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結腸・直腸がんの腹腔鏡・ロボット支援下手術

最新の高度な技術で正確な手術

最新の結腸・直腸がん手術の動向

 結腸・直腸がんの手術は従来開腹にて行われていましたが、近年では患者さんへの負担が少ない腹腔鏡手術が主流となってきています。
 腹腔鏡手術は開腹手術と比較して、傷が小さい、出血量が少ない、疼痛が比較的軽い、術後腸管運動の回復が早いなどの特徴があり、術後早期に離床や経口摂取が可能となるため、入院期間が短縮されて早く社会復帰できるメリットがあります。
 一方、特に直腸がんにおいては、骨盤内の狭い空間で直線的な鉗子を用いて行う腹腔鏡手術は、より高度な技術を要する難易度の高い手術とされています。その欠点を補うために1990年代に米国で手術支援ロボット(ダヴィンチ・サージカルシステム)が開発され、本邦でも2018年4月から、直腸がんに対するロボット支援下手術(ダヴィンチ手術)が保険適応となりました。
 ダヴィンチ手術の特徴は、高解像度の3D画像、多関節をもった自由に曲がる鉗子、手振れ補正機能などによるより精緻な手術操作にあります。それにより技術的に難しいとされる直腸がん手術において、がんの根治性と排便・排尿・性機能など術後機能温存の両立が可能になることが期待されます。(写真1、2)

  • 写真1 術者はサージョンコンソールからロボットを操縦します。
  • 写真2 実際の手術はロボットが行い、サージョンコンソールの術者の操作を忠実に再現します。ベッドサイドにいる助手は、ロボットの鉗子交換や視野展開の補助を行います。

習熟した医師による当科の腹腔鏡・ロボット支援下手術

 当科では1995年から大腸がんに対する腹腔鏡手術を導入し、当初は早期がんに対して行っていましたが、徐々に進行がんにも適応を拡大し、これまでに約1300人の患者さんに実施しています。症例数は年々増加しており、2019年度は大腸癌手術の95%を腹腔鏡(ダヴィンチ手術含む)での低侵襲手術を行っており、その手術成績は開腹手術と同等で、短期的には開腹手術に勝っている点もあります。
 腹腔鏡手術には高度な技術を必要とするため、当科では内視鏡外科学会の技術認定制度で認定を受けた医師が手術を行います。当科は現在3人の技術認定医(大腸)を有しており、今後の教育によりさらなる増員が見込まれます。また、近年の画像診断の進歩により、術前のCT画像から3D画像を作成して腫瘍の位置、血管の走行などを確認するなど、より詳細な術前診断が可能となっており、より安全な手術が可能となっています。(画像1)
 直腸がんに対するダヴィンチ手術は、最新の手術であるがゆえにより高度な安全管理が求められており、現時点では比較的厳しい術者条件(日本消化器外科学会専門医であること、日本内視鏡外科学会の技術認定医であること、ダヴィンチの製造販売元である米国インテュイティブサージカル社のトレーニングコースを受けること)が課せられています。当科ではその術者条件を満たす医師2人を有しており、2019年12月までに約40例のダヴィンチ手術を安全に行っており、今後症例数の増加が見込まれます。

画像1 骨盤内の操作(ほとんど出血がなく手術が可能です)

腹腔鏡・ロボット支援下大腸手術の実際

 腹腔鏡手術(ダヴィンチ手術含む)では、従来の開腹手術と異なり、腹腔内を炭酸ガスで膨らまし、このスペースを利用して手術を行います。また腹腔鏡用のカメラや機械を挿入するために、5mmや12mmのトロッカー(おなかに腹腔鏡機械を挿入するための器具)を適切な場所に挿入します。腫瘍を含めた腸管やリンパ節のある腸間膜を一塊として取り出すため、おへその創は一般的に3〜5cm程度の皮膚切開が必要となります。
 切除範囲、リンパ節郭清範囲は開腹手術とほぼ同じです。出血量は30cc程度で、手術前に高度の貧血がない限り輸血の必要はありません。手術時間は症例によってやや差はあるものの、結腸がんで190分、直腸がんで220分です。
術後経過は翌日には離床、飲水開始となり、経口摂取は術後3〜4日で可能になります。術後の抗生剤はほとんどの症例で手術当日にしか使用しません。輸液は術後、4日程度で終了可能ですので、その以降は退院が可能となります。当院での術後在院期間は結腸がんで約9日、直腸がんで約11日となっています。
 術後の補助療法に関しては、開腹手術と同様、手術標本の顕微鏡による病理組織学的検査の結果によって決定しています。

写真3 ダヴィンチ手術のトロッカー配置おへそは3~5cmの皮膚切開より装具を装着しています

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