内視鏡を駆使した体にやさしい手術
頭蓋内に発生する腫瘍で最も多いものは、
おおまかに神経膠腫に代表される脳実質から発生する腫瘍は悪性(浸潤性)が多く、一方、髄膜腫や下垂体腺腫、神経鞘腫に代表される脳実質外から発生する腫瘍は良性が多い傾向があります。他臓器のがんから脳にくる転移性脳腫瘍も頻度の高い脳腫瘍になりますが、原因は肺がんが一番多く、次いで乳がんになります。
また、小児期(15歳未満)でも脳腫瘍は発生しますが、多い腫瘍は
症状――けいれん発作が起こることも
脳は頭蓋骨に囲まれた
脳圧亢進症状――頭痛・嘔気/嘔吐・うっ血乳頭など
3徴候として、頭痛・
例えば、前頭葉前部では注意力や集中力の障害、前頭葉後部では
検査――CTで90%以上診断できる
CT検査で90%以上の確率で脳腫瘍の部位診断が可能です。撮影は短時間で済みます。MRI検査で詳細な画像を得ることができ、造影剤を加えることもあり、脳腫瘍の診断には必須です。放射線の
治療――安全で体に負担の少ない手術
より安全な手術、より摘出度が高い手術、より体への負担が少ない手術をめざしています。腫瘍の部位によって手術体位、皮膚切開、開頭の位置、腫瘍への接近法が異なります。脳腫瘍に対する脳神経外科手術として、開頭術、穿頭術、
術後は、放射線治療が必要な場合があります。当院は放射線治療科で強度変調放射線治療(IMRT)を行い、必要な範囲に高線量、離れた部位は照射量を軽減し、高次機能障害や皮膚障害、視神経、聴力の障害を減らすことができます。化学療法として、悪性神経膠腫にはテモゾロミド内服、さらにアバスチン点滴、ギリアデル術中使用があります。悪性リンパ腫、
画像1 症例「左大脳鎌髄膜腫」に提示した50歳代前半の女性です。画像の左にMRI造影画像3方向で撮影された腫瘍(←)と、カラー部分でファイバートラッキング技術で撮影した左右の錐体路(脳内の運動神経の走行)を示しています。これらによって腫瘍は運動神経の後方にあることを確認し、術中ナビゲーション装置で位置の確認をしながら手術を行いました。新たな症状はなく、腫瘍は全て摘出できました(右)
脳下垂体にはさまざまな種類の腫瘍が発生します。下垂体腺腫が約70%と最も多く、そのほかに頭蓋咽頭腫や髄膜腫などが挙げられます。下垂体は解剖学的には最も脳の深い部位に位置し(画像2左)、この部位に発生する腫瘍の症状は、主にホルモンの分泌異常症状(過剰または低下)と眼症状(視野異常や視力低下など)の2つがあります。この部位の腫瘍に対するアプローチ方法は開頭による方法と鼻を経由した方法があります(画像2)。
脳に直接触れることなく、腫瘍摘出が可能で鼻からアプローチする経鼻法を主に選択します。特に近年では内視鏡手術が発展し、当科は、大部分の下垂体腫瘍に対して経鼻法による内視鏡下での腫瘍摘出術(正式名称/内視鏡下経鼻的脳下垂体腫瘍摘出術)を行っています。直径4mmの内視鏡を使用して、鼻の入口から約10cmほど奥にある腫瘍へアプローチします(写真、画像3)。
この手術法の利点は、鼻の奥にある粘膜を切開して腫瘍にアプローチするため、外見上で確認できる傷口はありません。特殊な技術、機器を必要としますが、より侵襲の低い(体に負担の少ない)手術として注目されています。完全に回復した症例の画像を示します(画像4)。