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高度難聴・混合性難聴の治療

国内の代表的施設

人工内耳とは?

 1980年代から開発された人工内耳手術の導入は、それまでの高度感音難聴に対する治療の概念を根本的に変えるまさに革命的な医療の幕開けとなりました。内耳障害を病因とする先天性および後天性の高度感音難聴に対して、蝸牛内に挿入された人工内耳電極からの聴神経への通電により、正確な聴覚情報が大脳皮質聴覚野に届けられるようになりました。2019年末の時点で、人工内耳手術の症例数は世界全体で約340,000人、日本国内で約14,000人と推定されています。日本国内で人工内耳手術が保険適応となったのは1994年、小児例に対する人工内耳手術が保険適応となったのが1997年で、成人例、小児例ともにその後も手術数は順調に増加し、最近では年間約1,200例の人工内耳手術が施行されています。

人工内耳手術

 補聴器装用をしても会話ができない高度難聴の症例に対しては人工内耳手術を施行しています(図1)。耳科・神経耳科外来担当医の年間人工内耳手術数35—40例、累積総症例数437例と、いずれも国内トップクラスになっています(図2)。手術後の聴力保存を目指した正円窓アプローチの手術を2011年から国内で最初に導入し、手術後には95%の高い聴力保存率が得られています。
 成人例の人工内耳手術では65歳以上の高齢者の症例が増加しています。欧米での報告と同様に、高齢者群においても言語聴取能の改善は極めて良好であること、手術時間の短縮(約1時間半)もあって内科疾患等の合併症がある症例でも、手術は安全に施行可能であることを確認しています。小児例では、手術時年齢が1歳まで引き下げられたこと、両側人工内耳装用が保険承認されたことを受けて、手術症例数が増加しています。2014年7月からは、ハイブリッド型人工内耳が保険承認され、残存聴力があり補聴器で会話が困難な症例にも人工内耳手術が施行可能になり、当院でもすでに同人工内耳手術を施行していて、良好な聴取能の回復が確認できています。

  • 図1 最新の人工内耳システム
  • 図2 過去10年間の近畿大学病院での人工内耳手術施行数

人工中耳手術

 鼓室形成術、アブミ骨手術を施行しても聴力改善の得られない伝音難聴および混合性難聴の症例には人工中耳手術を施行しています。植え込み型骨導補聴器BAHAは2013年1月より保険承認となった人工聴覚器です。これまでに45例のBaha植え込み手術を完了しています(国内最多)。手術時間は、わずか30分程度です。従来の気導補聴器と比較して、装用感も聴力成績も極めて良好で、日常生活におけるQOLは大きく改善しています(図3)。2019年より小児例にも適応拡大となり、両側難聴に苦しむ両側外耳道閉鎖症の子供さんには福音になることでしょう。手術前には、サウンドアークでBahaを装用してもらい、手術後の聴力を確認できます。
 
2016年に保険適応となった人工中耳VSBについても、伝音難聴・混合性難聴の症例56例(国内最多)に埋め込み手術を施行し、全例で著明な聴力改善が得られています(図4)。手術時間は2時間半前後で、補聴器よりもさらに20〜30デシベル大きな聴力利得が得られます。手術後のMRI検査(1.5T)も可能です。過去に中耳手術を受けたが聴力改善の得られなかった症例に特に有効となる人工聴覚器です。

  • 図3 人工中耳Bahaの装用
  • 図4 人工中耳VSBの装用

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