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先天性食道閉鎖症の治療

腋下切開法による手術

先天性食道閉鎖症とは?

 食道は(のど)から胃につながる消化管ですが、生まれてきた赤ちゃんの中には、食道が1本の管としてつながっていない場合があります。この病気を先天性食道閉鎖症と呼びます。新生児外科の代表的な病気の1つです。赤ちゃん2500人に1人の割合でこの病気がみられます。
 生まれてくる前からお母さんのお(なか)が大きいことが多く(羊水過多)、早産で赤ちゃんの体重が少ない場合が多いとされています。また脊椎の異常、心奇形、鎖肛などの奇形を伴う割合が多いのも1つの特徴です。
 食道と気管の位置関係からは、最も多いのが口側の食道がどこにもつながっていない盲端に終わり肛門側の食道は気管につながっているもので、全体の90%を占めています(グロスC型)。次に多いのは口側食道、肛門側食道とも盲端に終わっているタイプです(グロスA型)。そのほかにもいろいろなタイプがありますが、この2つがほとんどを占めています(図1)。

図1 先天性食道閉鎖症の分類(食道と気管の位置関係)

先天性食道閉鎖症の症状、診断

 母親に羊水過多があることや胎児の胃が見えないことなどの理由で出生前診断を行うケースが増えています。出生後の症状としては口から泡沫状(ほうまつじょう)唾液(だえき)が流れ出ることが最も特徴的です。
 食道が胃に通じていないため、ミルクを飲めず、肺炎などの肺合併症を起こすこともあります。

腋下切開法への取り組み

 基本的にはグロスC型の場合は緊急手術を行います。従来は胸を大きく切開し、口側食道と肛門側食道をつないでいました。しかし、この方法では術後に側弯や右腕を拳げるのが難しいことが問題でした。
 このため現在では、胸腔鏡(きょうくうきょう)手術や腋下(えきか)切開法による手術が開発されています。胸腔鏡手術は技術的に難度が高く、まだ健康保険適用になっていないため一部の施設でしか行っていません。
 これに対し腋下切開法は「図2」のように右腋下を短く切開して手術を行う方法です。当院は2004年から腋下切開法で手術を行ってきました。その結果、「写真1」に示すように皮膚切開線は脇の下に隠れ、外からは分からなくなっています。
 また腋下切開法では筋肉を切開しないため、腕の拳上困難も起こっていません。グロスA型や上下食道間の距離が長いものでは、まずお腹から胃にチューブを入れます(胃瘻(いろう))。その後に上下食道の延長術を行った後に食道をつなぐ手術を行います。

  • 図2 腋下切開法による食道閉鎖症手術
  • 写真1 4歳男児の食道閉鎖症術後の手術創(

手術成績は大きく改善

 食道閉鎖症の赤ちゃんの治療成績はあまり良くありませんでしたが、近年は非常に改善しています。現在では、重篤な染色体異常、高度の心奇形や超低体重出生児など特殊な赤ちゃんに対してどう治療していくかが課題となっています。

写真2 NICUでの診療風景

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