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腎不全(急性・慢性)の透析治療

病状に応じた適切な治療

腎不全とは?

 腎不全とは、さまざまな原因で腎臓の働きが低下した状態を言います。腎臓の働きを一言で言えば、体内の環境を一定に保つためバランスをとることです。その中には不要な老廃物、塩分やカリウムなどの電解質、体内で生成される酸あるいは余分な水分を尿として排泄(はいせつ)することです。また、赤血球の生成に必要なホルモン(エリスロポエチン)の分泌、カルシウムやリンといったミネラルの調節も行っています。
 従って、腎不全になると体内環境にいろんな異常が現れてきます。まず、塩分や水分の排泄が十分にできずに体内の水分(体液量)が増加していきます。体液量の過剰は高血圧、むくみの原因になります。体液量の過剰が高度になると、肺に水がたまる胸水や肺水腫を生じ呼吸困難が現れます。また、老廃物の蓄積で、倦怠感(けんたいかん)や食欲不振・吐き気などの症状を自覚するようになります。カリウムが蓄積した場合は、突然死をきたすような致死的不整脈が現れる恐れがあります。このほか、血液が過度に酸性になったり、貧血が進行したり、カルシウム・リンの異常に伴う骨の病変なども生じてきます。
 以上のような腎不全で見られるさまざまな異常は、透析療法などの適切な治療が行われない限り、最終的には命を失うことになります。

急性腎不全と慢性腎不全

 腎不全は発症の時間的な経過から、急性腎不全と慢性腎不全に分類されます。なお、最近では病気のとらえ方の変化で、急性腎不全を急性腎障害、慢性腎不全を慢性腎臓病と言い換えるようになっています。
 急性腎不全は、数時間から数日間といった経過で急激に腎臓の働きが低下することを言います。その原因としては、急速進行性糸球体腎炎症候群(きゅうそくしんこうせいしきゅうたいじんえんしょうこうぐん)のような腎臓そのものの病気以外にも多岐にわたり、高度の脱水、抗がん剤や抗生剤、ヨード造影剤、あるいは痛み止め(NSAIDs)などによる薬剤の副作用などがあります。また、心不全や急性膵炎(きゅうせいすいえん)、重症感染症、侵襲度の大きな手術後など、全身的に強いストレスがかかるような病態で、腎臓にもストレスがかかるため急性腎不全を引き起こすことがあります。急性腎不全は、原因の除去や基礎疾患の治療によって多くの場合、腎臓の働きは回復します。
 従って急性腎不全については、速やかに診断し治療を開始することが重要です。
 慢性腎不全は数か月から数年かかって徐々に腎臓の働きが低下することを言います。慢性腎不全の原因も多岐にわたりますが、糖尿病や高血圧症といった生活習慣病を基礎疾患として生じるものが、最も高頻度にみられます。そのほかの原因として、慢性糸球体腎炎や遺伝性疾患の多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)などが挙げられます。
 慢性腎不全の場合、残念ながら腎臓の働きを正常に回復させる治療法はありません。しかしながら、血糖や血圧のコントロール、貧血のコントロールなどの治療を行い、腎機能低下のスピードを遅らせることは可能になっています。
 急性、慢性のいずれの腎不全でも、腎臓の働きが大幅に低下し、体内環境の破綻が生じた場合は、透析療法を行うことになります。当院では腎臓内科が腎不全の診療を担当し、病状に応じた適切な治療を提供しています。

腎不全に対する治療――腎代替療法

 腎不全で生じるさまざまな異常を補正するためには、悪化した腎臓の働きを肩代わりする治療、つまり腎代替療法が必要となります。腎代替療法には血液透析や腹膜透析、腎移植があります。当院は、このいずれの治療法も行うことができます。また、総合病院である利点を生かし、関連する各診療科が密接に連携し診療にあたっています。 血液透析は、現在、国内で最も広く行われている透析療法です。血液透析では、血液を体外に取り出し、ダイアライザーと呼ばれる透析器(人工の膜)に通すことで、血液中の不要な老廃物や水分を取り除き、血液を浄化します。きれいになった血液は、再び体内に戻します。血液透析は、血管に針を刺して血液を連続的に取り出す必要があるため、前腕の動脈と静脈を皮下でつなぎ合わせ「シャント」と呼ばれる血流の豊富な血管を、あらかじめ手術によって作ります。通常、週3回、1回当たり4時間程度の透析が必要です。 当院では主に心臓血管外科でシャント手術を施行しており、血液透析の導入は腎臓内科で行っています。血液透析導入後、状態が落ち着いたところで近隣の透析施設での維持透析を依頼しています。また、透析患者さんが当院に入院された場合は、腎臓内科および泌尿器科の透析担当医が診療に携わります。 腹膜透析は、内臓を覆っている「腹膜」を利用して血液をきれいにする透析療法です。お(なか)の中(腹腔内(ふくくうない))に透析液を貯留すると、腹膜の毛細血管から血液中の老廃物や水分がゆっくりと染み出してきます。数時間ごとに透析液を交換することで、血液を浄化します。このためには、あらかじめ透析液を出し入れする管(腹膜還流用カテーテル)をお腹に植え込む手術が必要です。血液透析と比べ、透析開始後も腎機能を長く保つことができ、尿が出なくなる時期を遅らせることができるといわれています。このことが患者さんの寿命を伸ばすのに有効だという報告もあります。腹膜透析は在宅治療が基本となるため、月に1回程度の通院で治療を行うことが可能です。当院では腎臓内科が腹膜透析の診療にあたっています。 腎移植は、基本的に慢性腎不全について行われます。国内での治療成績は良好で、当院でも腎移植が可能な患者さんには積極的に勧めています。腎移植は腎臓の提供者(ドナー)が必要です。心臓や肺の移植とは異なり、脳死状態だけでなく心停止後に摘出された腎臓でも移植に用いることができます。移植後は免疫抑制剤を内服し続けることが必要ですが、移植腎がうまく機能すれば食事を含めた日常生活の制限が著しく緩和され、QOL(Quality(クオリティ)of(オブ)Life(ライフ):生活の質)が向上します。透析を受けている患者さんに比べ、寿命が長くなることもあります。 当院では泌尿器科が腎移植の診療にあたっています。

写真 当院での、入院治療による血液透析の様子

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