個々の患者さんに最適な治療を
心臓は、肺で取り入れた酸素を全身組織に運搬するため常に拍動、つまり収縮と拡張の繰り返しをしています。1分間におよそ5リットルの血液を
冠動脈の形態、または機能異常によって生じるのが狭心症で、その症状は心筋の酸素不足に起因しています。心筋の酸素不足は、医学的には
狭心症の分類は若干、複雑です。狭心症はその症状の安定具合から、安定狭心症と不安定狭心症に分類されます。しかし最近では、不安定狭心症は、
日本人に多いとされ、診断・治療に注意が必要なタイプの狭心症です(図)。
狭心症の患者さんには、狭心痛と呼ばれる胸部症状が現れます。胸痛という表現で訴えられることが多いのですが、実際は締め付け感、圧迫感、息苦しさなど単純な痛みとはやや異なっています。高齢の患者さんは、体のだるさや元気がないなどの非典型的な訴えも少なくありません。部位は前胸部が最も多いのですが、皮膚表面の症状ではありません。
狭心症では胸痛の持続時間は数分以内のことが多く、逆に持続時間が長いときは狭心痛ではない場合が多いです。特に数秒のものは、不整脈や非心臓疾患の可能性が考えられます。灼熱感あるいは冷汗を伴うような強い胸痛、10~30分以上持続するような胸痛、新たに現れる胸痛、より軽度の労作、安静時に生じるように増悪する胸痛では、急性冠症候群が疑われます。速やかに医療機関を受診する、あるいは救急車を呼ぶことが必要です。
図 狭心症における冠動脈の状態
狭心症の診断は、まず前述のような胸部症状に関する問診が最も重要です。その上で、外来診療で行う検査には、12誘導心電図検査、胸部X線検査、心臓エコー検査、血液生化学検査などがあります。いずれもほとんど負担のない検査ですが、労作性狭心症の診断には、さらに運動負荷心電図検査を行います。より詳しく診断する、あるいは病態の評価をする際には、負荷心筋シンチグラム(SPECT)検査や負荷心エコー図検査を行います。最近は冠動脈CT検査が進歩しており、外来で冠動脈の狭窄度の判定が可能です(画像)。全ての患者さんの判定が可能だというわけではありませんが、非常に精度が上がってきています。
冠動脈造影検査は、短期間の入院が必要ですが、冠動脈疾患の診断や治療に欠かすことのできない検査です。
画像 冠動脈CT検査による画像
a.b.大動脈基部から起始した3本の冠動脈は、心臓の外表面を走行
c.左回旋枝近位部が閉塞しています(↓)
d.不安定狭心症患者さんの右冠動脈のCT画像(↓)
e.同じ患者さんの冠動脈造影検査による画像。同じように狭窄を認めます(↓)
3種類の治療法があります。①薬物治療②心臓カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)③冠動脈バイパス治療です。当科では薬物治療と心臓カテーテル治療を行っています。前述のように同じ狭心症といってもさまざまな病態があり、治療法の選択は異なります。また同じ病名でも、患者さんの状態によって治療法の選択は異なります(「急性心筋梗塞のカテーテル治療」「冠動脈バイパス術とは?」)。
薬物療法は、治療法の基本です。2つの目的があります。1つは、狭心症状を抑えQOL(
当科では全ての狭心症に対して、積極的な検査、診断および治療を行っています。特に治療に際しては、患者さんの個々の状態に応じた最適な治療を行うため、循環器内科スタッフ全員でのカンファレンス、および心臓外科との合同カンファレンスを定期的に行っています。
表 2014年実績