2024年02月06日
肺がん外科治療のエキスパートが集まる近畿大学病院呼吸器外科に、また頼もしいメンバーが加わりました。
肺がんの手術治療に革新を起こす津谷 康大 主任教授を紹介します。
大学時代から慣れ親しんだ広島を離れて大阪での生活にもすっかり慣れました。自然豊かな南大阪は生まれ育った島根と環境が似ていて落ち着きます。近畿大学病院の雰囲気もアットホームでいいですね。
呼吸器外科はどんな治療も難なくこなすスペシャリストがそろい、チームワークは抜群。さまざまな場面でサポートしてもらい、助かっています。
おぼろげな記憶をたどると、医師に憧れたのは幼稚園の時だったと思います。母は元看護師で、私が幼い頃に父が長く入院していたこともあり、医師は身近な存在でした。地元の高校を卒業し、広島大学医学部へ進学。その後は広島市立広島市民病院や四国がんセンターなどで経験を積み、2012年から3年間ほど米国を代表するがんセンターの一つ「メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター」に留学しました。
医師になって初めて臨床から離れ、家族との時間も大事にしながら基礎研究に取り組んだ日々は、とても新鮮で有意義でした。異文化が交差する暮らしの中で人間力も磨かれたと感じています。
私は早期の肺がんに対する区域切除を中心とした縮小手術を専門とし、最新治療の研究開発にも携わっています。
肺がんは喫煙者がかかりやすい病気というイメージが強いかもしれませんが、近年は喫煙歴がなくてもCT検診などで偶然にがんが見つかるケースが増加しています。このような場合はおおむね早期で、腫瘍は小さいことが多いため、従来の肺を大きく切除する肺葉切除術ではなく、できる限り病巣を小さく切り取り肺の機能を温存する縮小手術を行うことが増えました。
その中でも区域切除は、腫瘍がある区域だけを切除し身体へのダメージを軽減する手術です。最近の臨床試験で、2cm以下の小型肺がんに対しては区域切除の方が肺葉切除に比べて長生きする人が多いことが判明し、肺がんの治療のあり方を大きく変えるのではないかと期待されています。
このような流れを受け、近畿大学病院呼吸器外科では小型肺がんに対するすべての手術で区域切除を行っています。胸腔鏡や手術支援ロボットを用いて傷も小さくし、術後の早期社会復帰や生活の質の維持に努めています。
区域切除は繊細な手技が求められる難易度の高い手術であり、現在のところ実施できる病院は限られています。今後は誰もがどこでも受けられる治療にするため、院内外で技術の啓蒙に力を注ぐことが私の大きな役割です。
医療は日々進歩しており、肺がんにおける手術治療の選択肢も広がっています。医師は治療の最新情報を的確に患者さまへ伝えるとともに、患者さまも積極的に関心を寄せていただき、得た知識をご自身の療養に生かしてもらいたいと思っています。
1%でも治る可能性のある病気に対して、常に全力を尽くすことが外科医としての私の流儀。これからは大阪を基盤に、一つでも多くの命を救うための活動を惜しみなく続けていきます。
島根県出身。肺がん手術や薬物療法が専門。プライベートではサッカー、マラソンなど身体を動かす日々。
肺がんに対する治療が目まぐるしく変化する中、患者さまに最適な治療を提供する呼吸器外科チームを牽引。