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前立腺がんの放射線治療

手術に匹敵する根治性

前立腺がんとは?

 前立腺は、男性だけに存在するクルミほどの大きさの臓器です。膀胱(ぼうこう)の下に位置し、背側には直腸が隣接しています。「図」に前立腺と周囲の臓器の位置関係を示します。
 前立腺がんは日本の男性に発症するがんのうち、胃がん、肺がんに続いて3番目に多くなっています。今後も高齢化や食事の欧米化による増加が予想されています。前立腺がんは発症数が多い一方、死亡率が低いことも特徴です。これは検診で早期に発見されるがんが多くなったこと、治療技術が進歩したこと、治療の選択肢が多くあること、などが要因と考えられます。

図 前立腺と周囲の臓器
前立腺は膀胱の下部、直腸の腹側に位置しており、内部には尿道が通っています

放射線治療のメリット

 治療方法には大きく分けて放射線治療と手術による前立腺摘出があり、それぞれに一長一短があります。当科は、病状に応じた治療方法を提示した上で、患者さん自身に治療方法を選んでいただく方針にしています。
 放射線治療はがんを治すだけでなく、治療後のQOL(Quality(クオリティ)of(オブ)Life(ライフ):生活の質)を高いレベルで保つことが可能な治療方法です。近年、コンピューター技術の発達によって、従来よりも高精度の放射線治療が可能になってきました。この結果、前立腺がんに対する放射線治療は手術に匹敵する根治性が示されるようになりました。当科では前立腺に限局した前立腺がんに対し、強度変調放射線治療(IMRT)と放射性物質を封入した小さなカプセル(小線源)を前立腺に埋め込む小線源永久刺入療法の2種類の治療方法が選択できます。

強度変調放射線治療(IMRT)は、先進的な照射技術

 一般的には放射線の照射量を増やすことでがんを制御する力が増えると考えられています。しかし、前立腺は膀胱や小腸、直腸に近接した臓器なので、従来の放射線治療法では、これら正常臓器への照射によるさまざまな合併症が問題となり、完治に必要な量の放射線が病巣に照射できませんでした。従来の放射線治療方法を「画像1」に示します。
 従来の前後左右からの照射では四角い線量分布となるため、前立腺とほぼ同等の線量が直腸へも照射されてしまいます。そのため直腸からの出血が問題となり、66グレイから70グレイの照射が限界でした。しかし、この照射線量では完治が困難でした。IMRTはこのような問題点を解決する先進的な照射技術です。
 当院は2000年から他院に先駆けてIMRTを開始し、2005年からは前立腺がんへの応用を始めました。「画像2」にIMRTによる照射方法を示します。IMRTは直腸をうまく避けた照射が可能なだけでなく、膀胱や小腸などへの照射線量を極力低くすることが可能です。そのため従来の方法に比べて多くの放射線を安全に病巣に照射できるようになりました。 当科は1回2グレイを39回、合計78グレイの照射を行っており、その効果と安全性が確かめられています。IMRTは自由な線量分布を作ることができるため、遠隔転移のない進行した前立腺がんでも対応が可能です。

  • 画像1 従来の照射方法
    四角い線量分布のため、直腸へも多くの放射線が照射されます
  • 画像2 IMRTによる照射方法
    直腸への照射線量を低減し、前立腺への線量増加が可能です

早期の前立腺がんに適した小線源治療

 小線源治療は非常に弱い放射線を出すカプセル(小線源)を、50~100個ほど前立腺内に挿入する治療方法です。1つの小線源は長さ約4.5mm、直径約0.8mmで、人工骨などにも使われているチタン製のカプセルの中に、放射性ヨウ素(125I)が密封されています。「画像3」に小線源の写真を示します。
 小線源は永久に前立腺に挿入しますが、放射線量は徐々に弱まり、挿入から1年後には、ほぼゼロになります。普通の生活であれば周囲への影響はほとんどありません。小線源治療は前立腺の中から直接放射線を照射する方法なので、前立腺内に限局した早期の前立腺がんがこの治療に適しています。
 小線源の挿入は、下半身への麻酔を行った後、超音波画像を見ながら筒状の針を使って行います。放射線が前立腺に集中するため、周囲の膀胱や直腸への影響が少なく、合併症が少ない治療方法です。このため3泊4日程度の短期間の入院で治療が可能です。当科では2005年からこの治療方法を開始しており、現在では500例を超える実績があります。重い合併症はほとんど認められず、良好な治療成績を示しています。

画像3 前立腺に挿入された小線源
放射線による周囲への影響はほとんどありません

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