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悪性リンパ腫の治療

臨床試験や新薬の治験へ積極的な取り組み

悪性リンパ腫とは

 悪性リンパ腫は血液細胞の1つであるリンパ球ががん化した病気です。リンパ球は白血球の一種で細菌やウイルスなどの感染から体を守ったり、癌を攻撃したりする働きをしています。リンパ球はその機能に応じてさらにT細胞、B細胞、NK細胞の3つに細分類されています。悪性リンパ腫には様々なタイプがあり、組織像の違いから大きくホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫の2つに分類されます。そして、非ホジキンリンパ腫はさらにT細胞性リンパ腫、B細胞性リンパ腫、NK細胞性リンパ腫に細分類されます。さらに進行の違いによる分類をされる場合もあります(図1)。病名に悪性とありますが、一般的には固型がんに比べて、治療により高い確率で寛解(病気が見かけ上消失した状態)をめざすことができます。
 悪性リンパ腫はリンパ節から発生し増殖することが多いので、一般的には首、脇の下、足のつけ根などのリンパ節が腫れてきます。腫れているリンパ節を触っても痛みがないのが特徴です。しかし、リンパ球は体の中のどこにでも存在するので、脳、胃、皮膚などの全身のあらゆる臓器に腫瘤ができることがあり、健診などで偶然発見されることも稀ではありません。自覚症状として発熱、体重減少、寝汗をかくなどの症状を伴うことがあり、これらはB症状と呼ばれています。

図1 非ホジキンリンパ腫の悪性度の違いによる分類

診断と検査内容

 診断には、腫れているリンパ節を外科的に摘出して(生検といいます)、その組織を顕微鏡でみることが不可欠です(病理診断といいます)。病理診断は治療方針や予後を決定する上で極めて重要であり、当院では病理専門医と密に連携し、定期的にカンファレンスを行うことにより診断・治療の発展に取り組んでいます。
 病巣の広がりを調べる為に、当院ではCT検査、MRI検査、ガリウムシンチ検査、PET検査などをそれぞれの特徴を生かして効率的に施行します。

治療方針

 病理診断(病型)、病変の広がり(病期、図2)、全身状態、年齢、合併症などの評価から治療法を選択します。
(1)化学療法
一般にリンパ系の腫瘍には化学療法薬(抗がん剤)がよく効きます。このため、複数の薬剤を組み合せて使います。ホジキンリンパ腫に対してはABVD療法、B細胞性リンパ腫に対しては、リツキシマブ、オビヌツズマブ(生物学的製剤の項を参照)を併用したCHOP療法などが標準的化学療法として行われ(図3)、一般的に6-8コース施行します。
現在制吐剤などの支持療法が進歩してきており、副作用のために化学療法が続けられない場合は殆ど認めません。副作用の一つである白血球減少に対しては白血球増多因子(G-CSF)を使用します。また、白血球減少による感染症発症のリスクが高い患者様においては持続型G-CSF製剤(ジーラスタ®)の予防投与を行うことで感染症発症リスクが低減し、大部分の患者さんにおいて1コース目のみを入院で施行し、2コース目以降を外来で安全に施行することが可能です。

(2)放射線療法
低悪性度のリンパ腫で、病変が限局している場合に単独で行います。また、中・高悪性度リンパ腫の限局型では、化学療法後に行います。

(3) 生物学的製剤
(a)リツキシマブ(リツキサン®)、オビヌツズマブ(ガザイバ®)は、成熟B細胞に発現するCD20抗原に対する抗体です。この抗原を有する悪性リンパ腫に効果があります。
(b)ブレンツキシマブ(アドセトリス®)はCD30抗原に対する抗体です。CD30陽性ホジキンリンパ腫およびT細胞性リンパ腫に対して効果があります。
(c)モガムリズマブ(ポテリジオ®)はケモカイン受容体(CCR4)に対する抗体です。成人T細胞性白血病リンパ腫(ATL)を含む、CCR4陽性成熟T細胞リンパ腫に対して効果があります。
(d)90Y-イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン®)はCD20抗原に対する抗体であるイブリツモマブ・チウキセタンに、イットリウム90という放射性同位元素が結合されており、CD20抗原陽性のリンパ腫細胞に取り付くと、放射性同位元素から出るベータ線という放射線が、リンパ腫細胞に直接照射して抗腫瘍効果を得ることを目的とした治療法です。CD20陽性の再発または難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫に対して効果があります。

(e)その他、血液疾患領域では医学の急速な発展に伴い、免疫チェックポイント阻害薬や新規分子標的薬剤も次々と登場しております。また本邦からのエビデンスを発信すべく当院では悪性リンパ腫に対する様々な臨床試験や新薬の治験を積極的に行っています。詳しくは担当医師までお問い合わせください。

(4)経過観察
ゆっくりと進行するタイプのリンパ腫では、症状がなければ治療を行わずに経過観察をすることがあります。

(5)造血幹細胞移植
標準的な化学療法だけでは再発の可能性が高い場合や、再発後に化学療法で反応がある場合には、大量の抗がん剤を使った治療が行われます。この場合、あらかじめ自分の造血幹細胞を末梢血から採取・保存しておき、大量化学療法後に自分自身に移植をします(自家末梢血幹細胞移植といいます)。

  • 図2 悪性リンパ腫の病期分類に主に使われるAnnArbor分類
  • 図3 悪性リンパ腫の代表的な治療レジメン

診療実績

 2014年度の当院における悪性リンパ腫の新規患者数は123例でした。その内訳を示します(表3)。

図4 2014年度の診療実績(初診患者数)

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