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脳卒中の治療

安心・安全・あたたかい医療の提供

脳卒中――いろいろな症状を起こす

 脳卒中とは「脳が卒然(そつぜん)(あた)る」(やまい)です。脳の血管が()まり脳組織が死んでしまう脳梗塞(のうこうそく)と、血管が破れ脳が傷む脳出血(のうしゅっけつ)があります。脳は、部位によって手足を動かしたり、感じたり、見て聞いて話をしたりする役割分担をしています。その脳は、脳血管からの血液で養われており、詰まったり切れたりすると、すぐさまエネルギー不足に陥り、治療しないと脳が破壊されて、その役割を果たすことができなくなります。意識を失って、倒れたり、手や足などの麻痺(まひ)、言語や視野に障害を起こします。
 脳は一度傷を受けると回復する力が弱く、治療が遅れると症状が続く後遺症(こういしょう)を残します。そのため、できるだけ早く治療をして、詰まった血管を再び流れるようにしたり、出血を食い止める治療が不可欠です。「時は脳なり、時間との勝負」といわれています。
 次のような症状が家族や周りの人に急に出てきたら、すぐに横に寝かせてください。顔(F/face)の麻痺、腕(A/arm)の麻痺、言語障害(S/speech)があるかを観察してください。そして、いつから症状が出たか時間(T/time)を見て、救急車を呼んでください。
 また、たとえ数分から1時間以内に症状がなくなっても、これが一過性脳虚血(いっかせいのうきょけつ)発作と呼ばれる重大な脳卒中の前触れです。その日のうちに、かかりつけ医や専門医療機関の受診をお勧めます。脳卒中を疑った場合は、急いで行動してください(英語の頭文字をとって、ActF.A.S.T.(急いで行動して)キャンペーンも行われています)。
Face(顔)/口や顔の片方がゆがむ
Arm(腕)/片方の手や足の力が入らない
Speech(言葉)/ろれつが回らない、しゃべらなくなる
そのほかの脳卒中の症状/突然のガツンとした頭痛、ふらふらしたりぐるぐるするめまい、二重に見える、半分見えない、片目が見えなくなる、急にふらふらして力が入るのに歩けなくなる、けいれんなど(図1)。

図1 脳卒中の症状

脳卒中の診断――いろいろな原因から起こる

 脳卒中はいろいろな原因の病気から起こる総合の病です。脳梗塞は、脳組織を貫く細い血管が詰まるラクナ梗塞、脳の表面や頸部(けいぶ)の太い血管が動脈硬化で詰まるアテローム血栓性脳梗塞、心臓病や心房細動で心臓の中にできた血栓、血の塊が脳に飛来して脳の血管を突然詰める心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)からなります(図2)。
 また脳出血は、高い血圧によって脳を貫く細い血管が破裂する高血圧性脳内出血や、脳表面の脳血管にできたこぶ(動脈瘤(どうみゃくりょう))が破裂して起きるクモ膜下出血から成ります(図3)。症状だけでは、どの病気か区別できないことが多く、頭部CTやMRI検査、頸動脈超音波、心電図や心臓超音波検査を行って迅速に病型診断を下します。

  • 図2 脳梗塞のCT(左)。向かって左側が黒くなっています
  • 図3 脳出血のCT(左)。向かって左が白くなっています
    A.B.C.D.E が 脳出血の好発部位です
    A. 皮質下出血
    B. 被殻出血
    C. 視床出血
    D. 橋出血
    E. 小脳出血

脳卒中の治療――時間とのたたかい、個々の患者さんに合わせた高度治療

 発症4時間半以内および発見から4時間半以内の脳梗塞について、病歴、現在の体調、診察や検査所見によって、適応となった患者さんには、当院が長年研究に関わってきた点滴によるrt-PA(アルテプラーゼ)血栓溶解療法を行います。当院では病院到着からrt-PA点滴まで20~50分と迅速に行うことができます。院内動線の簡略化と医師・看護師・放射線技師・臨床検査技師・薬剤師・事務スタッフのチームワークの成果です。
 麻痺を治し、死亡を防ぐ薬の効果があり、そのためには発症3時間半以内に病院に到着するのが第一です。また、脳梗塞でも脳表面の太い血管が詰まって重症状態の場合は、rt-PA治療だけでは効果が期待できないケースやrt-PAが使えないときは、発症6~24時間以内にカテーテルによる血栓除去治療を緊急で行います。
 当院は、このrt-PAのバックアップとなる高度医療を行えるよう、脳血管治療専門医がいつでも緊急呼び出しできるシステムになっています。
 治療後は厳重な血圧や神経診察を脳卒中集中治療室(SCU)で行います。急性期には再発や症状進行がしばしば起きるため、ベッド上安静、点滴と栄養補給、抗血栓薬の点滴など、一人ひとりの患者さんに合った治療を行っています。
 また、高血圧性脳内出血の場合は安静と血圧を下げる治療、頻回の診察とCT検査を行い、適切な時期に救命のために緊急手術を行います。クモ膜下出血については造影検査で脳動脈瘤の場所と大きさを確認し、開頭術またはカテーテル治療による動脈瘤の出血を止める緊急手術を行って、一命を取り止めます。術後に麻痺や意識障害が遅れて起こる、脳血管がくびれる場合(血管攣縮(けっかんれんしゅく))や脳室という場所に水がたまる状況(水頭症(すいとうしょう))を迅速に発見して、ただちに対応できるのもSCUならではです。
 SCUに入室後、意識障害や麻痺、発語障害、嚥下(えんげ)障害がありますので、脳卒中治療を専門とする看護師の治療を受け、早い回復をサポートします。
 症状が安定すれば早くからベッド上や、病棟内でリハビリテーションを理学療法士から受けることができるのも当院の特徴です。
 また、病型分類に合わせた再発予防治療、脳梗塞に対する血栓を予防する治療、高血圧に対する血圧降下治療、糖尿病やコレステロールに対する内服治療、禁煙や節酒、肥満に対する食事指導や運動療法を処方します。認知機能障害や嚥下障害、関節・筋肉の障害、排尿障害などにも適切に対応します。
 さらに、後遺症が残っている場合は、近隣の回復期病院や療養型施設へ移り、切れ目のないリハビリテーションが行えるよう、南河内脳卒中地域連携パスという医療行政のシステムが完備されていて、誰でもどこでも安心して一定の回復のための治療を受けることができます。

緊急・高度医療を24時間365日提供

 脳卒中という急病に対して、さまざまな診療科の医師、さまざまな職種のスタッフ、加えて、地域の多施設の医療機関とチームワークを組んで、患者さんが少しでも麻痺と失語などの後遺症が軽くなり、また回復できるように、全力を尽くしています。誰でもなり得る脳卒中に最適標準診断と治療と緊急高度医療を24時間365日提供しています。安全・安心・あたたかい医療を提供して、地域の皆さんに愛されるように日々研さんと努力を続けています。日本脳卒中学会認定の近大脳卒中センターは、皆さんと共に歩み、育ち、安心して暮らせる地域社会をつくりたいという夢を持ち続けています。

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