筋力低下を覚えたら
患者さんの腕と太ももの筋力が弱く、押えると痛みの訴えがありました。検査の結果、CPK値が高く、筋電図で筋肉の異常所見が見られ、太ももの筋肉に炎症細胞が確認できました。
診断は多発性筋炎で、ステロイドで治療し、CPK値は少し下がったものの、正常にはならず、筋力は回復しませんでした。そこで、免疫抑制剤を併用したところ、症状と検査数値に改善が見られました。
膠原病は体に痛みや
関節痛を訴える患者さんの確定診断名(図2)が関節リウマチとは限りません。膠原病では
関節痛の次に
最近2年間の外来と入院患者さんの割合を示しました(図3)。最も多いのは血管炎症候群で、これは全身の血管が侵される病気で、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性
関節リウマチの患者さんの入院目的は①診断②より高度の治療③合併症の治療に分けられます。①については、特徴的な症状と検査(抗CCP抗体など)やX線、MRI、関節エコーなどの検査で診断します。 「画像1」は関節エコー検査の事例です。手首の関節が、健常者(左)に比べ、関節リウマチ患者さん(右)では矢印の箇所のように、関節を取り囲む膜(
膠原病では、体を攻撃する細胞(T・Bリンパ球)が現れ、自己抗体やサイトカインと呼ばれる因子ができる結果、皮膚、血管、腎臓、肺などに炎症が生じます。そのため、治療には免疫抑制剤・生物学的製剤・γ(ガンマー)-グロブリン大量療法などを組み合わせて使います。
最新の薬の作用点を示します(図4)。よく使われる免疫抑制剤(①)はステロイドですが、シクロフォスファミドやアザチオプリンは、抗原の情報をTリンパ球に渡す働きをする抗原提示細胞や、自己免疫反応の中心的役割を担うTリンパ球、あるいは、自己抗体(抗DNA抗体など)を作るBリンパ球の機能を抑えます。
カルシニューリン阻害薬(②)はTリンパ球の働きを抑え、ミゾリビンやMMF(ミコフェノール酸モフェチル)(④)はTおよびBリンパ球の増殖を抑えます。一方、関節リウマチでよく使われる生物学的製剤(③)のうち、インフリキシマブ、トシリズマブなどはサイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-17など)の作用を抑え、アバタセプトは抗原提示細胞とTリンパ球の反応を抑えます。
一方、血漿交換療法(⑤)は自己抗体を取り除き、γ-グロブリン大量療法(⑥)は抗原提示細胞、Bリンパ球、あるいは、自己抗体の反応を抑えます。
また、ヒドロキシクロロキン(⑦)は抗原提示細胞の機能を調節してステロイドの減量に役立ちます。実際には、個々の症例の問題点を確認して、その状態に必要な治療薬を選ぶと同時に、それぞれの薬に特有の副作用を考慮して、それを最小限にとどめて、最も適切な薬を選んで使います。さらに、膠原病に特有の内臓障害(間質性肺炎や腎障害など)に対する治療と、感染症や偶発的な合併症にも対応して総合的に治療を行っています。
膠原病の重要な合併症に肺高血圧症があります。症状は
膠原病グループでは膠原病の診断、その臓器障害を把握し、症例ごとに適切な治療に努めています。