が異なります(図3)。上行大動脈に解離が及ぶStanford A型は発症直後から生命への危険が極めて高く、緊急手術の適応となります。一方、下行大動脈に解離があるStanford B型は急性A型大動脈解離より自然予後が良いため、基本的には安静と血圧を下げる内科治療が第1選択とされます。しかし、腹部や下肢への血管が閉塞され臓器に血液が流れない状況や大動脈の破裂のリスクが高い状況では、緊急の外科治療が必要となります。

図3 急性大動脈解離の解離部位による分類
(Stanford <スタンフォード>分類とDeBakey <ドベーキ>分類)

当科での診療実績

 当科での胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤の手術件数の推移を図に示します

図4 近大病院での胸部大動脈、腹部大動脈の手術件数

参考文献;

(1)循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2010年度合同研究班報告)、大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版)(表、図1)
(2)関連10学会構成 日本ステントグラフト実施基準管理委員会ホームページ
(3)CronenwettandJohnston;RUTHERFORD’SVASCULARSURGERY;7THEDITION:SAUNDERS(図2)

診療科案内

受診について

病名検索