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白内障の治療

体に負担の少ない超音波乳化吸引術

白内障とは?

 白内障は目の中の水晶体という組織が(にご)る病気です。水晶体はカメラのレンズと同じように光の屈折を調節しています。水晶体が濁っていなければ、光が減衰することなく眼底に入るのできれいに物を見ることができます。しかし白内障になると光が眼内に通りにくくなり視力が低下します。白内障は、髪の毛が白髪になるのと同じようにすべての人が年をとると起こってくる加齢現象です。しかし、なりやすい人、なりにくい人がいます。
 年をとるとかかりやすくなる、この病気で世界では多くの人が視力を失っていますが、今の日本では、痛みの少ない安全な手術で白内障を治すことができます。早めに発見することで年をとっても見えやすさを保つことができるのです。年間100万件もの手術で多くの人が視力を取り戻しています。40歳代から診察では見つかりますが、自覚的に不自由を感じるのは50歳代後半から60歳代です。かなり個人差があります。

白内障の症状と原因

 白内障の主な症状としては、かすんで見える。明るい所でまぶしく見える。暗い所で見えにくい。以上のような視力低下症状が起こります。一般的にこのような症状は、白内障になると起こることが広く知られていますが、それ以外に、一時的に近くが見えやすくなる、片目で物を見ると、2重、3重に見えるなどの症状があります。一時的に近くが見えやすくなるのは、白内障になると水晶体が厚みを増し、近眼になるためです。
 水晶体は薄い被膜に包まれて、その中に線維構造があります(図1、2)。水晶体の周辺の位置に基底層があり、内側に向かって古い組織がたまっていくため加齢によって濁りがたまり、量が多いほど強い白内障となり視力障害を起こします。水晶体は、水分が65%で、クリスタリンという可溶性の蛋白質と、アルブミノイドという不溶性の蛋白質などで構成されています。クリスタリンは高い屈折率を確保するために必要な蛋白質です。水晶体にはアルファ、ベータ、ガンマの3種類のクリスタリンが存在しています。
 蛋白成分が増えるほど混濁(こんだく)が強くなります。加齢とともに水溶性蛋白質が減り、不溶性蛋白質が増えてきます。水晶体の中ではこのような蛋白質の代謝機構がないので、加齢とともに変性した蛋白質、クリスタリンが異常凝集したものをクリスタロイドと言いますが、それらがどんどん蓄積されていき水晶体が濁っていきます(写真)。
 白内障には先天性と後天性のものがあります。先天性のものは、遺伝の認められることがあります。代表的なものにダウン症があります。また胎内感染によるものもあり、代表的なものとして、妊娠初期の母体の風疹感染(ふうしんかんせん)による先天風疹症候群があります。
 後天性で最も多いのは老人性であり、特に原因がはっきりしないものは、この範疇(はんちゅう)に入ります。また後天性には老人性のほかに、外傷性、併発性(眼内炎症などによるもの)、放射線性、糖尿病に代表される内分泌代謝異常性、ステロイドなどの薬物性のものがあります。

  • 図1 水晶体の構造1
  • 図2 水晶体の構造2

写真 白内障

白内障の診断方法と治療

 視力検査と顕微鏡を使った眼科診察が重要です。水晶体は細隙灯(さいげきとう)顕微鏡という顕微鏡を使い観察します。細いスリット光を斜めから眼内に入れると、角膜についで前房の奥に瞳孔を通して水晶体が光学的切片像として観察されます。これによって、水晶体の混濁部位や範囲、程度などが観察でき、白内障を診断することができます。
 白内障の治療は点眼療法と、外科的治療、すなわち手術の2種類です。点眼治療では進行を遅らせる働きはありますが、一度濁った水晶体を元に戻すことはできません。一方、手術治療は濁った水晶体を除去しますので、白内障による視力障害を改善することが可能です。白内障手術では濁った水晶体を除去し、人工的なレンズを眼内に挿入します(図3)。カメラにたとえるとレンズの部品交換です。
 水晶体の除去方法には、大きく分けて3種類あります。水晶体をカプセルのまままるごと摘出する嚢内摘出(のうないてきしゅつ)、カプセルを眼内に残し白内障だけを取り出す嚢外摘出、超音波で白内障を乳化して吸引する超音波乳化吸引術です。この3種類の手術方法の中で現在の主流は超音波乳化吸引術です。
 超音波乳化吸引術は、切開創(せっかいそう)を小さくし手術の侵襲を少なくすることができる手法です。この手法によって、患者さんの負担を減らし、また手術時間を大幅に短縮することが可能になりました。時間が短いので簡単と思われがちですが、実際は非常に細かなテクニックを必要とします。最近は挿入する眼内レンズの中に、乱視矯正眼内レンズ、遠近両用眼内レンズなども普及してきています。

図3 眼内レンズ挿入図

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