全人的医療を実践
心身症を診る専門の診療科です。身体と心を分けずに、疾患だけを診るのではなく、病気をもった患者さん自身を全体としてとらえていく内科です。患者さんの心理社会的背景からその人を取り巻く環境を含めて、心身両面から、その患者さんが
また、いったん病に陥ると、身体的苦痛、心理的苦痛、仕事や経済面での社会的苦痛、精神的苦痛が相互に関連しあって、トータルペイン(全人的苦痛)をもたらします。こうした苦痛に対処するには、医療側も全人的医療を実践していく必要があります。心療内科では「図1」に示す4つの側面から患者さんの症状にアプローチしていきます。
図1 患者さんの症状を図に示す4つの側面から総合的にアプローチしていきます(近大刊「教員のためのストレスマネージメントハンドブックサポート編」から引用)
心身症とは、身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子(いわゆるストレスなど)が密接に関与し、器質的障害(例えば
(1)病歴の取り方―より良い患者・医師関係の構築
まず問診という形で困っている症状について、その発症時期や増悪・軽快因子などを詳しく聞いていきますが、心療内科の場合、既にここから治療が始まっています。すなわち、よりよい患者・医師関係を築いていくことを重視しています。また、患者さんの心理社会的背景、家族関係、生育歴、受診動機などをさらに掘り下げていきます
(2)診断
次に身体的診察を行い、血液・尿検査や心電図といった一般検査に加え、必要に応じてCT、MRI、上部・下部消化管内視鏡検査なども行います。そのほか、心療内科の特徴として「消化管輸送能検査」(画像)のような腸管運動の機能を診る検査も行います。また、心理テストで患者さんの心理状態なども把握します。これらの所見を総合して、鑑別診断を行い、心身症の診断をしていきます。
(3)症例
冒頭の症例は
この原因には、心理的要因が大きく関与しています。具体的には、仕事、受験などの生活ストレスや、ストレス対処能力が低いことなどです。こういったものが消化管の運動機能、内臓感覚に影響し、不快な症状を生じさせます。
画像 バリウム100ml内服後の到達度を時間ごとに見ていく消化管の機能検査の一種
心身症の患者さんは失感情症といって、自分自身の内なる感情を無意識のうちに抑圧していたり、それをうまく言葉で言い表せないような状態に陥っていることが多いようです。心療内科では、まず患者さん自身の訴えをよく聞いてその思いを受けとめ(受容)、その考え方を支持しながら、より良い患者・医師関係を築いていく中で、治療への動機づけをしていきます。また、当科でできること、できないことを患者・医師側双方で確認しながら、一緒に治療の目標を設定します(治療契約を結ぶ)。
その後、心理テストの結果をフィードバックしたりしながら、患者さん自身に心身相関(ストレスと身体症状の関連性)に気づいてもらうようにサポートしていきます。
もちろん必要に応じて、消化器系の薬剤や向精神薬、また漢方薬も積極的に使用していきます。また、自律訓練法、交流分析、認知行動療法的アプローチといった心理療法や、臨床心理士によるカウンセリングなどを併用しながら心身両面から治療をしていきます。そして再び悪化しないように、患者さん自身に新しいライフスタイル、適応様式を習得してもらいます。
最終的に症状自体がゼロにならなくても、その症状を患者さん自身が自分でコントロールでき、少しでもQOL(
前述の治療を行うためには、特に初診に十分な時間をとることが必要なため、1時間枠で設定しています。このため、初診も完全予約制なので、患者支援センターを通して電話予約をしてください。その際、かかりつけ医からの紹介状をご持参ください。
患者支援センター
TEL072-366-0221(代表)2375・3725(内線)