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乳房再建術

再発リスクや進行度に適した方法

乳房再建術とは?

 「乳房再建術」とは、一般的に乳がんなどの手術の後、変形が生じたり、ボリュームが失われた乳房をできるだけ元の形に復元する手術です。乳がんの手術で乳房が切除されることで女性の象徴が失われ、つらい思いをする患者さんは少なくありません。
 乳房再建の希望がある、または考えてみたいと思われる患者さんは乳がん手術前に主治医と相談してください。乳房再建術は、乳がん手術の内容や、術後の乳がん治療、それぞれの患者さんの状態によってタイミングや手術の方法が異なります。

乳房再建の方法

 手術の方法は大きく2種類あります。患者さん自身の背中やお腹の組織(自家組織)を使って再建する方法と、人工乳房(シリコンインプラント)を使って再建する方法です。
 シリコンインプラントによる乳房再建では、人工物のため、乳房はやや硬く温かみに欠けますが、体のほかの部分に傷跡を作ることがなく、手術時間、入院期間も短くてすみます。
 一方、自家組織による乳房再建では、ほかの部位の組織を移動させるため、体のほかの部分に傷跡が残り、手術時間、入院期間も長くなります。しかし自分の組織で再建されるため、シリコンインプラントでは表現しにくい形の乳房を表現することができ、再建した乳房は自然な柔らかさや温かみがあります。

人工乳房手術

 2013年7月より健康保険の適用対象となった方法です。一般的な人工乳房手術では、皮膚の伸びと柔らかさを保つために、シリコンインプラントを入れる手術の前に、組織拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)を大胸筋の裏に入れて膨らませ、胸の皮膚と筋肉を伸ばす手術を行います。手術では少量の生理食塩水の入った組織拡張器を大胸筋の下に挿入します。
 挿入後、外来で組織拡張器に生理食塩水を少しずつに注入して、胸の筋肉と皮膚を伸ばします。十分に伸びた段階(約8か月程度)で、人工乳房(シリコンインプラント)と入れ替え乳房再建を完成させます。
 2019年8月にこれまでに使用していたテクスチャードタイプ(表面がザラザラしたもの)がアメリカのFDAより使用停止を命じられ、これまで使用していた人工乳房がリコールの対象となりました。これはBIA-ALCL(ブレストインプラント関連未分化大細胞リンパ腫)といって、人工乳房が原因と推測される病気の割合が、ほかのタイプの人工乳房よりも高いためになったものです。これを受け日本でも人工乳房を用いた再建は中断していました。しかし現在ではこの病気の発症の割合が少ないとされるスムーズタイプ(表面がツルツルしたもの)が保険適応となり、人工乳房による再建が再開されています。

自家組織による乳房再建

 自家組織による乳房再建は、大きく分けるとお腹の組織を使って再建する方法と、背中の組織を使って再建する広背筋皮弁法(こうはいきんひべんほう)(図1)があります。お腹の組織を使った方法では、お腹の腹直筋という筋肉に血管をつけた状態で胸に移植する腹直筋皮弁法と、お腹の脂肪組織を血管ごと胸に移植する穿通枝皮弁法(せんつうしひべんほう)が一般的です。
 広背筋皮弁法では、背中の広背筋という筋肉と周りの組織を、胸背動脈という血管を軸として乳房の方に移動させ、乳房を再建します。

図1 広背筋皮弁による乳房再建 (引用 形成外科学科ホームページより)

乳房再建の時期

 乳房再建手術は手術を行うタイミングによって、乳がんの手術と同時に行う一次再建と、乳がんの手術後に一定の期間をおいて行う二次再建に分けられます。一次再建、二次再建にはそれぞれ長所、短所があり、どちらのタイミングで行うかは、患者さんの病状や希望などによって決定されます。しかし乳がんの再発リスクや進行の程度によって適した方法は異なります。乳がんの手術前に、乳腺外科医と形成外科医の両方とよく相談し、乳がん治療と乳房再建の方針を決めていくことが重要です。

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