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転移性肝がんの治療

集学的治療で予後を改善

転移性肝がんとは?

 消化器がんを代表とする胃がんや大腸がんのがん細胞は、進行すれば血液にのって肝臓へ運ばれ、その場で増殖し転移巣(てんいす)となります。もちろん乳がんや肺がん、婦人科がんも肝臓に転移します。転移性肝がんが見つかれば、できれば外科的に肝切除を勧めたいのですが、手術に向いている場合とそうでない場合があります。大腸がんが最も手術に適していて、手術する患者さんも多数おられます。
 一方、胃がんや膵臓(すいぞう)がん、食道がん、肺がんなどでは肝転移が見つかっても一般的には切除することはありません。このようながんでは、一見すべての転移巣を切除したと思われても、画像に現れないがんが無数に肝臓の中に残っていることが多く、たとえ手術しても、すぐ肝臓に再発するためです。
 また、乳がんなどでは肝臓に転移が見つかっても、既に骨など全身に転移が広がっている場合が多く肝切除には向いていません。その場合、抗がん剤治療である化学療法を行いますが、あくまで延命治療となります。

大腸がんの肝転移には集学的治療

 大腸がんは見つかった時点で約20%の方に肝転移しています。さらに、大腸がん経過中でも約70%で肝転移するといわれています。大腸がんの肝転移の場合、肝切除することで約半数は再発することなく治ります。しかし、肝転移巣が広がりすぎて、肝切除後、残った肝臓が小さくなり過ぎる場合は肝切除は不可能です。大量の肝切除は肝不全のリスクを伴うからです。肝切除ができなければ化学療法を選択しますが、がん細胞を完全には死滅できません。
 そこで大腸がんが肝転移している場合、当院では大腸外科、肝臓外科、化学療法を担当する腫瘍(しゅよう)内科が集学的治療チームを組んで患者さん一人ひとりを総合的に評価し、最善の治療方法を選択しています。集学的治療とは外科療法、放射線療法、化学療法や免疫療法などのがん治療法を効果的に組み合わせることで、治療成績を向上させるものです。
 この患者さんの場合、肝全体に転移巣が広がり(画像1)、最初から肝切除は不可能でした。まず化学療法を4か月間行ったことで転移巣は縮小しました(画像2)。その後、大腸がんと肝の転移巣を全て切除することができました(画像3)。このように肝切除が不可能な場合は、まず効果的な化学療法を行い、転移巣を小さくして肝切除の範囲を小さくします。化学療法は外来通院治療が可能で、外科治療の入院期間も2週間程度です。
 化学療法には副作用が現れるものの、腫瘍内科医が副作用をコントロールし、肝と大腸の切除の場合も、私たち肝臓外科医と大腸外科医が協力して安全な手術治療をめざしています。集学的治療を各専門医で行うことが特に重要だと考えています。

(画像1) 肝全体に転移が広がっています
(画像2) 化学療法を手術前4か月続け、転移巣が縮小しました
(画像3) 肝切除を行い、肝の転移巣は完全に摘出しました 

補助的肝切除で延命

 転移性肝がんの項で触れたように胃がんや食道がん、全身転移が起こる乳がんなどは、以前は肝切除の対象ではありませんでした。しかし、化学療法を始め、その過程に肝転移が縮小傾向を見せ、肝以外の転移巣も縮小するか変化がない場合に肝切除を行う機会が増えてきています。
 なぜなら肝転移は転移巣の中で最も生命にかかわるため肝転移巣をできるだけ切除して、コントロールすることが延命につながると考えるからです。肝切除後も化学療法の継続は必要なので、切除は補助的治療と言えます。補助的肝切除の場合でも腫瘍内科と外科が連携を取っています。

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