高齢化とともに増加傾向
眼瞼下垂症には先天性、後天性、
先天性眼瞼下垂症とは、約80%が片目に認められます。まぶたを上げる主な筋肉(
後天性眼瞼下垂症とは、
おでこの筋肉(前頭筋)を使ってまぶたを上げるようになり、おでこのしわの増加や、慢性的な筋肉の緊張による頭痛、それに連動したうなじや肩の筋肉の緊張による肩こりを覚えることがあります。夕方になり疲れを覚えて、まぶたが下がってくるのもこれが原因です。
先天性眼瞼下垂症では、まぶたが目にかぶることで悪い方の目で物を見ようとしなくなり、視力の発達がしづらくなることがあるため、眼科医の診察を参考にして、治療時期を判断していきます。
まぶたのかぶりを
後天性眼瞼下垂症では、ほかの疾患の除外が優先されます。ある日突然、まぶたが下がった場合は、
治療法
先天性眼瞼下垂症では、働きの弱い筋肉の代わりとなる代用組織の移植が必要となります。自己の筋肉の膜(頭や太もも)や人工の組織を使用します。当科では主に自己の組織を使用します。まぶたの皮膚の下にトンネルを作り、そこに代用組織を通して、まぶた(まつ毛の上)とおでこ(眉毛の上)に橋渡しをさせて、おでこの筋肉の力を借りてまぶたを上げられるようにします。
後天性眼瞼下垂症では、筋肉や腱膜の力が弱っている場合には、まつ毛の上を切り、腱膜を短くする方法を行います(図1)。それでも改善しない場合や、腱膜の力がほとんどない状態では、先天性の場合と同様に代用組織の移植を行います(図2)。
偽性眼瞼下垂症の中でも、皮膚のたるみが原因の場合は、余った皮膚をまつ毛の上、または眉毛の下で切り取ります。それ以外の場合は、初めに原因疾患の治療を行い、それでも改善しない場合は、眼瞼下垂の症状に合わせた治療を行います。後天性と偽性眼瞼下垂症が合併している場合も、症状に合わせて手術方法を検討していきます。
合併症
皮膚を切って手術を行うために傷ができます。また、術後約2週間にわたり、
また、まぶたのかぶり方が変わることから、乱視に影響が出る場合があります。術後3か月~6か月で症状が安定してくるので、メガネを作る場合や白内障の手術を予定している方は眼科医と相談の上、治療時期を検討していきます。
また、より症状の改善を得るために、二重(重瞼術)にすることがあります。
筋膜を移植する手術を行った場合は、膜の変化によって手術直後より、まぶたが開きすぎることがあります。下を向いたときや眠っているときに良い方の目と比べてまぶたが閉じられなくなることがあり、程度が大きい場合は角膜障害が生じることがあります。そのため、再度手術により、まぶたの開きを調整することがあります。
基本的に術後は約1週間で抜糸を行います。その後は、術後1か月、3か月、6か月と外来で経過を診ていきます。場合によっては、追加で手術を行うことがあります。
2018年の眼瞼手術は年間で115例(184眼)で、そのうち眼瞼下垂症手術症例は79例(137眼)となっています。
2019年の眼瞼手術は年間で75例(137眼)で、そのうち眼瞼下垂症手術症例は54例(99眼)となっています。