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リウマチ・膠原病の治療

筋力低下を覚えたら

症状と治療経過

 患者さんの腕と太ももの筋力が弱く、押えると痛みの訴えがありました。検査の結果、CPK値が高く、筋電図で筋肉の異常所見が見られ、太ももの筋肉に炎症細胞が確認できました。
 診断は多発性筋炎で、ステロイドで治療し、CPK値は少し下がったものの、正常にはならず、筋力は回復しませんでした。そこで、免疫抑制剤を併用したところ、症状と検査数値に改善が見られました。

膠原病とは?

 膠原病は体に痛みや()れを生じることが多く、最近の半年で紹介された患者さんの症状(図1)は関節痛が最も多く、関節リウマチ、ウイルス感染や変形性関節症などさまざまな病気で見られます。従って、関節リウマチなのか、それ以外の膠原病か、膠原病以外かを知ることから始めます。
 関節痛を訴える患者さんの確定診断名(図2)が関節リウマチとは限りません。膠原病では脊椎(せきつい)関節炎、強皮症、全身性エリテマトーデス、あるいはリウマチ性多発筋痛症、ほかにウィルス性関節炎や線維筋痛症などがあります。
 関節痛の次に四肢(しし)の腫脹(手足が腫れること)、発熱、口渇(こうかつ)が続きます。四肢の腫脹は心臓や腎臓の病気、内分泌疾患など、膠原病以外でも起こります。従って、直接の原因と、膠原病があるかどうかを判断し、適切な治療を行います。患者さんの中には、既に治療を受けていて、さらに高度の治療を目的に来院される方、合併症や薬の副作用の治療を目的に来られる方もいます。
 最近2年間の外来と入院患者さんの割合を示しました(図3)。最も多いのは血管炎症候群で、これは全身の血管が侵される病気で、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症(にくげしゅしょう)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、大動脈炎症候群などがあり、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスがこれに続きます。
 関節リウマチの患者さんの入院目的は①診断②より高度の治療③合併症の治療に分けられます。①については、特徴的な症状と検査(抗CCP抗体など)やX線、MRI、関節エコーなどの検査で診断します。 「画像1」は関節エコー検査の事例です。手首の関節が、健常者(左)に比べ、関節リウマチ患者さん(右)では矢印の箇所のように、関節を取り囲む膜(滑膜(かつまく))が腫れ上がっています。この検査は血液検査の結果が良いにもかかわらず、痛みや腫れが残っているときや、次に述べる生物学的製剤などの治療が奏功しているかどうかを確認するのに有用です。また、関節リウマチ以外の診断にも使います。

  • 図1 紹介例の主訴
  • 図2 主訴が関節痛の症例の確定診断名
  • 図3 膠原病外来および入院患者さんの割合
  • 図4 膠原病に対する集学的治療の作用点

膠原病の治療と合併症

 膠原病では、体を攻撃する細胞(T・Bリンパ球)が現れ、自己抗体やサイトカインと呼ばれる因子ができる結果、皮膚、血管、腎臓、肺などに炎症が生じます。そのため、治療には免疫抑制剤・生物学的製剤・γ(ガンマー)-グロブリン大量療法などを組み合わせて使います。
 最新の薬の作用点を示します(図4)。よく使われる免疫抑制剤(①)はステロイドですが、シクロフォスファミドやアザチオプリンは、抗原の情報をTリンパ球に渡す働きをする抗原提示細胞や、自己免疫反応の中心的役割を担うTリンパ球、あるいは、自己抗体(抗DNA抗体など)を作るBリンパ球の機能を抑えます。
 カルシニューリン阻害薬(②)はTリンパ球の働きを抑え、ミゾリビンやMMF(ミコフェノール酸モフェチル)(④)はTおよびBリンパ球の増殖を抑えます。一方、関節リウマチでよく使われる生物学的製剤(③)のうち、インフリキシマブ、トシリズマブなどはサイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-17など)の作用を抑え、アバタセプトは抗原提示細胞とTリンパ球の反応を抑えます。
 一方、血漿交換療法(⑤)は自己抗体を取り除き、γ-グロブリン大量療法(⑥)は抗原提示細胞、Bリンパ球、あるいは、自己抗体の反応を抑えます。
 また、ヒドロキシクロロキン(⑦)は抗原提示細胞の機能を調節してステロイドの減量に役立ちます。実際には、個々の症例の問題点を確認して、その状態に必要な治療薬を選ぶと同時に、それぞれの薬に特有の副作用を考慮して、それを最小限にとどめて、最も適切な薬を選んで使います。さらに、膠原病に特有の内臓障害(間質性肺炎や腎障害など)に対する治療と、感染症や偶発的な合併症にも対応して総合的に治療を行っています。
 膠原病の重要な合併症に肺高血圧症があります。症状は動悸(どうき)、息切れで、強皮症、混合性結合組織病、全身性エリテマトーデスなどで多く見られます。これらの膠原病では血管の炎症や狭窄(きょうさく)が起きやすく、さらに、間質性肺炎や心筋障害から肺動脈に負担がかかりやすいことが原因です。最近は、非常に効果のある薬がありますが、進行すると効果が半減するため、早期発見、早期治療が大切です。そのためには、レイノー現象、指先潰瘍や息切れに気を付け、年に1~2回のX線、心臓超音波、肺機能の検査を行います。「画像2」は肺高血圧症の患者さんの胸部X線(左)と心臓超音波検査(右)です。肺炎のような白く写る陰影はありませんが、心臓の両側の肺動脈がやや張り出しています。超音波検査では、左心室が右心室から圧迫されているのが分かります(→)。
 膠原病グループでは膠原病の診断、その臓器障害を把握し、症例ごとに適切な治療に努めています。

  • 画像1 関節エコー検査の一例
  • 画像2 肺高血圧症のレントゲンと心臓超音波検査

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