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子宮内膜症の治療

長く付き合っていくために

子宮内膜症とは?

 子宮内膜症とは、(おも)に月経痛のことです。月経の元となる子宮内側の子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所にでき、その場で炎症を起こし、痛みの原因となります。初経から閉経までの間に起こる病気で、閉経すると症状はなくなります。ということは、妊娠する年齢層と合致します。
 発生場所によって、大きく子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)、卵巣子宮内膜症性嚢胞(のうほう)(チョコレート嚢胞)、希少部位内膜症に分けられます。発生部位によって、治療方法が異なります。

診断までの流れ

 まず症状について伺います。痛みなどの症状は個人の感覚が全てで、ほかの人と比較がしにくいため、内膜症用の問診票を使ってVAS(Visual(ヴィジュアル)Analogue(アナログ)Schale(スケール):視覚的評価スケール)と鎮痛剤の使用状況から判断します。これは治療の効果判定にも使用します。月経時以外の骨盤の痛み、月経時にいつも起こる胸痛や別の場所の痛みについても尋ねます。血便や血尿も重要な症状です。
 診察(内診)で疼痛(とうつう)の場所、程度の確認をします。同時に経腟超音波(けいちつちょうおんぱ)を行い、卵巣内膜症性嚢胞の有無を確認します(図1)。
 症例の患者さんの場合、ここで直径8cmの卵巣内膜症性嚢胞が発見されま図1した。診察で異常所見が子宮内膜症の診断の流れあった場合は採血や造影剤を使ってMRI検査を追加します。

図1 子宮内膜症の診断の流れ

治療方針と治療法

 全ての患者さんに手術が必要なわけではなく、現在の希望と今後の予定に合わせた治療を行っていきます(図2)。年齢が上がるほど、嚢胞が大きいほど悪性腫瘍合併率が上昇します。
子宮内膜症で手術が必要と思われる方
・薬物療法で症状が改善されない方
・腫瘍の大きい方(6cm前後以上)
・年齢問わず/画像検査で悪性腫瘍が疑われる場合、普通の結婚生活で2年以上自然妊娠しなかった方
 上記以外の患者さんについては、まずは痛みのコントロールを行います。我慢するのではなく鎮痛剤は使用してください。内服の状況によって、治療の変更などが判断できます。
 妊娠すると月経がなくなることから、内膜症も軽快します。妊娠の希望がある方は早期の妊娠をお勧めします。
保存的治療(手術を行わない場合)
・低用量ピル(LEP)/ヤーズ・ルナベル妊娠の予定が数年後の方はLEP製剤の内服を勧めます。定期的な月経が起きますが、月経量の減少、月経痛の軽快が期待できます。低用量ピルが内服できる方には条件があります(表1)。
・黄体ホルモン製剤/ディナゲスト
 定期的な月経を止めて疼痛を軽減します。
・GnRHa製剤/リュープリン、スプレキュア
 卵巣の機能を抑制し、閉経状況を人工的に作ります。使用限度が6回までなので、ほかの治療で症状のコントロール不良な場合、間にGnRHaを2~3回投与することで症状のコントロールが図れます。
・子宮内留置型黄体ホルモン除放製剤/ミレーナ
 子宮内に留置するため、内服の必要はありません。主に子宮腺筋症の方が対象になります。
その他
 当院では随時世界的な治験に参加し、新薬の開発に協力しています。

  • 図2薬物療法
  • 表1 LEP製剤が内服できない方

手術療法

 再発率が高いことから、基本的に45歳以上の方は根治術(子宮・両側卵巣摘出)を勧めています(図3)。
 症例の患者さんの場合は30歳代前半なので、将来の妊娠に備えて腹腔鏡(ふくくうきょう)手術で卵巣の腫瘍だけを摘出し、正常な部分は残すことが可能です。術後の月経痛の軽減が期待できます。

当科での成績

 当科では子宮内膜症手術は悪性が疑われない限り、腹腔鏡で行っています。腹腔鏡手術は(きず)が小さく、早期に退院が可能で、仕事の内容によりますが早く(退院後2週間程度)普段の生活に戻れます(表2)。
 当科には日本産婦人科学会認定の腹腔鏡認定医が5人在籍しており、毎年約300件の腹腔鏡手術を行っています。良性腫瘍の場合、腹腔鏡手術の割合は90%以上、腫瘍が大きいなど腹腔鏡では安全に行えないと判断した症例は開腹で行っています。

表2 クリニカルパスの一部 ( )の時間は午前・午後で異なります

定期診察が重要

 卵巣子宮内膜症性嚢胞(らんそうしきゅうないまくしょうせいのうほう)は再発が多い疾患です。そのため、定期的な受診を勧めます(症状がなくても1年に1度程度)。世界的に子宮内膜症性嚢胞術後無治療の場合、再発率は34%です。術後LEPの内服によって8%まで低下できます(図4)。
 主な治療はLEP製剤、ディナゲスト、子宮内留置リングです。内服継続期間は原則2年間です。その方々にあった治療を提供するため、術後の症状の改善具合でホルモン療法の追加を決定します。症状が落ち着いている方は当院と連携している通院に便利な、希望の産婦人科診療所を紹介します。詳しくは医療連携ホームページを参照してください。疼痛の再発や治療法変更などの際は当院への紹介が可能です。
 症例の患者さんは妊娠の予定ができるまではLEP製剤の内服を継続することになりました。

図4 卵巣子宮内膜症性嚢胞の5年再発率

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