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肺がんの薬物療法

世界をリードする分子標的治療薬の開発

肺がんの薬物療法について

 肺がんの患者さんに対して,がん自体に対して行われる治療には,手術、放射線治療,薬物療法(抗がん剤治療・化学療法)がありますが、手術や放射線治療が局所の治療であるのに対して,薬物療法は全身に存在するがん細胞に有効な全身治療であるという点が異なります。
 実際にどのような治療を行うかは、まず患者さんの元気さによって決められます。年齢に加えて,心,肺,肝,腎など全身の臓器機能が治療に耐えられるかどうかはとても重要です。次に肺がんの分類(顕微鏡による病理検査で決められた組織型)で決められます。肺がんは腺がん、扁平上皮がん,大細胞がんなどの非小細胞肺がんと小細胞がんに分類されます。最後に肺がんの進行度です。進行度によって化学療法のみの治療や、手術や放射線治療と組み合わせて治療を行います。

非小細胞肺がん

 肺がんの約80%以上を占める非小細胞肺がんでは病期によって抗がん剤の使用目的や使用方法が異なります。
StageIIやIIIで手術によって肺がんの原発巣を切除された患者さんでは術後に抗がん剤治療を行うことで術後再発率を抑制させます。
 手術による切除の出来ないStageIIIの肺がん患者さんでは放射線治療と同時に化学療法を行います。化学療法と放射線治療を併用することで(化学放射線療法)、放射線治療の効果を高めて治癒率を向上させることができます。最近では化学放射線療法後に後述する免疫チェックポイント阻害薬を1年間使用する事で、がんの再発を抑制させることが知られています。
StageIVではいわゆる抗がん剤
 まず、遺伝子変異のパターンや免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいかどうかを腫瘍組織(検査で患者さんから採取した腫瘍の塊)を調べることでによって治療方針を決めています。
 一部の遺伝子変異のある肺がんには、その分子を攻撃するいわゆる分子標的治療薬が有効です。
 例えば肺がんに存在する代表的ながん遺伝子変異の一つであるEGFR遺伝子変異のある肺がんに対しては、EGFRの阻害剤であるゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、アファチニブ(ジオトリフ)、オシメルチニブ(タグリッソ)といった分子標的薬が非常に有効であることが知られています(図1:分子標的治療薬が著効したCT)。また、腫瘍内科の中川教授を中心としたグループによりEGFR阻害薬に血管新生阻害薬(ラムシルマブ(サイラムザ))を一緒に用いることで、有効性を増すことが発見されています。その他、下の表(表1)の様にさまざまながん遺伝子変異が調べられるようになっており、またそれに対する治療薬(分子陽的治療薬)の有効性が高いことが知られています。近大ではこうした多くの遺伝子変異を一気に同時に検査する、いわゆるクリニカルシークエンスを、近畿大学ゲノム生物学教室を中心にいち早く導入してきました。加えて、これらの分子標的治療薬に関してこれまで近畿大学腫瘍内科は世界をリードしてその開発に取り組み、現在の分子標的治療の保険診療での使用が可能となりました。最近ではさらに新たながん遺伝子変異が続々と発見されており、当院ではこれらに有望な分子標的治療薬に対する新規薬剤の臨床試験に積極的に取り組んでいます。
 がん遺伝子変異を持ってない非小細胞肺がん患者さんには従来の抗がん剤に加えて免疫チェックポイント阻害薬を積極的に用います。
 免疫チェックポイント阻害薬は既存の免疫療法の様に免疫力を向上させるのではなく、がん細胞が持つ人の免疫力から逃れる機能を薬剤(PD-1/PD-L1抗体)で攻撃して、がん細胞が人の免疫から逃れられないようにする治療です。有効な患者さんには長期の有効性が得られる一方で、有効な患者さんが約20%程度と高くないため、まず、そうした患者さんに対しては腫瘍組織を使用して免疫チェックポイント阻害薬の効きやすさを検査します。効きやすそうな患者さんに対しては免疫チェックポイント阻害薬を積極的に用います。一方で効きにくい可能性のある患者さんに対しては、従来の抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬を同時に使う事で高い有効性が得られる事が知られています。近畿大学腫瘍内科ではこれまでこうした免疫チェックポイント阻害薬の開発に積極的に取り組んできました。加えて、どういう患者さんに免疫チェックポイント阻害薬が有効であるかの特徴(バイオマーカー)を調べるための研究を、PD-1の発見で2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶教授の主宰する、京都大学免疫ゲノム医学教室と共同で行っています。

図1 分子標的治療薬が著効したCT

表1 主ながん遺伝子変異と対応する治療薬

小細胞肺がんの薬物療法

 小細胞肺がんは肺がん全体の10~15%を占めるとされており、比較的進行の早いがんですが、一方で抗がん剤による化学療法や放射線治療に対する反応性が良好です。一部の例外を除き外科的切除が適応となることはありません。治癒を目指した放射線治療が可能な限局型と治癒は困難ですが化学療法によって長生きを目指した治療を行う進展型に分類されます。
 限局型では放射線治療と同時に化学療法を行うことが一般的で、抗がん剤としてはシスプラチンとエトポシドの2剤併用療法を用います。放射線治療の効果を高めることで治癒率を向上させます。
 進展型小細胞肺がんの治療の基本は化学療法ですが、最近では従来の化学療法に免疫チェックポイント阻害薬を同時に使うことでさらに治療効果が高まる事が知られており近大でも積極的に使用されています。

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