呼吸リハビリテーションに高い評価
COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)とは、昔から「
図1 正常の気道とCOPDの気道(肺の末端)
厚生労働省の統計によりますと、COPDで死亡する患者さんの数は徐々に増加しており、2013年では1万6443人でした。この数は全死亡原因のうち第9位にあたります。超高齢社会の到来と、いまだ日本人の喫煙率は約20%と先進諸国の中では高い方にあることなどを考えると、この順位は今後さらに上昇するといわれています(図2、表)。
COPD患者さんの症状は、咳や痰、階段や坂道を上るときの息切れ、呼吸の度にゼーゼーすることなどです。この病気は中高年の方に多いことから、こうした症状は喫煙や、歳のせいと思い、発見が遅くなることも多々あります。
COPDが進行すると、息切れの具合がひどくなって外出ができなかったり、日常生活に支障が出てきたりします。そして、呼吸不全や心不全などに進展していきます。
COPDの患者さんは症状を自覚し始めても、医療機関を訪れることは少ないので、早期に受診することが診断への一歩です。また、COPDは全身性疾患といわれるほど、さまざまな病気を合併するのが多いということが特徴です。心不全、心房細動、
当科では、さまざまの検査を駆使して、COPDの診断を行い、患者さんのCOPDの程度を判定して治療を行うように努めています。
その検査は、呼吸機能・呼吸抵抗検査、胸部X線や胸部CT検査、心電図、血液検査、動脈血ガス分析、呼気ガス検査、
図3 肺機能検査
ほとんどの原因がタバコなので、治療は、まず完全に禁煙することです。インフルエンザや肺炎にかかるとCOPDが悪化するため、予防ワクチン接種も必要です。さらに、先に述べた、もともと合併している病気の治療も重要です。
COPDの薬物治療には、症状や呼吸機能に応じて吸入気管支拡張薬を使います。また、年に2回以上COPDが悪化する患者さんや、喘息を同時に持つ患者さんには、吸入ステロイド薬も使います。呼吸不全の状態になれば、在宅酸素療法や在宅人工呼吸療法を行います(図4)。
図4 COPDの薬物治療
COPD患者さんは、息切れのために体を動かそうとせず、筋力の低下を招き、社会的孤立や抑うつなども加わって、さらに息切れが悪くなっていくという悪循環が生じます。これを断ち切るには、呼吸リハビリテーションが有効です。息切れの改善、運動に耐えられるよう体力の改善、QOL(
呼吸リハビリテーションは、息切れのあるCOPD患者さんに動いてもらうための治療です。運動療法を中心に行いますが、その下地として患者さんへの教育(禁煙や身体活動の維持)、前述の薬物治療、栄養指導や患者さんによっては酸素療法も必要なので、医師、理学療法士、看護師、薬剤師、栄養士のチーム医療が欠かせません。
当院は、この取り組みを「包括的呼吸リハビリテーション」と名付けて、各COPD患者さんに応じた2週間のプログラムを組み、入院治療で行っています。どの医療スタッフも呼吸リハビリテーションに熟練した者ばかりです。これを行った患者さんからは「日常生活の種々の場面での息の使い方がよく理解できた(食事のとき、入浴のとき、服の着替えのとき、トイレに入っているときなど)」「息が楽になり、日常生活でよく動くようになった」「薬の必要性がよく理解できた」などの感想が多く寄せられています。
退院後は、定期的に外来で運動療法を継続してもらいます。どうしても、この2週間の入院ができない患者さんには、外来で運動療法を開始することもできます。
図5 COPD患者における身体、社会、精神状態の関係
(COPD<慢性閉塞性肺疾患>診断と治療のためのガイドライン第4版、一般社団法人日本呼吸器学会)