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小児不整脈の治療

国内のパイオニア的存在

小児の不整脈とは?

 不整脈は脈が乱れる場合だけではなく、速い脈および極端に遅い脈の場合があります。小児の脈が乱れる場合では、多くは良性で治療を必要としませんが、極端に速い脈や遅い脈のときは治療が必要です。不整脈の症状について、乳幼児期では、嘔吐(おうと)、不機嫌、意識消失などが多く、発見が遅れることもあり、注意が必要です。学校心臓検診で発見される不整脈は軽症の場合が多いのですが、まれに治療が必要な不整脈もあります。また心電図で不整脈が発見できなくても、運動時に失神を起こしたりする場合は、危険な不整脈が発生している可能性があります。

心電図検査が最も重要

 不整脈の診断には心電図検査が重要な検査といえます。不整脈を発見するために、1日以上心電図を記録するホルター心電図、運動負荷心電図、症状が起こったときに記録ができる携帯型心電計、および皮膚の下に小さな心電計を植込み2~3年の心電図記録が可能な植込み型心電図計などがあります。小児に多い呼吸性不整脈、および運動負荷ですぐに消失する調律異常では、病的なものは少なく治療は不要です。心筋が早期に興奮する期外収縮も単発性であれば、その多くは治療の必要はありません。さらに、一過性の房室(ぼうしつ)ブロックや脚ブロックも運動負荷で悪化する場合を除けば、経過観察だけで治療は不要です。
 一方、治療を必要とする不整脈には、脈が速くなる頻拍性不整脈と脈が遅くなる徐脈性不整脈があります。これらの異常が疑われる場合は、不整脈の原因および不整脈による心不全の状態を調べるため、胸部X線検査、心臓超音波検査、血液検査(電解質、BNPなど)、および遺伝性不整脈の可能性が高いときに遺伝子検査を行うことがあります。

治療方針と手術方法、予後など――非薬物治療が増加

 不整脈の治療は、薬で治療する方法以外の治療方法としてはペースメーカー治療、植込み型除細動器治療、カテーテル心筋焼灼術などがあります。薬による治療は簡便ですが、必ずしも生命予後の改善につながらないことが証明された研究もあり、近年はより確実に不整脈を治療できる非薬物治療が行われることが多くなっています。一般的な治療は以下の3つです。
①ペースメーカー治療
 心拍数が遅い洞不全症候群、房室ブロック症例における心不全、失神および動悸などの症状に対する確実な治療法です。ペースメーカーには本体とリードと呼ばれる線がついています。成人では血管の中から心臓の中に入れるカテーテル電極が一般的ですが、乳幼児では心臓の外に取り付ける心筋電極が使われます。小児は成人に比較して心拍数も多く、先天性心疾患術後症例では、必要な刺激電圧が大きいこともあり、定期的に調節が必要です。
②植込み型除細動器治療
 この治療は、先天性心疾患の術後に起こる難治性の心室頻拍、遺伝性不整脈による心室細動など命にかかわる不整脈に対して行うもので、不整脈発生時に電気ショックを起こすペースメーカーを体内に植込む治療です。AED(自動体外式除細動装置(じどうたいがいしきさいどうそうち))で治療した不整脈症例は増加していますが、その場合はこのような治療が必要です。
③経皮的カテーテル心筋焼灼術
 この治療は血管に挿入したカテーテルを駆使して、熱エネルギー(高周波)で、頻拍性不整脈の原因となる異常心筋を焼灼(しょうしゃく)する治療法です。近年、治療部位の診断は3次元電位マッピングの出現(図4)、心腔内(しんくうない)エコーとのマッチング、心臓CT画像とのマッチングを併用することで安全性や診断率が大きく向上しました。被曝量(ひばくりょう)の減少も可能で、当院では全くX線透視をしないで治療を行った症例もあります。
 適応となる代表的な病気の1つがWPW症候群(図1)です。この病気は心房と心室筋の間に存在する異常心筋(房室副伝導路)が原因です。突発的な動悸発作や心房細動を合併した場合は心室細動と同じような頻拍(図2)となり、ショックや突然死の原因となります。この治療法はカテーテルを操作して頻拍の原因となる異常心筋に熱を与えて不整脈の原因を取り除きます(図3、4)。
 この疾患以外でも発作性上室頻拍、心房頻拍、心室期外収縮、心室頻拍などの多くの不整脈疾患に対して、このカテーテル治療法は極めて有効な治療法になっています。

  • 図1 WPW症候群/非発作時の心電図
  • 図2 WPW症候群/心房細動時の心電図
  • 図3 WPW症候群の治療成功
    心電図変化で治療の成功が分かります(丸印)
  • 図4 3次元マッピングによるX線を必要としない部位診断と治療ができます

診療実績――全国から来院

 当科では小児不整脈のカテーテル治療を1992年に始め、2001年には500症例を超えました。治療成績は、上室頻拍で95%以上と良好です。先天性心疾患の術後症例などでは初期成功率は75~90%でしたが、現在は技術の向上で成功率はより高くなっています。

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