文字サイズ
T
T
ページの先頭です。

病名検索

白血病の治療

最先端の分子標的治療を実施

白血病とは?

 白血病は血液がんの一つです。ヒトの体内では骨の中にある骨髄で造血幹細胞という細胞から毎日血液細胞がつくられています。(図1)血液細胞には赤血球、白血球、血小板がありますが、これらの血液細胞がつくられる過程で、がんになります。がん化した細胞(白血病細胞)は、骨髄内で増殖し、骨髄を占拠してしまいます(図2)。そのため、健康な血液細胞が減少し、赤血球不足による貧血、白血球不足による免疫系の働きの低下(感染症)、血小板不足による出血、脾臓の腫大などの症状があらわれます。日本では、1年間に人口10万人あたり、男性で10人、女性で7人の割合で白血病と診断されています。白血病は、病気の進行パターンとがん化した細胞のタイプから急性骨髄性白血病(AML)・急性リンパ性白血病(ALL)・慢性骨髄性白血病(CML)・慢性リンパ性白血病(CLL)の4つに分けられます。
 白血病を含む「血液がん」は、一般に遺伝子や染色体に傷がつくことで発症すると考えられています。たとえば、慢性骨髄性白血病では、患者さんの95%以上でフィラデルフィア(Ph)染色体という異常な染色体が見つかります。遺伝子や染色体に傷がつく原因として、放射線、化学物質、ウイルスなどが挙げられていますが、そのしくみは完全には解明されていません。また、白血病は遺伝しませんので、親が罹っても、子どもが白血病になるわけではありません。

  • 図1 血液細胞がつくられる仕組み
  • 図2 白血病とは

骨髄穿刺検査は大切な検査

 進行が速い急性白血病は、出来るだけ早めに病院を受診し、血液検査により、血液細胞の数や種類に乱れがないか調べます。特に大切な検査が「骨髄穿刺」と呼ばれる検査で、おしり付近の骨に細い針を刺し、中にある骨髄液を少量吸い取り、骨髄液中の細胞成分を詳しく調べていきます。骨髄内で白血病細胞が増殖していれば、白血病と診断します。さらに詳しい検査として、細胞表面にある目印となるたんぱく質を調べる細胞性免疫検査や遺伝子・染色体異常の有無や種類を調べるFISH検査・染色体検査を行い、白血病細胞がもつ特徴を十分に把握した上で、治療方針を決定しています。

治療方針と予後など――白血病のタイプごとに治療が異なる

(1)急性白血病(AML・ALL)
 急性白血病は発症が急激なため、一刻も早く、抗がん剤を用いた治療を開始する必要があります。治療はまず「寛解導入療法」を行います。これは完全寛解(末梢血や骨髄中に白血病細胞がいない状態)を目的とした強力な抗がん剤治療であり、副作用や合併症が強く出る可能性がありますが、適切な支持治療によりそれらを軽減させながら治療を行います。治療は、何種類かの抗がん作用のあるお薬を組み合わせることで効果を増強させる多剤併用療法で行います。急性前骨髄球性白血病というAMLでは、ビタミンAの誘導体を化学療法と併用して、寛解導入療法を行っています。
 急性白血病の治療では、「白血病細胞を体内から完全に根絶させること」が目標ですが、寛解導入療法後も、体内には白血病細胞が残ります。そこで残った白血病細胞を、さらに減少させ、寛解を長期間維持させるために寛解後療法を行います。また白血病のタイプや患者さんの状態によっては、造血幹細胞移植を考慮することがあります。
 これらの治療を進めるうえで、副作用に対する支持療法はとても大切です。白血病そのものだけでなく、抗がん剤治療によっても健康な血液細胞は減少してしまうので、感染しやすい場所(口の中、気道など)のケア、加熱食の提供、感染症の予防としての抗生剤投与、貧血や血小板減少に対する輸血療法、吐き気・嘔吐に対する制吐剤投与等、様々な支持療法を行います。
 AMLは、他のがんと比較すると抗がん剤治療の効果が高く、治癒が期待できます。ただし、これまでの治療成績に基づき、効果に関する様々な条件が明らかになっています。予後因子と呼ばれるこれらの条件からAMLを「予後良好群」「予後中間群」「予後不良群」の3つに分類し、治療方針を決定します。
(2)慢性白血病(CML・CLL)
CMLの治療は、以前は経口の抗がん剤で白血球数をコントロールし、インターフェロンで病期の進行を抑えようとしていましたが、その効果は満足できるものではありませんでした。また造血幹細胞移植は一部の患者さんで長期的な生存が可能となりますが、すべての患者様に実施できませんでした。しかし、2001年にイマチニブが承認されてからは、治療法が大きく変わり、治療成績も飛躍的に良くなりました。現在、イマチニブをはじめとする分子標的治療薬により病期進行はほぼ回避され、CMLを治す可能性がある飲み薬として期待されています。
 CLLは、欧米に比べて日本では少ない病気です。根治できる有効な治療法が確立されていないため、病期が進行した場合に、症状の改善を目的に化学療法を行います。

診療実績 JALSG

 当科では、日本成人白血病研究グループ(JALSG)のメンバーとして全国の多くの医療機関と協力し、新たな標準的治療の確立を図りながら、個々の患者さんについても、常に標準的治療の提供を心がけています。以下にJALSGから報告された急性白血病に関する治療実績をご紹介します。

図3 国内の成人急性骨髄性白血病の診療実績(JALSG)
完全寛解率/造血器腫瘍独特の用語で、末梢血や骨髄中に白血病細胞がない状態5年生存率/5年後に患者さんが生存している確率

診療科案内

受診について

病名検索