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きんだいびと

2023年04月01日

腫瘍内科 林 秀敏 主任教授 インタビュー

すべてのがん患者さまに笑顔をもたらす治療を届けたい

確かな治療法が見つからなかった原発不明がん。
可能性を追い求め、新たな治験に挑んだ林医師の熱意が、患者さまの未来に希望の明かりを灯す。

徐々に開けた腫瘍内科医の道

今改めて自分の歩みをたどると、医師を夢見たのは小学生の時でした。
大阪大学医学部時代は学業よりサッカーに熱中し、部活動に明け暮れる学生生活を送りました。当時はまだ明確な目標が定まっておらず、幅広い医療知識を身に付けようと、卒業後は一般病院で働くことを選択。その中で肺がんの患者さまを診る機会が増えました。
医師になった当時は点滴による抗がん剤治療が主流で、数カ月に及ぶ入院で辛い思いをしても、大きな効果は得られませんでした。まもなく飲み薬の分子標的治療薬が登場し、高い治療効果や創薬研究の進歩を肌で感じるうちに、がん種に限らず患者さまの力になりたい思いが芽生え、腫瘍内科医の道に進みました。

原発不明がんの治療にも光を

私の専門である肺がんに加えて、目下、私が力を注ぐ研究テーマの一つが原発不明がんです。
肺がんは肺に最初に腫瘍が発生した原発巣がありますが、原発不明がんは原発巣が見つからないままリンパ節などへ転移が現れ、全身に広がるのが特徴です。進行が早く診断が非常に困難で、治療にあたる医師はがんに対する多様な知識と経験、適切な治療法を見極める正確性や決断力が求められます。
当院では各診療科の様々ながんのスペシャリストが診断治療を行う上に、腫瘍内科には色々ながんの薬物治療のエキスパートがそろい連携していることから、新たな治療を求めて原発不明がんの患者さまが多く来院されます。しかし現状では治療開発が進んでおらず、期待に応えられないことに歯がゆさを感じていました。

難局を乗り越え治験を開始

そうした中で、ノーベル医学・生理学賞を受賞された京都大学の本庶佑特別教授と、免疫チェックポイント阻害薬の肺がん治療の研究を行う機会に恵まれました。貴重な経験から同薬のすばらしさを再認識し、原発不明がんへの効果も期待できるのではと治験を立ち上げました。
当院は国内トップクラスの治験実績を持ち、治験コーディネーターを中心とした院内の支援体制は万全です。とはいえ、治療が複雑で患者数が少ない原発不明がんは、製薬企業や国の賛同をなかなか得られず、治験をスタートするまでは長く険しい道のりでした。

がんでも長生きを目指せる

今回の治験では、原発不明がんへのオプジーボの有効性を世界で初めて確認することができました。その結果、オプジーボが原発不明がんの治療薬として使用できるようになりました。効果に個人差はありますが、患者さまの未来につながる大きな一歩となることは間違いありません。
がん治療は今後も目覚ましく発展していきます。私たちは一人でも多くの人が元気を取り戻し長生きできるよう、変わらず力を尽くします。

腫瘍内科 林 秀敏 主任教授(はやし・ひでとし)

2003年大阪大学医学部卒業。総合内科・呼吸器内科を経て腫瘍内科医へ。診察や研究で多忙な毎日を過ごす傍ら、趣味は海外旅行で、日本と異なる文化や自然を感じられる日々の再開を楽しみに待つ。

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