文字サイズ
T
T
ページの先頭です。

病名検索

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の治療

全ての患者さんに最適な治療を

消化器内科の特徴

 潰瘍性大腸炎、クローン病は、小腸や大腸の粘膜に炎症や潰瘍を引き起こす原因不明の病気です。厚生労働省の難病対策における「特定疾患」で、患者さんによってその病態が多様で治療が難しい病気です(図)。
 当科は通常の健康保険診療ではできないような有効な検査、治療を行っており、全ての患者さんに最適な治療を提供することをめざしています。例えば、薬剤の血液中の濃度をモニターすることで、患者さんに合った治療薬の選択や、新しい薬による治療を行っています。

図 平成25年度特定疾患医療受給者証交付件数

炎症性腸疾患の症状は?

 潰瘍性大腸炎の初期症状として血便(便に血液が混じること)、粘液便(ねばねばした油のような分泌物が混じること)、腹痛を起こすことが多いです。ひどくなると夜間に下痢があったり、発熱や食欲不振が見られたりすることもあります。症状が長期間続くことが特徴で、再燃(さいねん)(悪くなること)と寛解(かんかい)(良くなること)を繰り返したりすることがあります。(画像1、2)
 クローン病の特徴的な症状は腹痛、下痢、全身倦怠感(けんたいかん)、食欲不振、体重減少などがあります。クローン病は肛門に病変を形成することが多く、お尻が痛い、肛門の周囲から(うみ)が出ているなどの症状が現れることがあります。また腸管に狭窄(きょうさく)(狭くなること)が起こることで腸閉塞(ちょうへいそく)による症状(お(なか)が張る、吐気、嘔吐(おうと)、腹痛)が出ることがあります。お腹の中に膿瘍(のうよう)(膿のかたまり)や瘻孔(ろうこう)(腸と腸または腸と体外との間に交通路ができること)を形成すると腹痛、発熱があります。

  • 画像1 浅い潰瘍
  • 画像2 深い潰瘍

原因は分かっているのでしょうか?

 はっきりした原因は分かっていません。ただ複数の原因が関与していると考えられています。遺伝的要素に加えて、脂肪の多い「欧米化した」食事や腸内細菌の変化などの環境因子が加わり、免疫の過剰によって炎症を起こすと考えられています。
 両親が潰瘍性大腸炎の場合、その子どもが炎症性腸疾患になるリスクは、病気でない人と比べやや高いのですが、近年の世界的な炎症性腸疾患の頻度の増加(図)は遺伝的要素だけでは説明がつかず、食生活などほかの因子の関与の方が大きいと考えられています。

どんな治療がありますか?

 潰瘍性大腸炎の治療はペンタサ・アサコールリアルダに代表される5-アミノサリチル酸製剤とステロイド製剤で始めることが多いです。また炎症が直腸やS状結腸など肛門に近い部位にある場合には注腸療法や座薬を使うこともあります。重症例(画像2)では入院による治療が必要です。
 またステロイドの長期投与による副作用が問題になっており、免疫調節薬(サンディミュン、プログラフ、イムラン、ロイケリン、ネオーラル)、抗TNF-α製剤(レミケード、ヒュミラ)、抗IL-12/23抗体(ステラーラ)、抗インテグリン抗体(エンタイピオ)、JAK阻害薬(ゼルヤニツ)、血球成分吸着・除去療法(GCAP、LCAP)などを使う場合があります。
 クローン病の治療法は栄養療法と薬物療法があります。栄養療法は大切な治療法の1つです。脂質が病気の再燃の引き金になると考えられるため、脂肪を制限した栄養剤を服用する治療がこれに当たります。薬物療法は5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド製剤、免疫調節剤(イムラン、ロイケリン)、抗TNF-α製剤(レミケード、ヒュミラ)、抗IL-12/23抗体(ステラーラ)、抗インテグリン抗体(エンタイピオ)、血球成分吸着・除去療法(GCAP)を使って、免疫異常や腸管炎症を抑制し症状を改善させます。
 当院では通常の健康保険診療では使えない新しい薬を使う治療も行っています。

どんな食事をすればいいですか?

 潰瘍性大腸炎では食事療法の意義は小さいと考えられています。寛解期には食事制限や乳製品や繊維質の回避などは必要ありません。ただ排便回数が多い活動期には絶食や繊維質の回避は症状改善に有効です。
 クローン病は栄養療法が治療として行われているように、食べ物の炎症に与える影響はあると考えられます。活動期はもちろんのこと、寛解期でも低脂肪、繊維質の少ない消化の良いものを食べることが望ましいです。
 ただ、比較的コントロールが良く穿孔(せんこう)、狭窄、瘻孔(そうこう)のリスクが高くない場合は、寛解期に極度の制限をするとストレスにもつながります。無理のない範囲で栄養療法を行うのが望ましいです。

大腸内視鏡は受けないといけませんか?

 大腸内視鏡は楽な検査ではありません。実際、世界中で内視鏡以外で病状を把握しようとする研究が盛んに行われています。MRエンテログラフィー、カプセル内視鏡、X線を使った消化管透視検査などが内視鏡の代わりに行われることもあります。
 ただ、炎症性腸疾患を長期間患っている患者さんは大腸がんができやすいことが分かっており、このような炎症性腸疾患にかかわる大腸がんの診断には、内視鏡検査や生検(大腸組織の一部を採取すること)による病理学的検査が必要です。

世界で新しい治療薬の研究が進む

 炎症性腸疾患は「難病」とされ治療が難しい場合がありますが、早期に診断し適切な治療を適切な時期に行うことで、病気でない人と同様の生活を送ることができます。世界中で新しい治療薬の研究が進められています。
 「今日解決できないことも明日には解消できる」と信じて、病気としっかり向き合うことが大切だと考えています。

診療科案内

受診について

病名検索