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変形性膝関節症の治療

体に負担の少ない最先端手術

変形性膝関節症とは?

 正常の膝関節の表面は軟骨で覆われています。変形性膝関節症は、加齢や肥満またO脚(おおきゃく)などの脚の変形が原因で関節の軟骨がすり減ります。その軟骨の破片が関節液を作る滑膜(かつまく)を刺激して関節炎を起こします。関節炎では膝を曲げ伸ばししたときに痛みがでたり、関節内に水がたまったりします。さらに軟骨がすり減ると、骨と骨が直接ぶつかりあうため歩くと強い痛みを生じたり、骨が変性して骨のとげ(骨棘(こっきょく))が出来たりするため膝がどんどん曲がりにくくなります(図1)。このように変形性膝関節症では、軟骨の摩耗(まもう)(すり減り)や関節の変形のため膝関節の痛みや機能低下を生じ、日常生活動作が不自由になります。
 日常生活の注意点として、以下のことなどが挙げられます。
 ・適度な運動を心掛けましょう
 ・膝によくない動作(和式トイレの使用、正座、  重いものを持ち上げる)などを避けましょう
 ・杖を使うようにしましょう
 ・肥満があれば減量しましょう

図1 変形性膝関節症

変形性膝関節症の治療

 症状が軽い場合は痛み止めの飲み薬や外用の湿布薬、塗り薬を使ったり、関節の炎症を和らげたり痛みを軽くする効果のあるヒアルロン酸を関節内に注射をしたりします。また運動療法(リハビリテーション)として、太ももの前の筋肉を鍛える大腿四頭筋(だいたいしとうきん)強化訓練があり、これは膝の痛みを和らげる効果があります。また膝を温めたりする物理療法を実施したり、不安定な膝をしっかりさせる膝の装具(サポーター)を作ることもあります。
 このような治療でも治らない場合は手術治療を検討します。これには高位脛骨骨切(こういけいこつき)(じゅつ)(骨を切って変形を矯正する)、人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)などがあります。当科で行っている最先端の治療方法を紹介します。

変形性膝関節症の手術治療

人工関節手術
 人工関節置換術は近年、その技術が飛躍的に進歩し、国内で膝関節において年間7万件以上、股関節において年間4万件以上の手術が行われ、変形した関節の一般的な治療法になっています。
 人工関節置換術でほとんどの患者さんは関節の痛みがとれます。関節の痛みでほぼ歩けなかったのが歩けるようになったり、外出ができなかったのが旅行できるようになったりと、QOL(Quality(クオリティ)of(オブ)Life(ライフ):生活の質)の大きな改善が期待できます。
人工膝関節全置換術
 人工膝関節は大腿骨(だいたいこつ)部品、脛骨(けいこつ)部品、膝蓋骨(しつがいこつ)部品の3つの部品からできています。さらに大腿骨と脛骨の部品本体は金属製でそれぞれの骨の表面に接着剤であるセメントを使って固定します。脛骨部品の表面と膝蓋骨部品は耐久性に優れた硬いポリエチレンで出来ていて、これが軟骨の代わりになります。 膝関節の変形の程度が大きい患者さんは、関節の表面全体を置き換える手術を行っています(図2)。この人工関節の部品の位置は、関節の機能や人工関節の耐久性に大きく影響するために、当科は術前にCT撮影を行いコンピューターによる術前シミュレーションを実施しています(画像1)。これによって正確な手術が実現できるようになりました。 また最小侵襲手術によって、手術の翌日から歩行器を使用してトイレ移動が可能となり、ステッキによる歩行は術後1週間程度で開始され、9割以上の患者さんが術後約2週間で安定した歩行ができるようになり退院します。当科では、退院後にリハビリテーションのために病院に通ってもらう必要はほとんどなくなりました。
単顆人工膝置換術
 膝の変形の程度が比較的小さい患者さんは、膝の悪い内側または外側部分だけを交換する単顆型(たんかがた)人工膝置換術を行っています(画像2)。膝の大事な靭帯は全て残り、ゴルフやハイキングなど軽いスポーツなどは可能で、膝はよく曲がります。当科では人工膝関節置換術の全体の約3割に単顆型人工膝関節を行っています。

  • 図2 人工膝関節の場合
  • 画像1 術前シミュレーション
    術前のCT画像上にインプラントを仮想設置し、サイズと設置位置を決定します

画像2 単顆型人工膝置換術

合併症の予防対策

 人工関節術後の合併症の1つに感染(ばい菌により膝関節の中が()むこと)があります。当科は積極的な予防対策によって危険性は1%以下になっています。もし感染が起きた場合でも、早い対応と的確な処置で感染症は治ります。
 もう1つの重要な合併症に静脈血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)があります。術後に脚の静脈の中に血の塊(血栓)ができ、これが遊離し肺の血管を閉塞すると肺塞栓症といわれ、命にかかわることがあります。できるだけ早い時期に歩行を開始することが予防につながります。当科は手術翌日からの歩行と、抗凝固薬(血をさらさらにする薬)により予防を行っています。

人工膝関節ロボット支援手術

 人工関節センターでは、2019年4月に手術支援ロボットNAVIOを導入し、2020年1月までに40例以上の手術を実施しました。極めて高い精度が要求される十字靱帯温存の人工膝関節全置換術に有用です。(画像3)

画像3 ロボット手術のデモンストレーション
ナビゲーション付きロボットの支援を受けて術者が骨を削る。

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