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小児の心雑音

心雑音の大半は無害性心雑音

聴診器の重要な役割

 医者といえば聴診器。私たち小児科医は子どもたちに「さあ、モシモシしよう。痛くないからね」と話し掛けることから診察を始めます。聴診器で聴くのは息を吸ったり吐いたりするときに聴こえる音(呼吸音)、腸が動くときに聴こえる音(腸蠕動音(ちょうぜんどうおん))、そして心臓の動きに合わせて聴こえる音(心音と心雑音)の3つです。
 心疾患の診断には心電図、胸部写真、心エコーなどの検査が威力を発揮しますが、お母さんから伺う話し(病歴)や子どもたちへの診察も正確な診断を行う上で欠かせません。中でも聴診から得られる情報は多く、心疾患を診断する上で心音や心雑音を聴き分けることが、診断に直結することは言うまでもありません。

心音って、何ですか?

 聴診器を胸に当てるとズッ・トン・ズッ・トンと聴こえます。これは心臓の中にある4つの弁が閉じる音です。この音を理解するために、心臓の働きについて説明します。
 心臓には4つの部屋があります(図)。右心房、右心室、左心房、左心室の4つです。右心房と右心室の間には三尖弁(さんせんべん)があります。左心房、左心室の間には僧帽弁(そうぼうべん)があります。肺から流れてきた血液が左心房から左心室に、全身から戻ってきた血液が右心房から右心室に流れてしまうと僧帽弁と三尖弁がいっしょに閉まります。このときに聴こえる音が「ズッ」であり、医学用語ではⅠ音(いちおん)と呼んでいます。
 左心室、右心室に入った血液は、2つの心室が縮むことで全身と肺に送り出されます。送り出しが終わると左心室と右心室の出口にくっついている大動脈弁と肺動脈弁が同時に閉鎖します。この2つの弁が閉じる音が「トン」です。医学用語ではⅡ音(におん)と呼んでいます。心疾患があると「ズッ」や「トン」が健常者に比べて強く聴こえたり、逆に弱く聴こえたりするのです。

図 心臓の仕組み

心雑音のお話

 「ズッ」と「トン」の間や「トン」と「ズッ」の間に別の音を聴くことがあります。これが「心雑音」です。「ズッ」と「トン」の間は言いかえれば左心室や右心室が全身や肺に血液を送り出している時間を意味します。出口にくっつく2つの弁の開きが悪い、心臓の壁に穴が開いている、などがあると血液が弁を通るときや穴を通過するときに心雑音が発生します。また、「トン」と「ズッ」の間で心雑音が聴かれることもあります。
 この間は全身や肺から流れてきた血液が2つの心房を通って2つの心室に流れていく時期です。心室の出口についている弁の閉まりが悪い、心房と心室の間の弁の開きが悪いなどがあると、そこを血液が通過するときに心雑音が発生するのです。
 医学生でもこれをしっかり理解するのに時間がかかりますので、安心してください。要するに、心臓の壁に穴が開いていたり、弁の開きや閉まりが悪いときに心雑音が聴こえることを知っていただければ十分です。

健常児にも心雑音は聴こえます

 症例で示した男児は心エコーなどの検査を行いましたが、心疾患はありませんでした。健常児に聴かれる心雑音を無害性心雑音と呼びますが、生まれた子どもたちの実に30%以上に聴こえるのです。「心雑音が聴こえます」と言われた子どもたちの大部分が無害性心雑音で、心疾患を持つ子どもはごく少数というわけです。
 むしろ、心疾患を表すサインは息遣いが荒い、ミルクを飲むのに時間がかかる、ミルクが飲みにくそう、体重が増えない、泣き声が弱々しい、元気がなく寝てることが多いなどで、重たい心疾患は産科医院を退院するまでに見つかるのが原則です。

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